雇用労働部の万病に効く薬は毒薬

ワーカーズ20号時評

キム・ヘジン 2016.07.27 15:47

2014年7月、崔炅煥(チェ・ギョンファン)経済チームは経済を生かすためには「内需を活性化」するべきで、そのためには非正規職対策が必要だといった。それと共に2014年12月23日「労働市場構造改善の原則と方向」を出して、12月29日に「非正規職総合対策」を出した。この時には「内需活性化」ではなく「正規職と非正規職間の不平等改善」が核心課題だと主張した。そして2016年7月18日、李基権(イ・ギコン)雇用労働部長官は「2016年下半期主要雇用労働政策方向」を出した。これは2014年から進めてきた政策のコピーだ。ところで違う点がある。今はこの対策が「青年雇用解決方案」だと主張する。すなわち政府は韓国社会の核心問題を「内需活性化」から「正規職-非正規職の不平等改善」に、そしてまた「青年雇用」に変えて提示するが、この現実に効果があると主張する方案は一貫している。結局、今の政府の政策が万病に効く薬ということだが、万病に効く薬は信頼できないように、政府の雇用労働政策も同じだ。

内需の心配や正規職-非正規職の不平等改善の問題意識はどこに消えたのかわからないが、雇用労働部はひとまず「青年たちの雇用事情が深刻だ」という主張から始める。その通り。青年失業率は外国為替危機以後最高値で、青年たちは仕事を探すために過度なスペック競争に埋没している。これまで政府は青年雇用問題を解決するために熱心に努力したという。しかし政府は本当に青年雇用問題解決のために努力したのか? 統計庁の賃金勤労雇用行政統計の資料を見ると、公共部門の青年層新規採用は2012年の13万2千人から2014年には14万6千人と、1万4千人増えた。だが勤続期間1年を超える持続雇用は2012年の29万8千個から2014年には29万5千個と、むしろ3千個も減った。結局、時間制やインターンばかりが増えたのだ。これで政府が青年雇用創出のために努力したというのはすべて偽りだ。

こうした現実を反省せず、政府は青年雇用政策が失敗した原因を「大企業と中小企業の格差」に求める。大企業ばかりに行こうとする青年労働者が中小企業に行かないからだというのだ。だから、この格差を減らすことが核心で、このためには「大企業労働者の権利を減らさなければならない」という結論に到達する。今の青年雇用の問題は、大企業であれ中小企業であれ、安定した雇用が減ったことだ。青年たちが少しでも安定した仕事を探そうとすると、さらに困難を経験する。ところで今は大企業の雇用も不安定になり、大企業と中小企業の格差を減らそうとするから、結局「交通事故をなすには車をすべてなくせばいい」というような対応をたてているのだ。

政府は「青年雇用対策」で3つの方向を提示するが、最初には格差解消と共生促進という名の下で正規職の賃上げ自制、労使間の「社会的責任実践宣言」で下請協力業者のための配慮を要求するものだ。下請業者に対する大企業の収奪を制裁し、統制すべき時に「共生協力」の名で大企業の恩恵授与に頼り、労働者に対してのみ賃上げ自制を叫ぶのでは政策の実効性があるわけがない。二つ目の方案は「労働市場慣行と制度の改善」だが、政府が強圧的に施行する低成果者解雇と職務成果給制を中小企業にも強行するということだ。また、合理的な労使関係を構築すると言いながら雇用世襲などの違法・不合理な協約を改善するというが、実際には「整理解雇に対する合意条項」など雇用を守る協約を無力化しようとしているのだ。こうした政策がどうして「青年雇用」の創出につながるかについては説明がない。財閥の利益のために進めてきた政策に「青年雇用」という名前を付けただけだ。

さらに深刻なのは三つ目の方向だ。「雇用サービスを拡散」するというが、李明博政権以後推進されてきた「雇用サービス市場化」の一環だ。雇用を斡旋し、教育・訓練することは政府が担当すべき公的機能だ。しっかりやれと労働者たちが雇用保険料を払うのだ。ところでこの役割をすっかり市場に任せ、金儲けをするということであり、「派遣許容対象拡大」もこうした構想の一環だ。ワークネット(雇用労働部雇用情報システム)を民間事業者に開放し、職業安定法を雇用サービス促進法に改正するなど、雇用サービスの公共性を放棄する政策を恥ずかしげもなく出す。不安定な労働市場をさらに不安定にして、雇用斡旋という名で労働者を売買する市場を活性化するということだ。

雇用労働部は2014年、この政策を「正規職と非正規職の不平等改善」という名で差し出し、非正規職労働者の強い反発にぶつかった。非正規職労働者たちははっきりとこの対策は「改悪」だと規定し、闘争しようとした。すると政府は同じ対策を「青年のため」と名付けて推進する。青年はまだ勢力化されておらず、きちんと問題提起ができない点を悪用しているのだ。政府が本当に青年たちの雇用を心配しているのなら、公共部門の新規雇用を大幅に増やさなければならない。そして民間にも青年雇用割当制を適用しなければならない。最低賃金を大幅に上げ、低賃金雇用をなくしていかなければならない。ところが最低賃金は「経済が不安定だ」という名分で440ウォンしか上げず、公共部門の構造調整という名で新規雇用を縮小し、民間企業には雇用を強制できないと言って「勧告」で代えるという。政府の真情性が信じられない理由だ。

万病に効く薬を宣伝する薬屋の薬は、体が良くならなくても特に副作用がなければ「金を捨てた」とぶつぶつ言いながら諦められる。だが苦しむ人をだます目的で毒がいっぱい入った薬を売るのなら、強力に処罰しなければならない。政府が財閥のために労働者全体に毒を飲ませようとしているのなら、その一方でこの薬が万病に効く薬だとだまして強制的にこれを飲ませるのなら、この蛮行をどう止めるべきか。この政府をどう処罰するべきか。

付記
キム・ヘジン:全国不安定労働撤廃連帯常任執行委員、セウォル号4・16連帯常任委員で活動している。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)

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