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「正規職狂奪審議委員会」の放言大激突

[ワーカーズ・イシュー(2)]正規職の約束、光速で脱落

キム・ハンジュ、パク・タソル、ユン・ジヨン記者 2017.12.26 16:56

正規職転換審査で脱落が決定する時間はたった15秒。 審議委員は何と8つの多種多様な学校非正規職労働者をワンショット、ワンキルで処理した。 「ご意見はありませんか?」、「ありません」、 「それでは9番から15番を審議します」。 41個の職種を審査するために二時間もかからなかった。 数十種類の多様な勤労条件と雇用形態、業務特性は考慮の対象ではなかった。 審議委員はぼんやりと座り、あらかじめ教育庁の職員が準備してきた結論に相槌さえ打てば良かった。 会議の傍聴者には議論の過程も全てが秘密にされ、異論は黙殺された。 昔々の第5共和国時期の話ではない。 直接民主主義の決定版を自負する文在寅(ムン・ジェイン)政権の 「公共部門正規職転換」の過程で行われていることだ。

[出処:キム・ハンジュ記者]

正規職から脱落する時間は15秒

現在、17の市道教育庁では正規職転換審議委員会の真っ最中だ。 労働部の特別実態調査で集計された学校現場の非正規職は合計8万2690人。 公共部門全体の非正規職41万6000人の20%にのぼる規模だ。 だから学校非正規職の正規職転換の可否が政府政策のバロメーターになるという期待も高かった。 だが教育部は去る9月、期間制教師と英会話専門講師、スポーツ講師など5万人を「正規職転換」から除外した。 すでに半分になった政策だったが、政府はずっと「公共部門正規職転換」と宣伝した。 今ではボールは17市道教育庁の正規職転換審議委員会に渡った。 だが彼らも拙速審議で大量に正規職転換除外判定をして、政府の野心に充ちた公約は空っぽになる可能性が高い。 特に各教育庁は非正規職当事者を排除したまま、非公開の会議だけに固執しているので、 密室行政を批判する声も高い。

仁川市教育庁の場合、1次正規職転換審議委員会はたった二時間で41の職種に対する審議を終わらせた。 何と4500人もの学校非正規職を対象にする審議であった。 結果は41の職種すべてが正規職転換の対象から一瞬で脱落。 審議委に入った公共運輸労組教育公務職本部のイ・ユニ仁川支部長はあきれた。 イ本部長は「教育庁がすでにすべての結論を出して、1番から8番の職種まで、 9番から15番の職種まで次々と15秒で審議を終えてしまった」とし、虚しいといった。 「運動部指導者270人、正規職転換0人、正規職転換除外270人」。 教育庁が審議委員に提供した資料には、ほとんどの職種で正規職転換はできないという結果が含まれていた。 この場で教育庁が正規職転換対象者として選定したのはやっと21人。 もちろん審議の途中に意見を陳述することもできた。 だが常識水準の議論や討論は不可能だった。

「41職種の特性を知っている人がいますか。 私もよく知らないけれど。 それでも『いつこれをみんな審議するのか』と言って、 説明も資料もなく、ただ何秒かでさっと斜め読みして 『意見がなければ議決する』と言って終わりです。 あまりにも情けなくて、途中で『これは正規職転換審議委ではなく、 非正規職の烙印を押す審議委員会ではないのか』と抗議しました。 するとある外部委員が『ではわれわれは何なのか。 イ・ユニ委員の意見だけが重要で、私たちの意見は握りつぶすのか』といいました。 正規職転換除外事由には、一時、間歇的業務がかなり多かったです。 だから該当資料を提出しろと要求しました。 するとただ聞いていろと。 資料を見ると頑張ると、教育庁内部の審議委員が担当公務員に 『さっさと話を続けろ』とがんがん怒鳴りました」。

外部委員は学校非正規職の現況についての正確な情報接近は事実上不可能だ。 だが教育庁は会議の前、何の資料も提供しなかった。 外部委員は丘に上がった河童のようなものだ。 会議の資料も搬出ができず、写真撮影も厳格に禁じられた。 結局、労働組合は教育庁占拠を始めた。 教育庁では23日、処遇改善を議論する2次審議委の時に5つの職種の非正規職意見を聴取すると約束した。 しかしすでにしっかりできていた枠組を揺るがすのは容易ではない。 イ・ユニ支部長は「当事者についてよく知らない審議委員が雰囲気に巻きこまれ、 4500人非正規職労働者たちの生計を教育庁が好きなように勝手にしている」とし 「審議というのは多くの検討を前提にしなければならないのに、 あまりにも拙速に進められたので自己恥辱感がある。 夜も眠れない」と吐露した。

どうせ採決は圧倒的

済州特別自治道教育庁の正規職転換審議委員会も、合計10種の非正規職職種をすべて転換除外と決定した。 顔合わせを除く最初の会議で出された結果であった。 議決の過程は採決。 顔合わせの場で教育庁は無記名投票方式を持ち出した。 「皆さん、同意されますか?」の一言で意志決定方式が決まった。 審議委員は合計9人。 教育庁(内部)委員3人と労働委員会、教総、学校運営委員長協議会、全教組推薦各1人ずつ、 そして全国学校非正規職連帯会議推薦の人物2人など外部委員6人が審議に参加した。

採決の結果は圧倒的だった。 審議委員のひとりのキム・ヘソン労務士は 「誓約書を書いたので具体的に話す訳には行かないが、 圧倒的な差で(正規職転換除外が)決定された」と明らかにした。 ほとんどの教育庁では審議委員会の会議前、委員に秘密維持覚書を作成させた。 会議資料と内容を外部に搬出しないという誓約書であった。 これを作成しなければ会議に参加できない。 キム労務士は「なぜ誓約書を書くのかと尋ねると、 『委員の安全が心配だ』と言った」とし、 「委員が公開されると不利益を受けたり非難を受けかねないということ」と話した。

実際に「委員の安全と危機」が心配される程、会議は拙速に進められた。 外部委員は学校非正規職の職種や労働条件、法的争点などについての事前情報なく会議に参加した。 会議全般は教育庁が主導した。 キム労務士は「教育庁の担当公務員が各職種別に説明をする。 だが事実関係を説明するだけではなく『転換審議委に上げてはならない職種』という調子で自分の考えをコメントする」とし 「非公開の会議なら、質問が終われば担当公務員も退場をするべきなのに、 教育庁の職員はみんな残っている」と説明した。 不公正な会議の構造は不公正な結果を出した。 結局、労働組合側は教育庁に文書を送り、正規職転換審議委の構成をやり直せと要求した。

「労働者の立場を全く代弁することができない正規職転換審議委員会という所で、 機械的に賛成するロボット役をしているだけのようで自己恥辱感がわきます」。 キム・ヘソン労務士が複雑で息苦しい心境を伝えた。

まるでコメディだ

教育庁は他の法令に基づいて正規職転換除外を主張することもある。 例えば政府のガイドラインは、既存の期間制法で正規職例外事由に該当しても、 常時・持続的業務は原則的に正規職転換対象と定めている。 しかし教育庁は期間制法が適用されるという理由で、 あるいは特別な理由なしで、非正規職を転換除外対象に分類している。 現在、全国約1万2千人のスポーツ指導者と講師の職種は転換例外対象に分類され、 大量解雇事態を前にしている。 その上、大田市教育庁では道路交通法が適用されるとして正規職転換から除外させるという、笑えない風景まで繰り広げられた。

「政府のガイドラインには、他の法令で契約期間を別途定めている場合、 転換例外事由としています。 審議委員会の時に大田教育庁が提出した資料にも他の法令に基づいて、転換除外対象に分類した職種がありました。 内容を見ると、通学バス運行補助労働者は道路交通法を適用されるというのが転換例外事由でした。 道路交通法と正規職転換除外とは何の関連もないでしょう。 いったいなぜこれが転換除外理由になるのかを聞くと、 教育庁側の内部委員が『(彼らは)期間制法を適用されるから』といった。 期間制法を適用されることが適用除外の理由にはなりません。 みんな期間制法を適用される人なのに、これでは転換審議委員会を開く理由がないでしょう。 とにかく教育庁の原案資料には妥当性も根拠もないことが確認されたわけです。 そうなら議論をして転換の可否を決定しなければならないのに、 委員長が突然『原案に同意しますか』と尋ねます。 そうすると委員が『同意します』、これで通過します。 審議委員会は遊びじゃありません」。

大田と忠北道教育庁転換審の委員会に参加するハ・テヒョン労務士は憤激を放った。 審議委員会が事実上審議や議論ができる構造ではないということだ。 教育庁が会議の当日、職種ごとに二ページ程度にまとめた現況資料を提出するが、 それがどれだけ事実と近いのか交差検証する方法もない。 当事者の実態や、その上、用語もよくわからない外部委員がほとんどだ。 ハ労務士は「忠北では、処理すべき職種は50種類を越える。 簡単に言えば、50の会社を扱わなければならないと言うことだ。 事実、ひとつの職種を理解するだけでも足りない場合が多い」とし 「討論をするのなら、内容を熟知する時間と資料が必要だが、 情報格差があまりにも大きくて討論自体が成立しない」と声を高めた。

「ただ品揃えをしましたというような感じです。 私がここで脇役になっているのではないのか、 ずっと参加を続けるべきなのか悩みます」。 彼もまた他の委員と似た苦悩に包まれていた。

審議委員会の上の子会社社長

審議委員会の決定を公企業の子会社の社長が「逆転」する事例もある。 厳密に言えば、審議委の転換除外の決定を一部ひっくり返して経営陣の政治功績をあげるために活用するようなケースだ。 仁川港湾公社はすでに2007年、仁川港保安公社という子会社を設立し、 仁川港特殊警備労働者を期間制で雇用している。 164人の期間制労働者は昼間、夜間、非番を回りながら、一日12時間勤務をしている。 賃金は最低時給だ。 政府の正規職転換政策が発表されると、公共機関の仁川港保安公社も正規職転換審議委員会が組まれた。 審議委員は内部5人、外部5人で構成された。

3回の会議の末に正規職転換の可否をめぐり採決が行われた。 結果は6対4。 正規職転換はできないという結論だった。 争点は、常時性と持続性についての判断だった。 公社側は「常時性」は認めたものの、「持続性」は認めなかった。 公社側の審議委員は、直接雇用されると仁川港湾公社のような公共機関が用役契約を切るかも知れないと主張した。 もうひとつの核心は「賃金」だった。 最低賃金の値上げ分までは耐えられるが、無期契約職水準の賃金支払いは耐えられないということだった。

審議委員会に参加した民主労総仁川本部南東労働相談所のユ・ソンギョン相談室長は 「仁川港保安公社が必ずこの事業を受託しなければならないという法的根拠がなく、 契約が切れるかも知れないというのが会社側の立場だった」とし 「だが法的根拠が弱いというのは正しくない。 仁川港保安公社は国際協約により設立された。 国際協約を守ることで仁川港が国際港としての資格を得る。 現在、公社は海洋水産部から管制塔や総合状況室などの設備をほとんど無償で提供されている」と説明した。

特に仁川港保安公社が設立されて以来、この10年間一度も契約が切られたことはなかった。 だがこうした主張は審議委員会採決の結果をひっくり返すことができなかった。 審議委の決定をひっくり返したのは、他でもない公社の社長だった。 審議委員会の決定の後、公社の社長は職員の教育で「職員の雇用安定に責任を持つ」という意志を表明した。 仁川港保安公社労組の関係者は「教育の時間に社長がうちの連中は私が責任を取るとし、(無期契約職に)転換できるように最大限努力するといった。 正規職転換審議委員会の結果とは無関係に、正規職転換TFを作り、良い方案を見つけ、 来年には雇用安定を実現するということ」と説明した。

労組では審議結果を利用した公社側の戦略的な恩着せだという疑問を消せずにいる。 審議委と公社の「いかさま博打」ではないかという声もあがる。 民主労総仁川本部のイ・ジンスク政策教育局長は 「転換審議委員会では予算を口実にして転換例外の結論を出した後、 社長が『処遇の改善はできないが、雇用安定はさせる』といい出した」とし、 「結局、金をかけずに恩を売っているのではないか」と説明した。

実際に、これまでさまざまな議論に苦しんできた会社としては、 予算の負担なくイメージを改善できる絶好の機会をつかんだわけだ。 仁川港保安公社のチョン・ドンファル社長は就任直後から 「天下り人事」の議論に苦しめられた。 チョン社長は1986年から約30年間、青瓦台大統領警護室で働いた後、 2015年に公社の社長に就任した。 過去にも仁川港保安公社の社長は大統領警護室出身要人が、 経営本部長は海水部出身者が独占してきた。

一方、麗水光陽港湾公社の場合、去る12月7日に労使専門家協議機構で特殊警備などの用役労働者の正規職転換のための子会社を設立すると明らかにした。 これは、雇用労働部が選定した「公共部門正規職化優秀事例」に選ばれた。 労使が転換方式と規模に合意し、追加費用なしで正規職に転換することになったのだ。

民主連合労組のチュフン組織局長は 「子会社方式はすでに8月に決定し、現場の労働者は9月になって一足遅れて知り、反対した。 決定の過程に労組は全く介入できなかった」とし 「処遇改善の水準が実際に基本給の上方修正までできるかどうかはわからない」と説明した。

結果として、政府が提示した子会社方式の正規職転換ガイドラインは、 現場でいい加減に活用されたり、同一職種でも不公平に適用され、混乱を生んでいるわけだ。 ユ・ソンギョン相談室長は「政府では、子会社を作って直接雇用をすると主張しているが、 別の見方をすれば仁川港保安公社の事例が今後、子会社の未来の姿になりかねない」と憂慮した。

これはただ氷山の一角

上の事例はただ氷山の一角でしかない。 現在、教育機関と公共機関、地方公企業、自治体などの公共部門の全分野では、 正規職転換審議委員会の密室、拙速運営の議論が持続的にあがっている。

仁川市庁の場合も去る12月12日、一日で正規職転換審議を終わらせた。 仁川市庁正規職転換審議委に参加したキム・ウンボク労務士は 「期間制450人のうち一時的・間欠業務を除く123人が転換対象者だったが、 結果として94人しか残らなかった」とし 「反対意見があっても少数意見なので、市からコンサルティングを受けてきた決定をひっくり返すのは難しい。 機械的に賛成するロボットになったようだった」と説明した。

まったく労働組合の参加が保障されない所も相当ある。 忠清北道の場合、教育庁を除けば民主労総推薦者の正規職転換審議委員会参加は何もない。 地域運動団体が道庁前プラカードデモと記者会見、抗議訪問の後に、 忠北道は民主労総推薦者の審議委参加を受け入れた。 地方自治体では状況はさらに深刻だ。 正規職転換審議委員会がまったく開催されないケースも茶飯事だ。 民主一般連盟のイ・ソニン委員長は 「私たちの連盟には150の地方自治体と61の大学、12の公社と工団が組織されているが、 正規職転換審議委が開かれたのは京畿道と江原道の二か所だけ」とし 「組合員の期間制労働者がすでに切られた。 12月末にはもっと多くの解雇が起きるだろう」と説明した。

公共機関が正規職転換の実態調査を公開していないことも問題だ。 非正規職ない忠北作り運動本部のソン・ジヒョン執行委員は 「何よりも重要なことは、実態調査の結果を完全に公開しることだ。 実態調査の結果を知らないので、多くの非正規職のうち誰が転換対象になるのか知る方法がない」とし 「転換審議委に入っても実態調査の結果がすべて公開されるわけではない。 非正規職は自分が正規職転換の対象なのかどうかも知らずに希望を抱いて大量解雇される事態が続いている」と批判した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-01-04 10:21:52 / Last modified on 2018-01-04 10:21:54 Copyright: Default

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