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フランス、超国籍企業の横暴牽制を始める

[ワーカーズ]人権侵害すれば360億賠償金(聞く)払うことも

ナ・ヒョンピル(国際民主連帯) 2017.03.31 15:15

「我が社はフランスの会社で、店長もフランス人なのに、なぜ労組を拒否するのですか?」、 「韓国ではそうしてもいいからさ」。 ドラマ「錐」の中の印象的な場面だった。 「錐」はフランス系流通業者、カルフの労働者たちが労組を結成する過程を扱う。 劇中の場面のように、カルフがフランスではできなくても韓国でできることが労働弾圧だ。 このように、被害者はいるのに加害者をきちんと処罰できない超国籍企業の人権侵害問題に対し、 国際社会は長い間、解決方法を探してきた。

その結果、2011年に国連のビジネスと人権に関する指導原則(Guiding Principles on Business and Human Rights)が誕生した。 この指導原則は、企業が原資材を購入し、下請企業から部品の納品を受け、 国内および海外の工場で生産し、流通網を経て消費者に伝える事業関係全般について 「デューディリジェンス(Due Diligence)*」の実施を明文化した。 国連が人権と環境侵害に対する企業の責任を原則で釘をさして、ヨーロッパを中心にこの原則を国内法で実現する動きが始まった。 その結果、中道左派が過半数の議席を占めるフランス議会が世界で初めてフランスの大企業に事業関係全般にわたり、 人権および環境侵害の有無を把握し予防する計画を義務化する法律を通過させた。 それが2017年2月21日、フランス議会が制定した「フランス企業注意責任法(French Corporate Duty of Vigilance Law)**」だ。

[出処:キム・ハンジュ記者]

法はどのように適用されるか?

この法はフランスの企業の中でも雇用人員5000人を越える(本社が国外にある場合には1万人)大企業だけに適用され、 約100-150社のフランス企業が規制対象になる。 例えば、カルフは毎年発行する年間報告書に全世界の店舗で雇用された職員の人権はもちろん、 カルフ店舗に納品する業者の人権状況、カルフ店舗に納品する商品生産過程での人権および環境侵害の有無も含み、 カルフが深刻な人権および環境侵害にかかわったているかどうかを把握しなければならない。 万一、こうした深刻な人権および環境侵害にかかわっていれば、どう対応するのかについて労組と協力し、計画を樹立して持続的にモニターもする。 しかしカルフがこうした計画を樹立しなければ、判事は3か月の警告期間を経てカルフに対し最大1千万ユーロ(約130億ウォン)の罰金を賦課することができる。 またカルフがきちんと計画を樹立せずに深刻な人権侵害が発生した時は、 該当の被害者はフランスの裁判所に陳情を提出することができ、 フランスの裁判所は最大3千万ユーロ(360億ウォン)まで賠償金の支払いを判決することができる。 つまり、この法が通過した後に「錐」が扱ったカルフでの労組弾圧問題が発生したら、 韓国の労組がフランスの裁判所にカルフの賠償を要求する陳情を提出できただろう。

もちろん、この法にも盲点はある。 韓国のカルフ労組員は自分たちが受けた被害が会社の誤りと直接関連があることを自ら証明しなければならない。 そしてその誤りは会社が人権侵害予防計画をたてなかったことで発生したものでなければならない。 もしカルフがきちんと計画を立てていれば、フランスの裁判所はカルフに法的責任を問えないこともある。 しかし重要なことは、全世界の誰もがフランスの大企業から被害を受ければ、 フランスの裁判所に正義を叫ぶ機会が持てるようになったということだ。

苦しい韓国の現実

フランスだけでなく、スイスでも類似の法制定運動が始まったし、 英国とオランダでも企業の海外活動にまで責任を問う法律が通過している。 国際社会はフランスのように、法律の形態ではないとしても、超国籍企業の海外での人権侵害に対し、 本国政府が人権や環境の侵害に対する対策をたてろと要求する段階に進んでいる。

しかし韓国では海外どころか国内の下請や協力業者の責任についての議論さえも全く進んでいない。 端的な例が、最近葬儀を行ったハン・ガンホ烈士が働いていたユソン企業の事例だ。 現代車の協力業者であるユソン企業が現代車の指示を受けて労組破壊を企図した証拠が裁判所に提出されたのに、 韓国政府は現代車の責任を問わずにいる。 サムスンとLGの下請企業で発生したメタノール中毒死の態度も同じだ。 サムスンとLGは今、海外工場で類似の事例が発生すれば国連や国際社会からその責任を追及される境遇にあるのに、 国内で発生した職業病事態についてはまだ下請企業の問題だと言って責任を回避している。 新しく形成されているグローバルスタンダードに遅れをとっている状況なのに、 政府と資本はこれを無視しているのだ。

「本当の社長が責任を取れ」というスローガンは、 国際社会で企業の人権問題を扱う原則に位置している。 韓国は6月に発表される国連の企業と人権実務グループ訪韓報告書を始め、 国連の各種の人権機構から韓国企業の人権問題について審査を受ける。 新しく発足する次期政府が最初から国際社会から批判を受けたくなければ、 なぜフランスが国内の一部の反発にもかかわらず、 この法を通過させたのかを深刻に悩まなければならないだろう。[ワーカーズ29号]

*韓国語のDue Diligenceは正確な翻訳はまだないが法学では「相当注意義務」と翻訳する。人権委は「実態調査」と翻訳している。翻訳についてはさらに議論が必要だ。
(日本では公式な訳語はない)
**この法の内容と歴史的意味については「企業に正義を要求するヨーロッパ市民連合(European Coalition for Corporate Justice、ECCJ)」を参照した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-04-05 10:29:58 / Last modified on 2017-04-05 10:30:00 Copyright: Default

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