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キャンドルなきキャンドル改憲…国会が基本権と出会う時

[ワーカーズ・イシュー1]改憲の名前をつけて何日か食べた(4)

キム・ハンジュ、ユン・ジヨン記者 2018.02.01 11:37

[出処:サゲ]

下からの改憲の要求が政界に届くまでの道は遠く険しい。 「4年重任制」か「二元的政府制」かが最大の懸案になった改憲政争で、 「基本権強化」の声が割り込む隙はない。 昨年、与野すべてが打ち出した「6月改憲」は、 政争のうず巻きの中で危機に置かれた。 事実、「6月改憲」は19代大統領選挙の時に 文在寅(ムン・ジェイン)大統領と洪準杓(ホン・ジュンピョ)自由韓国党候補、 安哲秀(アン・チョルス)国民の党候補、劉承ミン(ユ・スンミン)正しい政党候補が すべて同じように出した公約だった。 だが自由韓国党が「6月改憲不可」の立場に転換したことで、 改憲案は国会の敷居を越え難くなった。

「6月改憲」にブレーキがかかると、 文在寅大統領は新年記者会見で 「個人的には4年重任制が最も望ましい方案」だとし、 国会に合意案の導出を圧迫し始めた。 これに対して自由韓国党は「文在寅政府は帝王的大統領制の改編意志が全くない」とし、 別名「文在寅改憲」を阻止すると青筋をたてた。 改憲をめぐる与野の騒ぎをめぐり、一部では政党構造が変わらなければ改憲は不可能だという自暴自棄の声もあがる。 2020年の21代総選挙後にならなければ不可能だということだ。 こうした状況で、権力構造改編はひとまず押し退けて、 6月地方選挙にあわせてまず自治分権改憲だけを先に処理しようという 「2段階改憲論」も注目をあびている。

与野が改憲をめぐる既得権戦争を繰り広げている間、 国民の基本的権利を扱う「基本権」の議論は後まわしになった。 憲法の第2章を占める「基本権」は今の改憲問題のどのあたりに留まっているのだろうか。 「ワーカーズ」が国会憲法改正特別委員会(改憲特別委)の基本権分野の議論の過程と、 進歩陣営の改憲対応の動きを探ってみた。

改憲特別委が強く拒否した私たちの基本権

国会は昨年1月、与野国会議員35人からなる改憲特別委を構成して改憲案作りを始めた。 各界の専門家53人で構成された改憲特別委諮問委員団(諮問委)も構成した。 諮問委は約1年間の活動の末に、昨年12月8日、諮問委報告書を発行した。 特別委の議論方式は、諮問委の案をめぐり賛否の意見を陳述する形で進められた。 これまで特別委が議論してきた基本権の争点は総120項目。 そのうち与野の特別委員が「概して共感」すると意見を集めた事項はたった43項目。 賛否の意見が克明に交錯した争点は17項目、意見が陳述された事項は26項目、 そしてまったく議論さえできなかった争点は33項目だ。

まず労働基本権条項をめぐり、特別委の内部ではさまざまな論争が起こった。 諮問委の案に明示された「同一価値労働・同一賃金」に対しては、 特別委員の過半数が反対した。 「同一価値労働・同一賃金」を議論した改憲特別委第1小委員会9人のうち、 「同一価値労働・同一賃金」の明示に賛成したのはたった3人。 共に民主党の姜昌一(カン・チャンイル)議員は「『価値』を入れれば混乱をひき起こしかねない」と主張し、 自由韓国党の成一鍾(ソン・イルジョン)議員は 「労働の質は市場経済で評価するのが原則」だと強調した。 同一価値労働が含まれる範囲はとても広いため、 「同一労働・同一賃金」程度で合意しようという意見も行き来した。 これ以外にも諮問委が提案した「勤労」を「労働」という単語に変える案と、 必須公益機関労働者の労働三権保障の条項にも合意できなかった。

特別委員が最も敏感な反応を示した単語は「性的指向」だった。 諮問委は現行憲法の差別禁止事由項目の「性別、宗教、社会的身分」を 「人種、言語、障害、年齢、地域、性的指向、雇用形態など」にまで拡大する案を提示した。 特別委員は唯一「性的指向」項目に執拗に食い下がった。 結局、共に民主党の鄭春淑(チョン・チュンスク)議員を除く与野党の議員は 「性的指向」を除いた差別禁止条項しか受け入れられないと同意を集めた。 女性人権の分野でも論争は続いた。 諮問委は「性平等」の条項に「選出職・任命職公職進出で男女の同等な参加促進義務」を明示した。 これをめぐり、突然「小学校教師性比」の問題と 「女性の軍服務」で是非がついた。 性平等を含む基本権分野を議論した特別委第1小委の15人の委員のうち、女性委員はたった1人に過ぎなかった。

特別委員たちは、諮問委が新設した「生命権」がまさに「死刑制度」の廃止だとして反発した。 「安全権」をめぐっては、被害者が国家に過度な補償を要求しないようにしなければならないという発言も出された。 基本権を制限する事由から「国家安全保障」が削除されてはならないと固執し、 国民が直接法律を発議できる「国民発案権」も代議制の原則に反するとして難色を示した。 「亡命権」は国家保安法上の潜入・脱出罪にあたると主張し、「良心的兵役拒否」は代替服務制度を提案した諮問委案を受け入れないと意見を集約した。 「思想の自由」も共産主義により、受け入れないと線を引いた。 直接雇用の原則と国家の雇用安定義務、労働条件の労使共同決定原則、 解雇から保護される権利はまったく議論もされなかった。 そうして35人の改憲特別委の委員は昨年末、 何の成果も出せないまま活動を終えた。

社会主義憲法? 「諮問委」が逃したもの

諮問委員会は、労働、市民社会陣営の唯一の意見陳述窓口であった。 国会は昨年1月、各団体と機関から推薦された諮問委員候補から53人の諮問委員を選定し、委嘱した。 彼らは各界各層の意見をまとめて「諮問委報告書」を作った。 保守言論から「社会主義憲法」と石の鞭を受けたのがその報告書だ。 該当報告書は明らかに「基本権」分野の要求をかなり前向きに表わした。 だが彼らが政治的、理念的な負担により、そこまで表せなかった重要な基本権の要求も明らかに存在する。

諮問委の報告書には、労働界が要求してきた「労働尊重平等社会」の憲法明示要求が抜けている。 1948年の制憲憲法には存在していた労働者の「利益均霑権」もよみ返らせることができなかった。 その代わりに「経営参加権」の水準でこれを代替することを提案した。 諮問委は報告書で「現代的な観点で利益均霑権よりも事業運営参加権の方が現実的」とし 「利益均霑権が従業員持ち株制度などの意味に制限されるので、 労働者が自分の境遇を決めるために参加するという産業民主主義の原理を実質化する事業運営参加権が適切だ」と明らかにした。

制憲憲法には「重要な運輸、通信、金融、保険、電気、水利、水道、ガスおよび公共性を持つ企業は、国営または公営とする」という条項があった。 労働界と市民社会陣営も着実に公共部門民営化反対要求を続けてきた。 だが諮問委は基幹施設公共サービスの私有化と私営化禁止条項の新設は、言及もされなかった。 自然資源に対する国有・公有化の論争では「自然資源はすべての国民の共同の資産」としつつも、 「自然資源の国有・公有化は過度で、社会的市場経済秩序の根幹を害する」と規定した。 土地公共概念の導入も表わせなかった。 その代わりに諮問委は憲法第122条に「土地投機による経済歪曲と不平等を防止」するという文句を追加する水準でこれに替えた。 農民が要求してきた農産物最低価格保障要求も議論されなかった。

下からの改憲動力は微小なだけ

こうした状況で、市民社会と労働界、進歩政党の動きはあまり目につかない。 市民社会陣営の場合、昨年下半期から改憲議論を始めた。 遅まきながら、さまざまな声を集めるために市民社会団体が一つに集まった。 昨年10月、119の労働および市民社会団体は「国民主導憲法改正ネットワーク(国民改憲ネット)」を発足させた。 彼らは去る1月16日、進歩と保守を問わず941の市民団体を集め、 6月改憲を要求する記者会見を行った。 だが彼らの活動が単一の改憲案を導出し、政界を圧迫する水準まで続けるのは難しい展望だ。 6月改憲のためには憲法改正手続き上、遅くとも3月までに単一案を作らなければならない。 国民改憲ネットに参加する団体の理念水準の差も見過ごせない。

改憲特別委諮問委に参加した国民改憲ネットのイ・テホ常任運営委員は 「国民改憲ネットの活動目的は、市民社会の合意案導出よりも理解を共有するところにある」と説明した。 イ常任委員は「合意を目的にすれば(保守市民団体との共同対応のために)改憲案が後退するしかない」とし 「もし市民社会陣営が単一案を導出しても、国会が与野の戦いで合意しなければ、改憲を押し通せない局面」と明らかにした。 国民改憲ネットはまず2月の旧正月連休前まで、リレー国民大討論会を続ける計画だ。

民主労総は昨年12月、正義党、労働党、民衆党、社会変革労働者党などの進歩政党と改憲討論会を進めた。 民主労総中央執行委員会では「民主労総改憲要求」案を用意した。 だが一回の討論会と要求案作りを最後に民主労総の改憲対応事業は開店休業状態だ。 ・ドンギュ前民主労総政治委員長は 「民主労総が新指導部の選挙で、改憲の議論は暫定的に中断した状態」とし 「2月の民主労総代議員大会が開かれるまで改憲議論を続けるのは難しいものと見られる」と診断した。 続いて彼は「いくら支配階級の利害を争うために改憲が触発されたとしても、 労働基本権には積極的に介入しなければならないのではないか。 議論の水準を越える新しい様式が必要だ」と強調した。

市民社会陣営も労働界の改憲対応に惜しみを吐露している。 イ・テホ常任運営委員は 「民主労総も改憲要求案を発表したが、 まさに労働基本権運動は見られない」とし 「もちろん最近は、公共部門正規職転換や最低賃金などの問題が山積しているが、 民主労総が改憲においては進歩陣営の『ナショナルセンター』として、 政界を圧迫できずにいるのではないか」と評価した。

進歩政党も各個戦闘をしている。 基本権を中心に対応を苦悩しているが、実際に尽力しているような雰囲気は作られていない。 正義党は1月13日の全国委員会で「改憲課題と立場(案)」を出し、 基本権→地方分権→権力構造など順次対応することにした。 労働党は基本権の強化なく、上層の既得権権力の分散方案に偏った改憲については 「改憲反対」の主張まで開いておいた。 民衆党は民衆の意思をまとめる方法が制度的に保障されていないとし、 「改憲5大方向と議題」を設定した。 変革党は憲法上の社会権拡張は、主体の運動がなければ不可能だとし、 「改憲共闘本(共同闘争本部)」の展望を提示した。 ある進歩政党の関係者は「巨大政党に左右される改憲対応に(進歩陣営が)尽力するのは難しい状況」とし、 「政界は6月の改憲を約束したが、2/3改憲国会通過限度を越える可能性は薄い。 自由韓国党が女性、性少数者の人権さえ入れられない諮問委の案にも最後まで反対するのなら、 進歩陣営でも方法がない」と打ち明けた。(ワーカーズ39号)

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-02-15 08:18:07 / Last modified on 2018-02-15 08:18:09 Copyright: Default

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