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「朴元淳市長、殴らないで耳を貸してください」

[ワーカーズ13号]チャムセサンの話

シン・ナリ記者/ジョンウン写真記者 2016.06.09 17:27

破水した。タクシーに乗って病院に向かった。 補助席に座り、産婦人科に行こうとしている時に交通事故にあった。 子供は未熟児として世の中に出てきた。 インキュベーターから見えない世の中に息を吐き出した子供は、視覚障害1級と判定された。 子供は遅かった。盲学校幼稚園に通う同じクラスの子供たちより行動が遅かった。 5歳の子供の手をとって病院を訪ねた。 知的障害1級と判定された。 19歳になった今も、子供は2歳の世の中を生きている。

ソウル特殊学校学父母協議会のカン・ボクスン(45)代表は、発達障害児の親として生きる間、多くのことが変わったと話した。 まず、めったなことでは驚いたりおじけづいたりはしない。 地下鉄で「あの女、前世にどんな罪を犯したからあんな子があるのか。 あの女、星の巡り合わせが悪くてあんな子になった」という話を聞いても気にしない。 カン代表が世の中で恐れるのはたった一つだ。 からだは19、知的水準は2歳の子供より先に死ぬこと。 その願いも一つだ。子供より一日だけ長く生きること。 発達障害者に対するシステムと政策が限りなく不足しているここで、子供より先に目をとじることはできない。

5月26日、カン代表は頭を刈った。 発達障害者の暮らしの問題、生存権要求を貫徹するための断髪式でだ。 6月2日現在、全国障害者父母連帯ソウル支部とソウル特殊学校学父母協議会は、 毎日二人が断髪する闘争を10日間続けている。 ソウル市庁舎裏門の前で始まった座り込みは30日をむかえた。

約束守れと言ったら殴られた

彼らが座り込みを始めたのは、ソウル市が約束を守らなかったためだ。 全国障害者父母連帯などは3月からソウル市に発達障害者政策樹立を要求して、政策案を提示した。 2015年に「発達障害者権利保障および支援に関する法律」が施行されたことで、 ソウル市に具体的な発達障害者権益保護と福祉支援計画樹立を要求したのだ。 ソウル市は親の政策案に対して修正を要求した。 4月に親は主要政策を六つに整理して最終提案した。 その後、ソウル市と協議をして政策提案は調整されるかに見えた。

問題は5月4日に起きた。 この日の協議の場で、ソウル市は重症発達障害者生涯教育センターを5か所設置すると明らかにした。 親は昨年ソウル市が約束した25のセンターを設置しろと主張した。 協議は中断された。 そして暴行事件が発生した。

保護者代表がソウル市と協議をする間、他の保護者はソウル市庁のロビーで彼らを待っていた。 ソウル市が約束を守らず協議が中断されると、保護者たちは占拠座り込みに突入しようとした。 市庁の職員は障害児童と保護者を市庁の外に引き出した。 先に障害児童を市庁裏門の外に引き出した。 市庁の裏門は駐車場とつながっていて自動車が通る所だ。 障害児童がそのまま事故の危険にさらされた。 実際に事故もあった。 ソウル市が引き出した発達障害児童のうち2人がいなくなり、1時間後に見つかった。 保護者たちも怪我をした。 彼らは無理に追い出そうとするソウル市に抵抗して肩破裂と腰傷を負ったと主張した。 暴行の論議がおきた。

これに対してソウル市は約束破棄ではないという立場だ。 ソウル市障害者福祉政策課の関係者は 「重症発達障害者生涯教育センターは自治区の事業だ。 ソウル市は補助金を支援する。 センター設立の要請がくれば支援するといったのであって、設置を確定したわけではない」といった。 5月4日に発生した暴行問題については言葉を控えた。 関係者は「4日に議論があったのは事実」と話した。 暴行と発達障害児童を危険にさらしたことに謝罪するべきではないかと尋ねると 「父母が公式に謝罪要請をしていない」と答えた。 被害者が謝罪を要求すれば考えてみるという加害者の奇異な答だ。

正義党障害者委員会のイ・ヨンソク委員長は、ソウル市の責任ある謝罪を要求した。 イ委員長は「この問題は無条件にソウル市が先に謝罪すべき部分だ。 ソウル市は保護者と子供を投げ飛ばしたやり方を謝罪して協議を始めなければならない。 しかし現在、何の対話もせず、知らないふりしている」と話した。

親が死んでも暮らせるだろうが…

全国障害者父母連帯ソウル支部とソウル特殊学校学父母協議会議は、六項目の要求を掲げてこのうち2項目をまず施行しろと要求した。 発達障害者の住居と所得だ。 地域社会中心住居モデルを開発し、発達障害者住居対策を樹立してくれと言うことだ。 発達障害者はほとんど学令期が過ぎて成人になれば、行く場所がなく家で過ごす。 自閉性障害者のうち1〜2%だけが成人になった時、自立して生活できる。 保護者なしでは何もできない状況では、生活半径と活動は家の中に限定される。

キム・ヒョンスク(52)氏は知的水準が2歳の21歳の知的障害1級の子供がある。 24時間のうち、何分も子供を一人にしておけない状況だ。 キム氏は「一度は30分間一人でいる練習をさせようと、CCTVを付けて子供を観察した。 すると玄関を開いて外に出て行こうとした。 危険を全く知らない、ただの子供だった」とし 「グループホームや訓練などを支援できるシステムがなければ、 今のように家族全員が組になって24時間子供を保護しなければならない」と話した。

所得も発達障害者にとって重要だ。 認知水準が2〜3歳の知的障害1級の場合、事実上就職ができない。 それまでソウル市は障害者の所得保障のために「育てる通帳」事業により、 低所得層の障害者が貯蓄すればソウル市が追加で貯蓄額と同額を支援する政策を施行してきた。 だがこうしたソウル市の障害者所得保障政策は、四大保険が適用される職場で働く者に対象が限定されている。 就職が難しい発達障害者は享受できない恩恵だ。

韓国韓国保健社会研究院のチェ・ボクチョン研究員は、発達障害者だけの特殊性を生かしたグループホームや住居施設、所得と関連した政策が必要だと指摘した。 チェ研究員は「発達障害は他の障害よりも幅広い症状と状況に置かれている。 非障害者と似ているような場合もあって、対話が容易ではない重症障害もある。 その上、彼らの症状は良くならないが、保護者は老いて行く」とし 「時間が経てば親の養育負担が減るのではなく、問題が加重される側面がある。 発達障害者は他の身体障害者と比べると症状と状況が多様なだけに、 所得、住居、職業、サービスプログラムを細かく備えなければならない」と批判した。

発達障害は出生と成長期に脳に発達の問題が発生したことによる疾患だ。 知的・社会的・身体的機能が損傷し、一生続く。 明確な原因は明らかになっていない。 そのため予防法もなく、治療法もない。 特殊教育により、認知機能と自己管理能力を着実に習得するほかはない。 誰にでも生じる疾患に社会はどう対処すべきなのだろうか。 状況を把握して要求を聞いて暮らしていける社会的システムを用意しなければならないのではないか。 ソウル市庁の正門に書かれている「聞く耳を持って聞きます!」という文句が面目を失う。(ワーカーズ13号)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)


Created byStaff. Created on 2016-06-14 16:42:43 / Last modified on 2016-06-14 16:42:44 Copyright: Default

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