現代車の大騒ぎと、盗まれた非正規職の賃金

［寄稿］ストライキの損失? 現代車の厚かましい嘘だ!

「ストライキの損失で企業と国民経済が危険だ!」。非正規職ストライキが一週 間を越え、保守新聞と資本はまた古臭い扇動を始めた。現代車使用者側は日曜 に報道資料で、11月15日から20日までに第1工場で7732台の生産の支障があり、 約903億ウォンの損失をこうむったと明らかにした。そして保守新聞はさらに一 足踏み出して、非正規職ストライキは不法で、使用者側に莫大な損失を負わせ た非正規職労組を厳しく処断しろと主張した。

6日間のストライキ損失が903億? 社会世論糊塗のための現代車の大騒ぎ

だが労働組合ストライキにはいつも必ず出てくるこのレトリックは、誇張と欺 瞞で埋まっている。何よりも使用者側の損失額は、在庫が全くないことが前提 だ。在庫がないから生産に支障が出ればすぐ損をするというわけだ。もちろん、 在庫がないメーカーがあるわけがない。ある証券会社の分析によれば現代車の 最近の在庫水準は約1.9か月分の物量だという。

生産が中断した第1工場では、クリック、ペルナ、新型アバンテが生産される。 市場に発表されてからいくらも経たない新型アバンテを除き、あとの二車種は 輸出の割合が95%を越える。輸送期間が長く、需要の変動が大きい輸出物量は、 さらに在庫管理が厳格だ。韓国自動車工業協会によればクリックとペルナの二 車種の1月から9月まで月平均生産台数は22903台だ。1.9か月分の物量が在庫と して存在すれば、4万3千台以上が在庫だということだ。現代車は生産予想台数 に出庫価格をかけて損失だと主張するが、実際は在庫が若干減っただけだ。こ うした点で、事実上非正規職支会の1週間ストライキで現代車が損をした部分は まだ小さい。もちろん販売されて1か月もたたず、十分な在庫がない新型アバン テは生産の損失がありえる。だが新型アバンテの生産量はまだあまり多くない。

現代車資本は以前の正規職ストライキの時も、いつも数千億の損失を言って大 騒ぎをしたが、振り返ってみれば生産損失分はほとんどがストライキ以後の残 業特別勤務で補充してきた。現代車のストライキによる損失の主張はまだおお げさに言っているだけで、非正規職ストライキに友好的な社会的世論を変えよ うとする術策でしかない。

▲20日正午、現代車カン・ホドン副社長の進入の試みで1.2メートル狭い鉄製階は戦場になった。［出処:合同取材チーム］

労働者のスト権は資本に損失を負わせる権利だ

もちろん、現代車が主張する損失は誇張だが、非正規職労働者のストライキが 続けば明らかに自動車の売り上げに大きな影響を与えるだろう。

だがそれでも労働者のストライキは悪くない。韓国の保守新聞各社と資本は、 企業の利益に影響するストライキはすべて不法とレッテルを付けて批判するが、 労働者のスト権とは、生産手段を持たない労働者が生産手段を独占する使用者 に対抗し、団体行動により損失を与える『権利』だ。もし資本が主張するよう に、ストライキで資本に損失を与えることがすべて不法なら、合法的ストライ キは労働者にとって何の意味もない『休み』以上のものではない。

現在、韓国政府と保守的な法院は、ストライキの目的として経営権を侵害して はならず、手段と方法も使用者の財産権を侵害してはならないという労働法の 毒素条項を理由に大部分のストライキを不法としている。だがそのどの経営行 為が労働者の賃金労働条件とかけ離れていて、職場閉鎖と用役チンピラを動員 した労組破壊が横行し、いつも法院の判決さえ無視する使用者が多くの韓国社 会の労使関係で、どんなストライキが平和的行為だというのか分からない。簡 単に言えば、政権と資本の立場からみて、使用者を威嚇するストライキはすべ て不法だというのだ。

そんな理由で韓国の多くの法学者は、現在の労働法が憲法が保障するスト権を きちんと保障していないという批判的視点を持っている。労働者が自らの賃金 と労働条件を保護するために、最後に選ぶ武器としてのストライキは、広い範 囲で認められるべきだと主張する。

さらに今回の非正規職支会占拠ストライキは、使用者側の明らかな不法行為で 発生した。現代車使用者側は、社内下請労働者を正規職と見なすべきだという 大法院の判決にもかかわらず、非正規職支会との一切の交渉を拒否したばかり か、さらに非正規職労組を動揺させる目的で第1工場の下請け業者を偽装廃業し た。現代車非正規職支会の占拠ストライキは労働者の正当なスト権行使であり、 それによる現代車の損失は当然鄭夢九会長が耐えるべき部分だ。

『正規職化による社会的利益』 vs 『国民経済と無関係な現代車の現金』

一方、使用者側と保守言論の主張と違い、まさに社会的に莫大な損害をもたら しているのは現代車資本だ。7月22日の法院判決にもかかわらず、現代車使用者 側は非正規職労働者の正規職雇用を拒否し続けている。金属労組の計算によれ ば、現代車が8千人の不法派遣職を使用することで着服した賃金だけで年960億 ウォンにのぼる。派遣勤労制が定着した10数年という時間を考えれば、1兆ウォ ン以上の賃金を着服したということだ。

現代車がこうして着服した賃金は、国民経済と無関係な鄭夢九のポケットに入 る。端的な例で、数日前に証券取引所が発表した資料によれば、現代車の2010 年の現金性資産は韓国最高水準で、7兆8千億ウォンにのぼるが、現金性資産と は現金、当座預金、満期1年以内の短期金融商品などで、雇用創出、付加価値の 創出とは特に関係のない金だ。2009年、経済が苦しいと言って非正規職を解雇 し、賃金を削減した現代車の現金性資産は2009年末より6908億ウォン増えた。

もし現代車が今年増やした現金の1/7だけを賃金に使っても、現代車の社内下請 労働者は全員を正規職として雇用することができた。そして同時に雇用安定と 賃上げを達成した労働者が韓国家計の平均消費(3分位家計なら所得の80%)を増 やせば、年840人の追加雇用(消費の就職誘発計数は10億党11人)も付加的に作り 出せた。だが現代車が選択したのは、非正規職労組を弾圧し、大法院判決まで 無視して、唯一自分の腹を膨らます現金を確保することだった。

答は明確だ。現代車非正規職労働者の正規職化の要求は、まさに社会的、国民 的利益だ。現代車と保守言論が発表した損失は、その規模も誇張しているばか りか、実は正規職化による国民的な利益も隠している。国民のすべてが現代車 非正規職闘争を支持すべき理由だ。蔚山の百万市民、1500万労働者、5千万国民 のすべてが現代車非正規職闘争と連帯すべき理由だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
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