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政府は本当にGMの胸算用を知らなかったのだろうか

[ワーカーズ社会主義探求領域]資本主義と国家介入

カンフ(社会運動に関心が多い) 2018.03.02 10:52

[出処:サゲ]

さる2月13日、国内3位の自動車メーカーの韓国GMが構造調整を通知したことで途方もない波紋が生じています。 韓国GMが国内で運営する3つの完成車工場(仁川市富平工場、全北、群山工場、慶南昌原工場)のうち、群山工場は完全に閉鎖し、残りの工場も追加の構造調整を断行するということです。 韓国GMは構造調整を発表した2月13日の当日、全工場で2千名規模の希望退職を断行すると公告し、直ちに受付を始めました。 すぐ翌14日に使用者側は閉鎖を宣言した群山工場の全職員に速達で辞職願いと希望退職願いを発送しました。 韓国GM社長カハー・カゼムの名義で送った手紙には 「これまで群山工場で一生懸命働いてきた多くの善良な役職員のことを考えるととても残念」で 「皆さんがそれぞれの未来のために最善の決定をできるように」すると付け加えましたよ。 奇妙なことに、この速達には希望退職願いと共に「転職支援プログラム」の案内文を同封して送りました。 それこそ「一生懸命働いたあなたが出ていけ」ということです。

一方、韓国GMの構造調整が現実になり、政府の責任論が激しく台頭しています。 ここまで来るまでに政府は何をしたのかということですね。 韓国GMの親会社である米国のゼネラルモータース(GM)本社が韓国政府と持続的に非公開接触して、 各種の支援を要求しているという事実がわかったりもしました。 結局、韓国GM問題で国家が議論の中心に立つことになったのです。 事実、内幕を調べると、韓国政府は17年前から今まで、この問題の核心的な当事者であり、責任者です。 今、韓国GMをめぐり各勢力が互いに異なる目的で国家介入を要求しています。 前の連載で、資本主義と国家介入の問題を少し扱いました。 資本主義は国家介入と対称点にあるように見えますが、 実は現代の資本主義は絶えず資本のための国家の役割を要求するという脈絡でした。 特に構造調整は、資本主義の守護者として国家の問題が鋭くあらわれる場です。 今回は前の回に続いて、当面の韓国GM構造調整を中心として資本主義と国家の問題を調べようと思います。

韓国GMにいったい何が?

まず韓国GMで今、どんなことが起きているのかを確かめて行かなければなりませんね。 企業が破産したり危機状態に陥れば、いつも登場するレパートリーは「貴族労組と高賃金」恨むことでしょう。 今回もこの構図自体は変わりません。 しかし様相が少し違います。 相変らず労働者の高賃金が問題だと言いながらも、 GMの経営失敗が不良を呼んだという報道があふれています。 保守言論と政界さえ、使用者側の責任を黙過できないほど、 GMの経営には相当な問題があったということです。

#君の借金は君の借金、私の借金も君の借金

現在の韓国GM不良経営の核心は、途方もない負債の規模です。 韓国GMは総資産が7兆ウォンを越える大企業ですが、 資産のほとんどが負債で、自己資本はもう87億ウォンに過ぎません。 自己資本と負債の比率は何と8万5000%を越えます。 国内の大企業がIMF危機の後に負債比率を100〜200%水準で管理したことと較べ、 明らかに非正常的な状態でしょう。

だが韓国GMのこうした不良はわずかこの数年間に起きたことです。 2012年だけでも270%だった負債比率は2014年には400%を突破し、 2015年には1000%、2016年には8万5000%へと急激に上昇しました。 このように突然莫大な負債を積んだ背景は、GM本社の高利貸し商売です。 GM本社は2012年から約3兆ウォンの金を高い利子まで付けて韓国GMに貸しました。 これはそのまま韓国GMの負債になり、GM本社は毎年利子だけで千億ウォン以上を受け取ります。 本社が子会社に対して投資するわけでもなく、高利金貸しをして不良を助長し、現金も持って行ったわけです。

ではなぜ韓国GMは、GM本社からこれほどのものすごい金を高利で借りたのでしょうか? 実はこの金は韓国GMが借りる必要さえなく、むしろGM本社が返すべき負債でした。 少し前に戻ってみましょう。 2002年、GMは産業銀行から大宇自動車を買収しました。 それで初めは会社名を「GM大宇」にして、2011年に今の「韓国GM」に変えました。 とにかく、この時にGMは産業銀行から低利で買収資金を借りたのですが、 当時の産業銀行との協約により、2013年からは返すべき利率が上がりました。 するとGM本社はこの金を韓国GMに返させ、その資金を本社から高利で融資を受けて支払うようにしたのです。 結局、韓国GMの莫大な不良はGM本社の負債の押し付けによって招いたのです。

#赤字は決まっていて、君は借金でもすればいい

負債とともに韓国GMの赤字構造も不良経営の核心問題です。 韓国GMは2〜3兆ウォン台の累積赤字を記録しましたが、 その原因として販売不振を指定しています。 韓国GMの全物量の80%以上が輸出ですが、 2012年から輸出物量が急減し続け、2016年には半分になりました。

生産した商品を販売することに失敗するのは資本主義ではよくありますが、 ここにもGM本社が登場します。 GM本社は2009年の経済危機で一度破産しましたが、 当時、米国のオバマ政府が電撃的に国有化して、 苛酷な構造調整を経てまた民営化しました。 その後、GMは世界各地の子会社の構造調整に着手します。 2013年、ヨーロッパからシボレーブランドを撤収し、2015年にはロシアから撤収し、 2017年にはヨーロッパの子会社オペル/ボクスホールを売却しました。 海外市場からの撤収で韓国GMの輸出の道がなくなり、生産物量も急減したのです。 さらにはGM本社は、ヨーロッパとロシアからの撤収費用、 約5千億ウォンを韓国GMに押し付けて赤字をさらに膨らませます。

GM使用者側とマスコミ各社は、労働者の高賃金が問題だと攻撃します。 しかし事実は全く違います。 売上額に対する人件費の割合を見ると、韓国GMは国内完成車企業と同等か少し低い水準です。 しかし売上額のうち、売り上げ原価で支出する割合(売り上げ原価率)は圧倒的に高いのです。 現代・起亜・双竜車の売り上げ原価率が70%の中後半から80%序盤ですが、韓国GMは90%を超えます。 人件費のほかに金が出ていくということです。 それに対してGM本社が韓国GMに対し、高い部品を供給して、生産した製品は安く持っていくという「移転価格」の疑惑がふくらみました。 だが韓国GMが「経営上の秘密」として会計をきちんと公開せず、この合理的疑惑は究明できずにいます。

構造調整と資本の国家

ではなぜ民間企業の不良経営に国家の責任論が出てくるのでしょうか? すでに多くのマスコミで報道されているように、 国策金融機関の産業銀行が韓国GMの株式を保有していたのに、 今日の事態に至るまで幇助したためです。 しかし冒頭で言及したように、韓国GM問題における国家の責任は、 単に最近数年のことではなく17年前にまで遡ります。

#大宇自動車構造調整の原罪と二つの非公開合意

構造調整発表で落ち着かなかった去る2月19日、韓国GM富平工場で集会が開かれました。 「2001年整理解雇17周年糾弾大会」でした。 17年前の2001年2月16日、大宇自動車は1750人の整理解雇を通知して、 怒った労働者たちは即刻工場占拠ストライキに突入、 金大中(キム・デジュン)政府は二日後に大規模な公権力を投入して暴力的に鎮圧しました。 こうして労働者たちが工場から追い出された日が2001年2月19日でした。 労働者たちは17年後にまた構造調整の通知を聞かされたのです。

2001年の大宇自動車構造調整を陣頭指揮してGMに売却したのがまさに政府と産業銀行でした。 IMF危機で大宇グループが崩壊すると、産業銀行は公的資金を投入して大宇自動車の主債権銀行になりました。 そして政府は大宇自動車の構造調整と海外売却方針を決定して押し通したのです。

2002年、産業銀行とGMは株主間協約を締結して売却を終えます。 しかしこの協約の内容は今も非公開です。 産業銀行が韓国GMの株式を保有して役員を派遣し、15年間理事会の拒否権を確保して、 事業撤収を防ぐという程度しかはっきり知られていません。 2010年、産業銀行はまたGMと非公開合意を結びます。 GMが撤収しても韓国GMの独自生存が可能だということだけを広報しました。 しかし昨年10月、協約が規定した15年が経ち、産業銀行が拒否権を失うとGMは直ちに撤収の威嚇と構造調整を始めました。

2千人もの労働者を解雇して締結した秘密協約。 そして今では韓国GM1万6千人、関連業者を入れると、30万人の命を威嚇するかもしれない疑問の協約。 GMが工場閉鎖まで宣言した今、 政府は「GMと非公開を約束した」と言って相変らずこの協約の内容を公開していません。

#国家は共犯だった

先にGMが不良経営を招いた色々な状況を調べました。 しかし産業銀行は拒否権まで握って理事を派遣したのに、不良経営に何の制止もしませんでした。 その上、会計情報さえきちんと得られなかったと弁解します。 そしてGMは今、追加構造調整カードを突きつけて、 政府の資金支援と労働者の犠牲を要求しています。 ここまできても政府はGMが要求する支援の内訳が何なのかさえ明らかにしません。 1兆ウォンの資金支援、産業銀行の有償増資による5千億〜7千億ウォン支援、 米国産自動車の輸入規制緩和、税金減免などさまざまな話がマスコミを通じて出てくる中で、 GM本社役員が青瓦台、企画財政部、産業部、産業銀行などの政府機関と直接会って、 非公開で交渉中という程度が「公開」されている状況です。

企業の自由を神聖不可侵と主張した資本と言論、政界は構造調整が近付いてくれば 「コントロールタワー」が必要だと言って国家を探します。 声を高めて「骨を削る自己救済策」を叫びますが、 実際に骨を削るのは労働者で、 資本は資金支援と回復の恩恵を持っていきます。 GMは世界的に、この分野の専門家です。 ヨーロッパとオーストラリアでGMは政府の支援を食いつぶして構造調整を断行し、 これ以上、支援がなくなれば仮借なく撤収しました。 現在、韓国政府はGMとの交渉を非公開で続け、GMに対する支援とその条件を測っています。

この17年間の過程で、国家はGMと共に構造調整と不良経営の共犯でした。 しかし今は政府がGMを一方的に支援するのは難かしい状況です。 「GMの会計内訳と営業秘密公開」のような、企業の自由を侵害する要求を保守政界さえ主張しているからです。 もちろん彼らが突然社会主義者になったからではありません。 それほど苛酷な「自己救済策」を労働者たちに押し付けようとしているのです。 資本のための国家介入を繰り返す時、労働者たちには17年前の悪夢が再び現実となって襲ってくるでしょう。 韓国GMの構造調整の前で、労働者たちがGMと共に国家の責任を問すべき理由です。 そしてこの問題は、 資本主義が克服されない限り続くでしょう。[ワーカーズ40号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-03-08 00:26:36 / Last modified on 2018-04-05 10:59:27 Copyright: Default

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