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狂ったようについて行きたかった

ワーカーズ15号 イシュー 脱北青少年

シン・ナリ記者 2016.06.15 23:20

▲写真/ホン・ジノン127番送電塔座込場、密陽

つやつやした紙の教科書に驚いた。 そしてそれに何ごともなく書き込みをする子供たちに驚いた。 教科書に直接文字を書いてもいいのか悩んだ。 北朝鮮離脱青少年のA(20)氏は、初めて教科書を受け取って驚いたと話した。 次の学年に譲らなければならない北朝鮮の教科書には、何かを書き込んだことがないからだ。 北朝鮮は、幼稚園、小学校と中学校がすべて無償教育だ。 教科書から筆記道具、制服、給食など、教育全般を国家が支援する。 「私のこと」ではなく、「皆のこと」なのだ。 しかし、韓国の教育は形式的には義務教育だが、その中で行われるほとんどは「各自のこと」だ。 無償給食の議論が示したように、学生の給食も選別なのか、普遍なのかをめぐり、意見が分かれる。 筆記具はもちろん、制服と問題集、修学旅行など、大部分の教育活動に個人の金がかかる。

こうした状況で現在、小中高校に通う北朝鮮離脱青少年が受けられる公式な支援は、 入学金と授業料程度だ。 これさえ教育保護対象者証明書を提出しなければならない。

「北朝鮮離脱住民の保護および定着支援に関する法律」第24条には教育支援が明示されている。 教育保護対象者を証明すれば、小中高校に在学する北朝鮮離脱青少年は、入学金、授業料の支援を受けられる。 公式に彼らが受けられる普遍的な支援はここまでだ。 学業のための支援や脱北の過程で体験した心理的安定のための情緒的な支援はない。 地方自治体や南北ハナ財団など、北朝鮮離脱住民を支援する各団体の政策のうち、 「青少年」を対象とするプログラムを見つけて申請しなければならない。 教科書への書き込みにも馴染まない彼らが見つけ出さなければ受けられない恩恵だ。

授業にもついて行けないのに進路キャンプ?

学校に通う北朝鮮離脱青少年にとって一番難しいのが授業時間だ。 大韓民国の教室は戦場だ。 横も後ろも振り返る暇を与えない。 韓国の教育現場は先に行かなければ生き残れない所だ。 北朝鮮離脱青少年の適応を妨害するのも学校の授業だ。 わからなければ聞いて、足りないところを埋める時間が許されない。 北朝鮮離脱住民財団が2011年に北朝鮮離脱青少年を対象として行ったアンケート調査によれば、 彼らが学校生活で一番困っている問題は「学校の授業について行くこと」だった。 50%以上の学生が授業時間の困難、17.9%が文化と言語適応、10%が友人関係をあげた。 心理的な萎縮にの前に、目前の「勉強」という現実的な問題で適応が困難なのだ。 韓国で中学校3年と高校3年を通ったB(21)氏も、一番難しかったこととして「勉強」をあげた。

「いったいどうして行けばいいのか分からなかった。 国語や数学は北朝鮮で習った科目だったが、韓国で習う方式ではなかった。 北朝鮮では、国語は詩の朗読が重要だった。 感情を込めて詩を読むことを授業時間によくやった。 数学も大きな差があった。 小学校で習った数学は、たし算、引き算、割算などの基礎的な部分だった。 中学校で習った数学は、ある問題を応用する方式だった。 ひとつの問題を深くやる。 機械的に公式を覚え、早く多くの問題を解く韓国の方式に適応するのにとても時間がかかった。」

B氏は韓国で体験した中学校3年を「暗黒」だったと表現した。 他の何でない授業時間、勉強について行けないことによる困難だった。 がんばってもうまくいかない科目には英語も含まれる。 北朝鮮で習ったアルファベットと、主語、動詞、目的語などの基礎的な文法で、韓国の英語の授業を理解するのは容易ではない。

韓国教育課程評価院のチョン・チェグァン研究員は「北朝鮮離脱高校生英語学習実態調査および支援方案探索」という研究報告書で、 北朝鮮離脱青少年が体験する英語学習の困難を明らかにした。 報告書によれば、北朝鮮離脱青少年の86%が「英語の授業時間に熱心に聞く」と答えた。 だが「授業の内容の理解」についての質問には、半分に至らない学生しか肯定的に答えなかった。 「英語授業の難しかった点」を問う項目では、ほとんど(82%)の学生が「英語の基礎が不足していて難しい」と話した。 チョン研究員は報告書で 「多くの北朝鮮離脱青少年が韓国の言葉に馴染み、新しく学んでいる間に英語の学習で支障を受ける。 彼らは英語教室に通いたいが、事情が許さず通えないと返事をするケースが多かった」という点を指摘した。

多くの学生が困難を訴えているが、支援策は不備だ。 あるとしても、現場が必要とする政策ではない場合が多い。 現在、教育部の政策は、進路教育と韓国語教育、メンタリングに焦点が合わされている。 教育部は「2016年北脱出学生教育支援事業計画」を発表するにあたり、脱北学生一対一連携型メンタリングを支援すると明らかにした。 同時に脱北学生の実質的な社会定着を支援するために、脱北学生の保護者を対象に子供の進路教育をして、 進路・職業キャンプ運営を拡大する方案を発表した。 教育部も全国の小・中・高に在学している脱北学生の増加と彼らの学業中断率を下げる方案を検討したと伝えた。 問題は、彼らが一番困難を感じる教科の学習に対する支援がないということだ。 進路と就職のためのキャンプには予算を投資しても、これは学業を無事に終えた後のことだ。 毎日の授業について行けない状況で、進路と就職の方向を決めることは難しくならざるをえない。

学習支援を標榜するが、役に立つのかに疑問を感じる政策もある。 「北朝鮮離脱住民自立定着と統一基盤造成に寄与」することを使命とする南北ハナ財団は、青少年教育支援を行っている。 財団は満3歳から小学生までの脱北児童、北朝鮮離脱住民の子供を対象に学習支援をすると明らかにした (ホームページに案内されている対象は、小学生までだったが、財団の関係者は高校生まを支援すると話した)。 申請者が希望する1か科目に限り、学習誌を支援している。 対象者は週1回、家庭を訪問する講師の個別学習管理を受けられる。 時間は約15分だ。

知らないことを聞いて学ぶ個別学習管理をするには15分では短いのではないかという質問に財団の関係者は 「学習誌を与えて課題を知らせた後、どこが正しく、どこが間違いかを確認するには十分な時間」と話した。 続いて彼は「毎年約1300人が恩恵を受ける政策だ。 青少年が学習誌を受けて問題を解き、実際に学習能力が向上していると見る。 満足度を毎年評価しているが、学習能力が向上したという評価が多い。 効果が高い政策」だと話した。 どのような満足度と効果なのかは、内部の資料だということで確認できなかった。

もっと近く、もっと簡単に

専門家たちは、北朝鮮離脱青少年に「目の高さにあわせた政策」、実際に役に立つ連携型政策が必要だと口をそろえた。 彼らが一番必要としている部分を把握し、年齢から学習水準、脱北の過程で体験したことには個別の差が大きいので、 できるだけこれを考慮した政策を取らなければならないということだ。

虹青少年センターのホ・スギョン南北統合支援チーム長は 「学生にとってまさに必要なことは、学校の勉強の役に立つ学習支援だ。 対象者を考慮した実効性ある政策を取らなければならない」と話した。 続いて政策を施行する方式も検討が必要だと強調した。 ホ チーム長は「政策の方向や実効性も重要だが、政策を行う時も細かくやり方を見なければならない。 例えば脱北青少年の学習を支援すると言って彼らを学校に集め、別に補充授業をする方式は役に立たない。 学生たちを集めて授業をする場合、望まない脱北の事実があらわれることもあり、 これはそのまま烙印になりかねない」と話した。

青少年の両親や教師などの周辺人のための教育が必要だという主張もある。 建国大のキム・ソンミン統一人文学研究団長は 「北朝鮮離脱青少年がこの社会に安定して定着し、適応するためには、 社会的な認識と視線が変わらなければならない。 まず青少年が一番長く時間を過ごす彼らの近くにいる教師の変化がまず必要だ。 教師も同じように脱北に対する偏見があったり、情報が不足しているかもしれない。 彼らの認識が重要なのは、子供たちに直接影響を与えるから」と話した。 個人の人生を支援してきちんと面倒を見ることができる政策こそ、北朝鮮離脱青少年の定着に必須だ。 もっと近く、もっと簡単に接することができる、今日の問題を解決できるような支援策が切実だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-06-22 01:48:18 / Last modified on 2016-06-22 01:48:18 Copyright: Default

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