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世界の労働者代表が声を揃えて「ハン・サンギュン釈放」

105次ILO総会参加記

リュ・ミギョン(民主労総国際局長) 2016.07.07 10:49

5月30日から6月10日まで、ジュネーブで開かれた105次国際労働機構(ILO)総会(International Labour Conference)に行ってきた。 ILO会員国の労使政代表が参加し、世界的に重要な労働懸案を討論して新しい国際労働基準の必要性を検討する一方、 会員各国が批准した協約の履行あるいは違反事項を点検し、改善を勧告することがILO総会の役割だ。 民主労総は、韓国の労働者を代表する組織として該当主題に関する韓国労働者の状況を伝えるたり、 国際労働者グループの一員として関連の議論に参加する。 今年は民主労総を代表してチェ・ジョンジン委員長職務代行、チョ・ヒョンジュ法律院弁護士、そして筆者が参加し、 本会議、グローバル・サプライチェーンと良質の雇用委員会、基準適用委員会で各々活動した。 それぞれの活動内容と、ここで提起された課題を紹介する。

[出処:リュ・ミギョン]

韓国で行われる労働弾圧に対する国際連帯組織

昨年11月14日の民衆総決起の強制鎮圧と大量召喚、デモ参加者と主催者に対する刑事処罰は、すでに国際的にもよく知られている。 今年の初めから国際労総やさまざまな国際産別労連が何回も民主労総を訪問し、 オンラインでの釈放要求キャンペーンも行った。 もちろん2008年から2009年に始まった世界経済危機以後、青年失業の解消を名分に簡単に解雇して不安定な雇用を拡大し、 労働基本権を縮小する労働法改悪は世界的な現象で、 これに反対する労働者たちの闘争も各国で展開されている。 しかしこうした闘争を理由としてナショナルセンターの委員長を刑事起訴し、拘束するのは韓国を以外には見つけるのが難しい。

ILOの貧困撤廃の課題を扱う書記局長報告書をめぐり各国の労使政代表が討論する本会議では、 フランスの労働法改悪反対ゼネストをはじめ、各国政府の労働改悪を糾弾する発言があふれた。 民主労総のチェ・ジョンジン委員長職務代行もこのような討論に参加し、 韓国から貧困をなくし、不平等を解消するためにはすべての労働者に労働組合の権利を保障し、 財閥が租税責任、使用者責任、社会的責任を取らせろと主張した。

各国の労働者代表と国際産別労連の代表者たちは、討論の過程で世界的な労働基本権後退の代表的な例として 民主労総のハン・サンギュン委員長の拘束と刑事処罰に何回も言及した。 こうした言及は、貧困撤廃のために「労働改革」が必要だと熱弁を吐いて民主労総を「現実直視を拒否し、現状維持を望む一部の勢力」と罵倒するのに余念なかった労働部次官に厳しい忠告を与えるものだった。

各国が批准した協約がしっかり履行されているかを審議する基準適用委員会でも、 審議の対象に上がる政府目録を採択するセッションで、労働者グループの全体を代表するマーク・リーマン報道担当者は冒頭発言で 「民主労総の委員長をはじめとする労組の幹部が労働法改悪に反対し、 集会結社の自由の権利を行使したという理由で拘束されて刑事処罰に直面しているが、 韓国政府は87号協約(結社の自由)を批准しておらず、この場では審議さえできない」と批判した。 これに力づけられて、7月4日のハン・サンギュン委員長の宣告公判前、 100を超える国際労働組織および各国の労働組合が無罪釈放を要求する書簡を朴槿恵(パク・クネ)大統領宛てに送った。

国際労働基準上向
グローバルサプライチェーンで元請企業の使用者責任を
強制する国際的闘争形成

今年のILO総会で議論されたさまざまな議題のうち、最も論争的で強く関心を引いた主題は、「グローバル・サプライチェーンでの良質の雇用」だった。 資本は非正規職雇用の拡大、多段階下請と外注化、労働力が低く規制が弱い国家に生産基地を移転して、費用を減らして責任は回避してきた。 新自由主義世界化の拡大により超国籍企業の行為の影響を受ける労働者の数は急増しているが、 彼らが自分の労働条件の責任を超国籍企業に問うことは難しくなった。 国際労総はこのような現実を反映した新しい基準設定のための議論を総会の議題として扱おうと主張し続け、そのため該当委員会が今年の総会で設置されたのだ。

国際労総は超国籍大企業を頂点とするグローバル多段階下請構造全般に国際労働基準が適用されなければならないが、 一国的労使関係、正規職直接雇用を前提として樹立されてきた現在のILO協約は、もはや普遍的に適用されていないと指摘した。 総会の開幕式で労働者グループのリュック・コルテベーク報道担当者は新しいILO協約の採択を労働者グループの目標として提示した。 「場所を問わず、企業が行った権利侵害を規律できるような法規を制定する国家の義務をこの協約の中心に置かなければなりません。 また企業が自分の活動によって発生しかねない権利の侵害を予防する義務(Due Diligence)、 供給網に関する情報を公開する義務、安定した雇用の促進義務、非自発的で非典型的な形態の雇用撤廃、 産業別あるいは超国籍の団体交渉、労働基本権保障などを明示しなければなりません。」

しかし使用者グループはこのような協約の樹立に反対し始め、使用者グループの報道担当者は 「政府の責任を企業に転嫁すべきではなく、(ILOで新しい協約を樹立しようとする試みが)企業と人権に関して既に樹立されている国際的な合意に疑問を提起する一方、 ILOの信頼性を弱める」と脅迫しさえした。 しかし使用者グループの妨害にもかかわらず、ILO内に協約を含む新しい枠組みによるグローバル・サプライチェーン全般での超国籍グループの行為を規制し、 責任を問うべきだという側に結論が集まった。

採択された結論は、グローバル・サプライチェーンを規律するための政府の役割として、 △法遵守および労働行政システムの強化、 △すべての労働者に団結権・団体交渉権を保障、 △公共調達における労働基本権の増進、 △国営企業/公企業人権実態調査-Due Diligenceの実行、 △サプライチェーンでの良質の雇用促進、 △責任企業経営の促進および規制、 △反腐敗、 △労働基本権の低下が比較優位で活用されないように貿易協定に労働権基準を入れる、 △グローバル・サプライチェーン内のすべての労働者労働権を保障する方案の導入を提示した。 また企業の役割としては、 △国際基本枠組み協約(Global Framework Agreement、国際産別労組と超国籍企業が締結する低い水準の超国籍団体協約)の促進、 △『国連企業と人権履行指針』の遵守、 △すべての事業関係内(下請、請負など)の人権実態調査義務の遵守を提示した。

労働組合に対しては超国籍企業を対象として団体協約締結を試み、締結された協約の履行を監督する役割を要求した。 これに伴いILOは、 △サプライチェーンでの良質の雇用を促進する既存の協約批准を促進し、 △国境を越える団体交渉および社会的対話を促進し、履行を監督して、 これに関して紛争が発生した時に仲裁し解決できる制度を導入するように検討したいと述べた。 また、これを実現するために適切な時期にグローバル・サプライチェーン内の良質の雇用に関する労使政会議を開き、 その具体的な時期と方式は理事会が決めることにした。

ユソン企業の民主労組破壊には現代車が直接かかわっているが、 ユソン企業の労働者は雇用関係がないという理由で責任を回避している現実、 多くの間接雇用労働者が「本当の社長」の責任を要求している現実などを見る時、 この主題は韓国では全く新しい議題ではない。 今回の総会ではグローバル・サプライチェーンを規制する基準の必要性についての合意がなされたが、 新しい協約ができるのを待っていることはできない。 各国の労働組合は超国籍企業がサプライチェーン全般に及ぼす影響力と費用の転嫁、責任回避を表面化させ、圧力を加えなければならない。 そのためには労働者運動がグローバル・サプライチェーン全般を包括する連帯を強化して、 財閥企業が産業水準またはサプライチェーン全般を包括する国境を越える水準の交渉や責任を拒否できないように強制しなければならない。

国際労働基準の適用促進
韓国企業のグローバル労組弾圧に対する積極的な対応

各国の政府が批准した協約の履行について審議する基準適用委員会は、 ILO総会の最も重要な部門の一つだ。 毎年2月に発行される約500ページの分量に含まれた専門家委員会の各国政府の批准協約履行あるいは違反に関する具体事例から24〜25項目を選定し、 集中審議する形態で行われる。 2009年、2013〜2015年には、韓国政府の111号(雇用職業上差別)協約履行が基準適用委員会の対象になったが、 今年はさらに重大で深刻な事案が多かったため、韓国政府が審議対象になることはなかった。

しかし海外各国に進出した韓国企業が該当国の劣悪な労働法と制度を利用して、 あるいは経済自由区域などで提供される法適用免除を乱用し、 進出国の協約違反を先導する場合は珍しくないため、 これについて積極的に提起することを委員会出席の目標に設定した。 これによりフィリピン(87号)の審議では、韓国企業が集中的に進出し、労組設立妨害および弾圧を続けるCavite/ラグナ公団の現実を、 インドネシア(87号)の審議では「韓国人縫製協会」が主導力を行使するチャクン輸出加工地帯での軍部隊と結託した労組弾圧の現実を、 カンボジア(87号)の審議ではやはり韓国企業が多数進出し、正規職を契約職に転換することにより労組の設立を妨害したり、活動を阻害している現実を提起した。 バングラデシュ(87号)の審議では発言の機会が得られずに直接提起することはできなかったが、 永元貿易が設立した「韓国経済自由区域(Korean Export Processing Zone、KEPZ)」での曖昧な法適用が指摘された。

会議の外で別途に会ったセルビアの労働者代表は、現代起亜車チェコ/スロバキア工場に部品を供給する1次部品メーカーの韓国企業ユラコーポレーションの労組幹部標的の事実を民主労総に伝えた。 ホンジュラスの労働者代表も、現代起亜車米国工場に納品するキョンシン・リアが不当労働行為を行ったのに、 6億ウォンもの過怠金を未納にして、むしろ工場撤収の威嚇を続けていることを喚起して、 韓国政府との面談を斡旋してほしいと民主労総に要請した。 海外に進出した韓国企業が国際労働基準を遵守するように強制する役割は、 民主労総に要求される重要な課題だ。[ワーカーズ17号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-07-17 21:55:38 / Last modified on 2016-07-17 21:55:41 Copyright: Default

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