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News Item 20170909
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100日間で私たちはどこまできたのか

[ワーカーズ]君と私の階級意識

オ・スンウン(全国公共運輸労組政策企画次長) 2017.09.08 15:49

8月17日に就任100日をむかえた文在寅(ムン・ジェイン)大統領が 「労働の価値がきちんと尊重される世の中」を作るという国政目標を再び明言した。 振り返れば、大統領100日の行跡の第一歩は仁川空港への訪問だった。 ただ訪問をしただけではなく、直接非正規職労働者たちと会って 「公共部門非正規職ゼロ時代」の宣言までした。 大統領のこの破格の動きに熱い歓呼と支持が集まった。

今この瞬間も、公共部門の現場と労組は正規職転換のための各種の実務で嵐の中にいる。 しかし現場の外は、もうあまり関心がなくなり、日常に戻ってしまったのかもしれない。 あるいはこの100日は、大統領がくれた正規職という贈り物を、非正規職と労組が取り込む過程だったとという状況判断を終わらせたかのかもしれない。 まだ正解はない。 ただし、ここ何日か、私が体験した風景を探りながら、私の100日の感想も整理してみたい。

[出処:サゲ]

表れる率直な気持ち

100日間、ずっと疲れをみせない姿が印象的だった仁川空港地域支部政策局長が、 数日前にFaceBookで虚脱感を吐露した。 皆が非正規職問題を解決しろと口をそろえたが、実際に解決の糸口が見つかると現実的な理由で難しいのではないかと感じるという。 「変えようといった『現実』と、現実的に難しいという『現実』が同じようなものであることを忘れないでほしい。 変えるべきことが現実だから変えられないと言うのなら、人が生きていく理由はあえて何だろうか」。

その数日前にはFaceBookの画面をスクロールして肝を冷やしたことがあった。 普段、イエス様の言葉を引用してセウォル号犠牲者を追慕していたある人が 学校非正規職教師たちにとって実は怠惰で無礼な人たちで、 「率直に」は私教育従事者ではないかとどんどん熱が上がって書いた文が目障りなのだ。 文を書いた人は学校正規職教師だ。 君も私も積弊を批判し、解決法を提示する今の雰囲気で、 この人も自分の存在をかけて立場を主張するのだろう。 そしてこうした「率直な気持ち」に続いて正規職転換が「ばらまき」、「横車」 だという声もそのうち出てくるだろう。

固まった考えの枠

また何日か前の事だ。 地下鉄の乗り場でなにげなく見た電光掲示板に、 65歳以上の老人無賃政策のために赤字が深刻だとし、 政府の補助金を要求するソウル交通公社の立場が表示されていた。

労組で交通を担当する研究委員に状況を聞くと、回答は明快だった。 赤字が積もったのも、国庫補助が必要なのもその通りだが、 それは金を払わない老人のためではなく、 財政の70%を運賃に依存する今の歪んだ財政構造のためだという話だった。 現場の組合員たちの考えも同じなのかと聞くと、彼は困ったような表情になった。 赤字解消と経営改善に対する組合員たちの立場が 「運賃値上げか、人件費削減か」という二者択一の枠組みを大きく抜け出せないのが残念だといった。 少なくとも労組の立場なら、これまで公共部門で通用していた「無償」や「赤字」という概念を指摘して、 また破棄しなければならないという正解も付け加えた。 この正解は、研究委員の漠然とした構想だけではなく、 最近、外国の大衆交通体系運営現況を参照して労組の介入についての示唆を提示した研究結果まで進んだ。 問題はやはり労働者当事者の考え、大衆の考えだ。

運賃収入をいくらか増やしても地下鉄赤字は全く解消できない状況で、 それよりも老人運賃有料化は老人の交通権を制約するのが明らかな政策だ。 公企業の赤字が民営化と労組粉砕のための伝家の宝刀だった時期を超え、 今は公共部門に対する考えと対話が交通権、公共性、福祉を扱わなければならないということは、 研究委員一人だけの期待ではないだろう。 しかしすでに固まった考えの枠組みはどうすれば変えられるのか。 労組の正解が蓄積すれば、いつかは解決できる時間の問題なのだろうか?

非正規職という罪と罰

非正規職が正規職になる努力を怠った罪のために受ける罰という考えはまたどうなのか。 韓国社会に広くなじんだこの発想は、誰がその罰を下すのかが隠されているという点で、 怪しく、また不当だといわなければならない。 そうではなく、非正規職は資本が自分で作って一人で食べる食卓だというのが正しい。

しかしこの正しい言葉も、誰もが正規職を食卓から削減する世の中の前では力を失う。 公正さに対する万人の感覚は、すでにそのようにして形成され、固まった。 この強固な公正さの感覚を、労組と非正規職労働者たちが突破できるだろうか?

始まりは尊重と尊厳

あるいはわれわれは、ちょうどここまできた。 埋もれていた差がとうとう表れて、馴染んで考えと感覚が「労働の価値がきちんと尊重される世の中」の足を引っ張るこの状況。 ここまでの歩みを認め、さら尊重するのなら、 次の質問を投げて答えるところまでもわれわれは進めるはずだ。

もし努力の末に正規職になった人たちの補償心理がみたされることが公正な社会だとすれば、 その社会で非正規職が受けなければならない処罰は何だろうか? 低い賃金程度ならいいのか、あるいはいつクビになるかわからない不安感までだろうか? 賃金はどれほど低く、解雇はどれほどやさしくなければならないのだろうか? 安全マニュアルと装備はどれほどひどくなければならないのだろうか? 交代勤務制はどれほど一方的でなければならないのだろうか? 休憩空間はどれほど汚く狭くなければならないのだろうか? 今はこれらの質問を投げて答えることへの尊重ぐらいは見せるべき時だ。

その尊重を越えて「率直な気持ち」、「無償」の概念、 「公正さの感覚」を揺るがす力は結局、 自分の尊厳を回復しようとする非正規職労働者の勇気から出るのだろう。 文在寅(ムン・ジェイン)政府100日、ある人は何も変わらなかったと冷笑し、 ある人は大統領がすべてをすると皮肉る。 そして8月17日、仁川空港地域支部長が同じ100日について京郷新聞に書き送った文を読んだ。

「現場は17年ぶりに最大の変化を経験している。 労組は1万非正規職労働者にさらに一歩近付いて手を差し出している。(...) 正規職転換は雇用安定を越え、労組を通じて不合理に対抗し、 『人間の尊厳』を回復する契機」だった。 その契機を放棄してはならないと思った瞬間だった。[ワーカーズ34号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-09-17 06:04:45 / Last modified on 2017-09-17 06:04:47 Copyright: Default

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