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お母さん、「ゼネスト」って何ですか? 食べ物ですか?

[2015ゼネスト](1) 「ゼネスト」は古臭い20年前の単語なのだろうか

ユン・ジヨン記者 2015.03.05 10:52

来る4月末、民主労総がゼネストに突入する。 4月の24日頃にゼネストに突入した後、5月1日まで連続して闘争を配置する計画だ。 ずっと昔からゼネストは地域や事業場単位を超えて、すべての労働者が仕事を止めるという意味だ。 すべての労働者たちが仕事を止めれば世の中は止まるが、労働界がゼネスト宣言をしたのに世の中は不思議な程、静かだ。 ポータルサイトで「ゼネスト」という単語を入力すると、ある保守日刊紙の論説が眼についた。 「存在感を失う民労総」という題名の論説には「強硬労組の代表組織が宣戦布告したのに、誰もが無表情」だとか 「突然のゼネスト」、「無分別なゼネスト」といった表現が多数続いた。

民主労総が本当に無分別なゼネストを断行してきたのだろうか。 振り返ってみると、それほどではない。 少なくとも労働界を見てきたこの5年間、世の中が止まったことはなかった。 ただし、民主労総がゼネスト計画を樹立し、決議し、宣言したというような記事は数多く書いてきた。 関連記事を探してみると「拘束を覚悟するから指導部を踏み越えて行け」という切なるゼネスト宣言記事も発見した。 ゼネストに突入した後、都心集会を開いたという記事もあった。 だが民主労総のゼネストにどの程度の規模の労働者が参加したのか、明らかになったことはない。 本当に集計できないのか、まったく集計するつもりもなかったのかも分からない。

民主労総がまたゼネストを宣言した。 今回だけは嘘っぱちストライキ、動員ストライキではなく、本当のゼネストをするという。 可能性は別として、いったい労働界が言う「ゼネスト」とは何なのかが気になった。 成功的なゼネストと記録された96年〜97年の労働法改正闘争(労改闘)ストライキはもう20年も前の事だ。 当時は小学生だった30代初めの青年にとって、96年とはアイドルグループのHOTがデビューした年でしかなく、 どんなに記憶を掘り返してみても労改闘ストライキの残像は思い出せない。 ゼネストを経験したことがなかっただけに、労働人権教育さえ受けられない世代にとって、 「ゼネスト」は労働界だけの抽象的な単語でしかない。 それで人々に聞いてみた。 ゼネストって何ですか?

[出処:チャムセサン資料写真]

お母さん、「ゼネスト」って何ですか? 食べ物ですか?

今年31歳、高校教師に在職中の中学校同窓のAさん。 なにしろ高校担任教師までしているので、いろいろなことを知っているように思った。 彼女にゼネストについて説明してくれとカカオトークを送った。 普段、ずば抜けたタイピングの実力でカカオトーク爆弾を送ってくる彼女がなぜか静かだ。 しばらく後に答がきた。 「ゼネラルス・トライキじゃないの?」 正確な意味を知らせてくれと再度尋ねたが答はなかった。 翌日、Aはゼネストの質問などは忘れたかのように、 江南駅カフェにコーヒー飲みに出て来いというカカオトークを送ってきた。

韓国屈指の大企業S社に通う31歳のB君。 電話を受けるとすぐ、結婚をするのかとストレスを与える。 そうでなくて、かくかくしかじかだと事情を説明した後、ゼネストについて聞いた。 彼は「ゼネラルストライクの『ゼネラル』が『総』の字だ」といったつまらない言葉をならべるだけだった。 ゼネストの具体的な意味を聞くと「仕事で通話が難しい」と言って急いで電話を切った。 次は公共機関非正規職雇用を転々とし、2年前に大企業下請会社に就職した31歳のCさん。 新婚旅行をまるごと海外奉仕活動に捧げる程、透徹した奉仕精神の人物だ。 彼女にゼネストについて聞くと「労働者たちの最後通牒」だという答を出した。 だが「あなたが考えているゼネストの姿をいってくれ」という質問には、今まで全く無消息だ。

大部分の反応は似ているが違っていた。 35歳の事業家D君は、ゼネストに対して「労使協議が不発になり、労働側がみんな同じように寝っころがること」とし、使用者側らしいシニカルな反応を出した。 36歳の社会福祉士E君は、ゼネストを「労働者の権利」と話しながら、自分が考えるゼネストの姿は 「(労働界が)毎年行う祭りのようなもの」と答えた。 26歳の金融界会社員Fさんは、ゼネストについて「よく知らない」と言った。 ただし彼女にとってゼネストは「誰かが雇用を失い、誰かが雇用に回る」という 多少悲劇的な結末を意味する単語であった。

20代も最後になった29歳の公務員Gさんは全く真剣だった。 彼女はゼネストについて「勤労者が自分の権利を侵害されたり、守るために、 使用者と意見が一致しない時の最後の手段で、 使用者と契約した義務を放棄して交渉の手段に使うこと」という長い定義をした。 それと共にゼネストがしばしば譲歩や配慮なく多少過激になって、 公共部門のストライキは不便を招いたりもすると言い、 暴力的ストライキよりも平和的な対話を優先すべきだという助言も付け加えた。

その次は29歳のHさん。 彼女は地域の市民団体の活動家だ。 彼女はゼネストの定義は「皆で同じようにストライキをすること」、 ゼネストの姿は「皆で同じようにストライキをする姿」という誠意のない回答をしてきた。 困ってチャムセサンの先輩記者にゼネストとは何かというカカオトークを送った。 「何のゼネスト?」という答ではない答に、胸がさらに苦しくなった。 結局、人生最高の師匠だという61歳のお母さんに質問をした。

お母さんは一進一退した。ゼネストについて尋ねると 「お母さんが家の労働をゼネストすればどうするの? バカなことをチッ、チッ... あいつ(お母さんと親しい間)のような人たちだったら、罵声をあげて大騒ぎする」と声を高めた。 そのうちにすぐ「昔、フランスで労働者たちが有給休暇を勝ち取って、お祭りをした」と言い、 「われわれはヨーロッパより労働者という概念の歴史が短く、 ただ楽に暮らそうして多くのことを我慢した。 まだ行く道が遠い」と主張もした。 そのうちにまた突然「まったくゼネストをして仕事をしなければ、中国が喜ぶ」と不意に中国を警戒して 「すべては相対的だ。お前も私に優しくすれば、お母さんもお前に優しくする」という結論になった。 盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領が死んだ後、虚無主義に陥り毎日植木鉢に水をやる60歳のお父さんは 「あいつらがゼネストをしても変わらないよ」というすっきりしない反応を見せた。

「労働者個人は資本と政権に踏みにじられる運命」

長い間、労働運動に身を置いてきた労働者と活動家の考えはどうか。 事業場の労組と地域支部で幹部として活動をしてきたI氏。 ゼネストは何かという質問に「ハン・サンギュン(民主労総)委員長の公約だろ」とし 「銃を持ってストライキ」という古風な冗談を言う。 続いてゼネストを「みんなが一緒にするストライキ」と説明した後、労改闘のストライキを本当の「ゼネスト」の姿だと言った。

[出処:チャムセサン資料写真]

昔、大型のストライキを指導した労組指導部出身のJ氏は記者の質問に 「general strikeとは、産業全般、または全国的な大規模ストライキを称する」という親切な回答をした。 続いて「きちんと(ゼネストを)やるには世の中を止めなくてはね。 でなければ嘘っぱちストライキ」とし 「(労改闘のストライキ時は)世の中が止まる程ではなかったが、 あちこちの工場が止まり、政権と資本を驚かせた」と説明した。

来年には60歳になる労働者のK氏。 全労協の時から今まで、多くの痛みと迂余曲折を味わいながら民主労組を守ってきた人だ。 彼にもゼネストについて尋ねた。 「文字どおり、すべての労働者が工場を止めることだね。 労働者が資本にできる抵抗、または要求貫徹のための一つの手段だよ」という回答が戻った。 では労働者たちはなぜゼネストをするのですか? 「労働者個人、または単一労組では巨大資本に徹底して踏みにじられるものだ。 ゼネストは労働者たちが希望を見らつけられるようにして、 また労働者が機械や使い捨ての付属品ではなく、同等の人間だということを資本に見せることで、人間革命の姿だ」

民主労総事務総局の活動家L氏にも尋ねた。 なぜ突然質問をするのかというように面倒そうに「辞典を引いてみろ」と言い、 「取材中だ」というとその時始めて「ゼネストは国内の労働者の最大単位のストライキであり、 資本と政権に打撃を与え、労働者の要求を勝ち取るための手段であり、 現在、民主労総は政府の労働市場構造改悪撤回など四大要求と、 労働所得中心社会への時代的な転換のための先制的ゼネストを掲げており、 96年〜97年の労改闘闘争は歴史的な闘争で、 午前には事業場別にストライキ集会をした後で道路に出て、 街頭デモを行った」とよどみなく話した。

L氏の忠告にしたがって百科事典を引いてみた。 ゼネストはたいてい政権を相手とする高度な政治ストライキで、 革命の強力な武器になるという説明が出ている。 大学の先輩で労務士として活動しているM氏は 「ストライキの共通の目的がある時、最大の威力を発揮するので、 組織全体でストライキに突入するもので、法的な定義はない」と説明した。 では民主労総のゼネストは確実に共同の要求がある、高度な政治ストライキなのだろうか、 あるいは保守言論が批判する「突然のゼネスト」なのだろうか。

「今の時代に『ゼネスト』をするのか?」

現在、民主労総がゼネストの要求条件に掲げている四大要求は、 △さらに簡単な解雇、さらに低い賃金、さらに多くの非正規職労働者抹殺政策粉砕、 △公的年金強化および公務員年金改悪中断、 △最低賃金1万ウォン争奪、 △5人未満勤労基準法全面適用および労組法第2条改正、すべての労働者の労働基本権争奪だ。 政府は「労働市場構造改善」という名で簡単に正規職を解雇できるようにする 「低成果者解雇制度」の導入と、 期間制や派遣制のような非正規職の使用期間を現行の2年から4年に延ばす方案などを準備している。 公務員、教師の年金削減が予告されており、労働者の8人に1人は最低賃金も受け取れない。

高等学校教師のAさんは最近の公務員年金改革の議論で情けさを吐露し、 S社の労働者のB君は企業の無労組方針で小さな声を上げることも出来ずに過度な業務に苦しんでいる。 突然解約されたCさんにとって「解雇」はそのまま絶望であり、 「非正規職」は抜け出せないドロ沼だった。 たとえゼネストを思い出すことが容易ではなくても、労働者なら誰もが避けられない危機状況は明らかだったようだ。

昔のような時代でもないのに、まだ「ゼネスト」なのかと面と向かって反駁する人もいるが、 不思議にもゼネストは今も世界各地で堂々と起きている。 わずか三か月前の昨年12月12日、イタリアでは労働者100万人がゼネストをした。 マッテオ・レンツィ社民主義政府が企業の解雇要件を緩和するなどの労働法改悪案を議会で通過させたのが理由だ。 企業の解雇要件を緩和し、団体交渉権を制限しようとしているのは、イタリアの政府も韓国の政府も同じだ。

[出処:イル・マニフェスト]

この日のゼネストには労働者をはじめ、失業者、学生なども通りに出て来て街頭デモを行った。 ミラノ、ローマ、ジェノバなど全国54の地域でデモが起き、都市は麻痺した。 バス、地下鉄、鉄道、航空などの交通が止まり、学校と大学、病院なども扉を閉めた。 イタリアでは、去る2002年にも約3百万の労働者がストライキで政府の労働市場改悪案を座礁させた。

これだけではない。 ギリシャは2011年から昨年まで、合計35回のストライキを行った。 ギリシャ政府が2010年の経済危機の時に福祉予算の削減と公共部門労働者の削減、 労働市場の自由化を強制する緊縮政策を実施したからだ。 ギリシャのすべての労働組合が闘争したが、保守政権は緊縮措置の不可避性を曲げず、闘争は5年間続いた。 ギリシャ労働者たちの闘争は結局、左派政権の支持結集につながった。

チャムセサン国際部の記者は「ギリシャ労働者たちのゼネストは、反緊縮の世論を拡散するための重要な契機になり、 最近では政権自体を変えなければならないという認識が広がったと評価されている」と説明した。 遠い国の話のようだが、解雇と失業、非正規職といった問題は外国のことではない。 むしろ、今まであまりにも静かに暮らしていたので、民主労総のゼネストが突然に思えるのかもしれない。 問題は、行動する方法を知らない多くの労働者たちが、今年、共同の行動に動けるのかだ。 労改闘ストライキどころかゼネストの意味さえぼんやりしているAからZまでの匿名の労働者たちは、 果たして今年の民主労総ゼネストを思い出せるのだろうか。(続く)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-03-07 07:08:35 / Last modified on 2015-03-07 07:08:37 Copyright: Default

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