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「常識が通じません。違いますか?」

間接雇用が作り出した現代車非正規労働者たちの風景

合同取材チーム 2010.11.27 10:27

現代車使用者側が交渉にも出ないのに不法派遣に対する対立が弱まらない。今 回の現代車非正規労働者の占拠座り込みは、使用事業主の現代車が大法院判決 による不法派遣労働者の直接雇用を回避したことに始まる。だが座込場で会っ た労働者の現実は、それよりもっと深いところから発生する問題だった。

「下請け業者は労働者の退職金を払わなくてすむように、11か月ごとに業者を 変えて再契約します。ところがそれも下請け労働者の契約業者を変える形では ありません。例えば現代車社内下請のX企業とY企業の労働者を互いにバーター する方式で再契約します。ですから労働者がここで働き、またあそこで働き… そんなことを繰り返して11か月ごとに移っていくのです。そうすれば同じ工程 にいるので組長が業務を教えなくても良いという利点もボーナスで取っていき ます。第4工場S企業の場合およそ60%ほどがそんなことを繰り返して、転換契約 します。」

コスト削減は、企業が派遣などの間接雇用を選ぶ主な理由の一つだ。派遣業者 間の競争関係で費用を節減するだけでなく、低賃金の問題を派遣事業主に転嫁 できる。派遣業者は非正規労働者の賃金と労働条件を下げ、業者間の競争費用 と自分の利益を得る。このようにして元請と下請けそして下請け労働者につな がる関係で中間搾取の構造ができる。

「本来、勤労契約書には月給を5日に払うことになっているので、業者は15日に 払います。みんな合わせれば莫大な金額ですから、10日間で利子がつきます。 それを取るために10日先送りして、賃金を払います。」

「有給休暇を使えないようにしても、作業量が多くて人が足りなくなっても、 下請け労働者を増やすのではなく、その時その時に日雇いのアルバイトを使い ます。そうすれば業者は良いです。アルバイトには賞与金や有給休暇を払わな くてもいいですから。」

現代車の場合、元請と下請けの関係にさらに一つある。座り込みをしていた労 働者は、下請け業者社長に転職元請職員がくることが多いと主張した。

「現代車社内下請のD産業は、現代車生産管理2部の元課長が社長です。」

「今回のドンソン企業の廃業で私たちがストライキを始めたのですが、その日 新しく入ってきた業者の社長がまさに第4工場の労務管理チーム長です。完全に これは非正規闘争を整理しろと、わざわざ下請業者の社長名刺一枚持ってやっ てきただけでしょう。」

「元請職員が下請業者の社長になるとたくさんお金を稼げます。ある業者では、 社長として稼いだ金で蔚山に焼肉屋を開きました。そして、会食の時は自分の 焼肉屋に行きます。それだけでなく高い酒を飲めないようにします。人が食べ るものなら木イチゴも食べたい時があって、百歳酒も一杯飲みたい時があるじゃ ないですか? ところでお金が惜しいからとにかく焼酎だけ飲めというのです。 また他の業者は、管理者が会食の場所を決めるとき、無条件そこに行かなくて はなりません。ところがこの管理者は、必ず車に乗って行かなければならない 遠いところに会食の場所を決めます。そうすると私たちが酒も飲めず、また遠 くに行くのが面倒な人は抜けて…これですよ。そうすれば会食費でまた金がで きるでしょう。」

このように、労働者たちの話の中にはむなしい笑いまで誘うひどい事もあった。 だが企業が派遣などの間接雇用に固執するのは、さらに根本的な理由がある。 現代車の場合、不法派遣は簡単な雇用調整ができるという長所と、それによっ て発生する労働者の雇用の不安定性を利用して、労働組合活動を抑圧したり、 労働条件悪化の防壁の盾として使われていた。

IMF経済危機以後、企業が非正規職雇用を拡大し、必要によって非正規職の投入 と解雇を繰り返してきたことは、すでに韓国社会の常識になってしまった。

「現代車は2003年までは社内下請労働者と新規採用を4:6の割合で正規職化した のですが、その翌年から今までまったく正規職を選びません。」

事実、労働界の反対にもかかわらず、派遣法を導入した趣旨は労働の柔軟化だっ たので、あるいは当然かもしれないが、それが誘発する非正規労働者の雇用不 安はさらに多くの問題を抱かせた。6か月、11か月ごとに再契約をしなければ、 雇用が維持できない現代車の非正規労働者たちにとって、最も恐ろしいのはま さにその雇用の不安だ。

「労組活動は難しく、基本的に加入そのものが非正規職にとって危険負担が大 きいのです。業者で『労組に加入したら解約だ』と脅迫するからです。それで 非正規労働者どうしが集まって話すこと自体が出来なくします。集まればどう しても業者について色々な話が交されるのは明らかでしょう。一度は運動会を することにしたのですが、取り消して個別に1万ウォン支払いましたよ。運動会 をさせず、その金を私たちに払えば、私たちが勝手に会食をしたり、一緒に使 うこともできますが、それもさせないのです。そうしておいて、『会食したと 言え』というのです。」

そんなことを話してどうなるというのかと思ったのか。そばで聞いていたある 労働者は「常識が通じません。違いますか?」とすぐ背を向けてしまった。

非正規労働者には、労組の加入や活動が難しいだけでなく、それより先に労組 を作ることが障壁だ。そして雇用を握り、非正規職労働者に得られるのはそれ だけではない。

「第4工場のS企業の場合、労働者の有給休暇も使えないようにします。物量よ り人が少ないので飛び石連休や名節は、月次を使って連続で休めないようにし ます。それにおとなしく愚かな労働者は扱いやすいので、さらにひどく扱いま す。私の同僚は、とてもからだが弱く、月次を使うというと所長が『本当に病 気なのか確認する』と同僚の妻に直接電話をしました。そんな電話を受けたそ の妻もどれほど腹が立ったか。その同僚も今私たちと共に占拠座り込みしてい ますが、妻が私たちのストライキを積極的に支持しているそうです。」

「下請け労働者でも、われわれは大工場の下請けで労組もあります。そうでな い事業場の労働者たちは、これよりひどい生活をしていると考えるべきです。 現代車でも第5工場や輸出船積には労組がないので、おそらくもっと苦しいでしょ う。第5工場は2005年に不法派遣闘争をして労働者100人が解雇されたんですが。」

このように、企業が派遣などの間接雇用を好むのは、景気の変化による雇用調 整がさらにやさしく人材管理が容易だからだ。それだけでなく、現代車のよう に、実際の使用事業主が人材管理と統制を下請け業者を使って影響力を行使し、 間接雇用労働者に何の責任を取らなくても良いからだ。

実際、現代車使用者側と非正規支会はその点で鋭く対立している。占拠座り込 みをしている現代車非正規支会が、大法院判決による不法派遣正規職化を要求 しているのに対し、現代車使用者側は交渉の義務はないと交渉自体を回避して いる現状況が、上の問題をそのまま見せている。

こうした現代車非正規労働者の現実は、不法派遣かどうかを離れて、間接雇用 の形態の勤労契約が持つ本来の性格でもある。イーランド-ニューコア、キリュン、 ドンヒオート、多くの清掃用役、KTX女性乗務員、コスコム、ハイニックス マグナチップなど無数の非正規労働者たちの共通した現実だった。

李明博政権はこうした派遣法許容業種を拡大するという立場だ。派遣法の許容 から12年、非正規労働者をしばっていたそれまでの接雇用のくびきが、さらに 引き締められようとしている。『すでに広がった不法派遣を完全に合法化する 意図』という労働界と市民社会団体の批判が提起されているが、すでに企業は もっと足早く動いていた。

「今はもう契約書に派遣法拡大対象に含まれる職種をさらに一つ書き込んで、 勤労契約をしろといいます。契約書にそのいくつかの文字を入れさえすれば、 法的に問題にならないので、そうして避けようとするんです。それで契約書を 書かなかった人も多いです。」

LG投資証券とイトレード証券はそれぞれ6月と10月、2010年の現代自動車の年間 純利益は5兆ウォンを越えると予想した。そして今、現代車社内下請労働者たち は13日間、一日にのりまき1、2本で、冷たい工場の床にビニール一枚をふとんに して寝ている。(蔚山=メディア忠清、蔚山労働ニュース、チャムセサン合同取材チーム)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-11-28 14:57:18 / Last modified on 2010-11-28 14:57:20 Copyright: Default

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