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1890日、ショベルカー上の女たち

[寄稿] 20年前の九老工業団地女性労働者とキリュン非正規職女性労働者

ミリュ(人権運動サランバン) 2010.10.25 09:35

私は「決死闘争」が嫌いだ。いつからか、集会で叫ばれるシュプレヒコールの 後に六文字の常套句が付くようになり、少したって「決死闘争」までつけられ るようになった。「非正規職撤廃して労働権を勝ち取ろう!非、正、規、職、撤 廃、闘争! 決死、闘争!」こんな調子だ。いつか、そんなシュプレヒコールをあ げ始めた時、誰かは切実に死を覚悟していたのだろう。しかし生気のない常套 句、「決死闘争」、音声案内メッセージのようなトーンで繰り返される「決死 闘争」、私はこんな「決死闘争」が嫌いだった。いったい、そんな簡単に吐き だせる決死闘争なら、なぜ死を覚悟するのだろう。

10月16日、キリュンの座込み場に警察兵力が配置されたという急迫した携帯メー ルを見て、キリュン電子旧社屋前に駆け付けた。地域バスから降りると、ショ ベルカー一台がどうしていいか分からないかのように止っている。運転手もな く、すでにスローガンが書かれたプラカードと各種の装飾で、座込み場のもの になったショベルカーが、なぜそんなにそわそわしていたのか。見たくなかっ たが見えたものは、ショベルカーの一番高いところで体を傾けたまま電線一本 をつかんで危うく立っているソン・ギョンドン詩人のためだったのだろう。そ の電線をつかむことに全力をふりしぼるキム・ソヨン分会長とショベルカーの 下で、頼むから目を開いて両足を踏みしめろと哀願する人々の声のためだった のだろう。

警察力が退いた後、ソン・ギョンドン詩人は重心を捉えて重力の方向に立った。 マイクが彼に渡ると、ふてぶてしくも秋風がすがすがしいとした。私は秋風が 寒いだけだった。彼は生きていれば何かをかけなければならない時があるといっ た。彼が何かをかけた時に悟った命の大切さ、それはショベルカーの一番高い 場所と、地面の間の距離を満たしたひやっとすることで近付いてきた。私は大 切な重力の前で何も言えなかった。彼は詩人になって、自分が言った言葉を守 りたかった。私はそんな時、言葉を慎む。

キリュン電子の女性労働者と初めて会ったのは、2005年9月頃だった。7月にキ リュン電子分会を結成した労働者への使用者側の弾圧は激しく、8月の末に現場 座り込みが始まった。9月のある日、他の人権活動家と共に彼女たちを訪ねて証 言大会を開いた。キリュン電子女性労働者不法派遣の実態と人権侵害事例告発 のための証言大会。その日の証言大会には、キリュン電子の女性労働者だけで なく、九老同盟ストライキの時、ヒョソン物産労組委員長だったキム・ヨンミ 氏が出てきて、20年たっても変わらない九老工業団地の現実を語った。証言大 会が終わり、建物の外に皆が出てきた。キム・ヨンミ氏はキリュン電子の女性 労働者とコーヒーを一杯飲もうとした。建物1階にあった喫茶店に行こうと言っ たが、彼女たちは結局辞退した。一杯3千ウォンのコーヒーではなく、自販機の コーヒーで充分だというのだった。喫茶店のコーヒーの贅沢さ、彼女たちは、 キム・ヨンミ氏の気持が贅沢ではないことを誰よりもよく知っているから、自 販機のコーヒーでもその気持を受け取れたのだ。当時の彼女たちの賃金は、最 低賃金より10ウォン高いだけだった。

当時、九老工業団地にはキリュン電子だけでなく、不法派遣の疑いを受けてい る事業場がとても多かった。彼女たちは、不法派遣労働者を正規職化して解雇 者を原職に復帰させろと要求した。労働組合を認め、誠実に交渉しろと要求し た。キリュン電子の女性労働者は、6年間労働者に保障されるべき『核心』的な 権利のために戦ってきた。労働組合の脱退を強要してCCTVを設置し、労働者を 監視し、熱心に活動する人を解雇して、労働組合とは誠意ある交渉を一度もし ないキリュン電子と戦った。ほとんどの労働者を派遣職で採用し、雇用期間も 不利な賃金を強要して、結局女性労働者は劣悪な労働条件から抜け出せないよ うにしたキリュン電子と戦った。その長い6年という時間、キリュン電子の女性 労働者が命がけで戦ってきたことを私たちみんなが知っている。彼女たちが死 を覚悟するのに「決死闘争」という言葉は不必要だった。彼女たちは、人間と して生きたかったから命をかけた。

キリュン電子は不法派遣と判定されても、罰金500万ウォンで人間の権利を買っ てしまった。政府は第三者のように傍観するだけだった。この前、政府が野心 満々で出した『国家雇用戦略2020』は、むしろ非正規職をさらに拡散させると いう宣言だった。キリュン電子は、問題の解決どころか社屋の敷地を売ってよ そに工場を移転した。労働者の根拠地の上に不動産売買契約書一枚をこっそり 落とし、その土地で作った労働と人間への夢を消した。その場にショベルカー が押しかけて来て、主人が変わった土地を前の主人であるチェ・ドンヨル社長 が雇用した用役が守っている。10月13日から屋上断食、15日からはショベルカー に上り、その場を守るキリュン電子の女性労働者たちは、今、世の中と戦って いる。世の中は、彼女たちにまた命をかけろと言っている。

30数年前、東一紡績の女性労働者は「人権を強奪された労働者の呼び掛け」で こう話した。「ここで私たちが屈したら、私たちと共に苦しめられる多くの労 働者が人間らしい権利を放棄することになるだろうということをよく知ってい ます」。20数年前、九老工業団地の女性労働者がそうだったし、今、キリュン 電子の女性労働者がそうだ。それで、多くの人たちがキリュン分会の闘争を見 て有難いとも言う。絶望を簡単に認めない、それで相変らず私たちには希望が あるということを見せてくれるからだ。しかし誰かが命をかけて、希望を確認 する、この残酷な時間はもう終わらせなければならない。何かかけてしまって から大切なことを知るには、彼女たちはあまりにも多くのものをかけ、あまり にも大切だ。「決死闘争」を終わらせる決死が必要だ。『いろんな人が共通の 目的を達成するために、社会的な結合関係を結ぶ』のが結社(訳注:韓国語では 「決死」と「結社」は同音)。彼女たちの夢が私たちすべての夢だということは あまりにも明らかで、それがただでは与えられないという点も、あまりにも明 らかだ。ひとりひとりが夢に向かう結社に参加すればするほど、人間の時間は 前倒しになるだろう。

  • キリュン分会ホームページ:http://cafe.naver.com/kiryung
  • 後援口座:362702-04-067271(国民銀行/キム・ソヨン)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-10-25 19:23:47 / Last modified on 2010-10-25 19:23:52 Copyright: Default

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