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帰ってきたお父さん、元に戻せない傷

[人権オルム]もう二度と書きたくない日記

単なる/ 2009年08月19日15時09分

「オイ、アカ!」
「何? 私がなぜアカなのか!」
「君のお父さんがアカだから君はアカだ!」

8月5日だった。小学校の時から今まで親しくつきあってきた同じクラスのウン ジュが、教室に入るとすぐ私に大声を出した。自分のお父さんは解雇もされず、 はやく工場が稼働しなければ働けないのに、うちの父さんが工場を占拠してい るので、自分の家までおかしくなったと大声を出した。

お父さんが帰ってきた。77日ぶりに家に戻った。明らかにうちの父さんなのだ が、とてもよそよそしく感じられた。やつれた顔、増えたシワ...それよりもっ と目にありありと浮かぶのは、お父さんのぼんやりした表情。私は「お父さん、 大丈夫?」と一言聞くこともできず部屋に入った。

一緒に暮したい人の選択

双竜自動車。お父さんが通っていた会社の名前だ。双竜車の大株主だった中国 の上海車が「食い逃げ」をして、構造調整と人員削減が始まった。誰が生き残 り、誰が死ぬのか。お父さんは生き残っても苦しく、死んでも苦しいとし、連 日会社の同僚と酒を飲んだ。会社は2000人を解雇する決定し、まもなくお父さ んは解雇通知書を渡された。何日か後、「黙って会社から追い出されることは できない、すぐ帰る」という言葉を残してお父さんは小さな荷物とともに家を 出た。『一緒に生きよう』。お父さんと同僚の人々が下した決定だった。工場 での占拠座り込みが始まった。

お父さん、そして私たち家族に双竜という名前は他人の名前ではなかった。会 社でも、いつも私たちを双竜家族と呼んだ。互いを家族と思うことで工場はう まく稼働し、会社も良くなると。お父さんは一日の半分以上を工場で過ごした。 自動車を作り、自動車を共に作る人々と冗談を言い、酒を飲み... それだけに 会社から切られるということは、お父さんの生が粉々になることを意味した。 いや、そんな形の解雇は背信であり殺人だった。働く人の汗が『必要な時は家 族』という言葉で装い、不必要だと思えば『壊れた機械』を捨てるように捨て た形だ。

会社を生かさなければならないから、皆が犠牲になってくれ? これがすべて会 社のためだから? いったい会社は何? あの灰色の工場の建物のことか? 会社の 社長のことか? でなければ会社を経営する人の財布の意味か? これらすべて がそうだとしても、それでは会社をつぶした人を追い出さなければ工場も生か せ、財布もよくなるのではないか? なぜ頑張って働いた人にその責任を問い、 一方的な犠牲を要求するか。なぜ皆の職場を守り、皆の人生を守ろうとする人 を一日で工場に侵入した暴徒扱いして自分の利益だけを守ろうとする人と言い 殺そうとするのか?

工場は財産ではない

双竜車の社長や債権団の人にとって工場は単なる財産でしかないのかもしれな い。しかし工場を守ろうとするお父さんをはじめ、労働者にとって工場は、自 分の汗が染み込み、その汗で紡いだ生と労働が満ちた所だ。工場の隅々にどん な機械があり、その機械をまわすには何をどうするのか、昼食後に休む時はど こに行けば良いのか、塗装工場のヨンチョルのおじさんが最近気分が良い理由 が何か... 誰が一番工場、そしてその工場で働く人にを知っているのか、 試合でもしてみたら良い。

会社の主人、工場の主人は金持ちの社長と投資家だ? とんでもない。働く人が 仕事を止めた工場は、ただの鉄骨の山でしかない。これまで工場を生かしてき たのはお父さんとお父さんの同僚たちだった。座り込み中も自動車の塗料が固 まらないように扇風機で熱を下げ、工場の屋根に火がつけば消防署員を助けて 火を消したのも、この工場は私たちの工場で、いつか戻る職場だったからだ。

この鉄骨の山の財産を守るために会社側は工場の中に水と食べ物、医療品を搬 入することを妨害して防いだ。電気を切り、水道を切り... 用役チンピラを動 員し、工場でストライキをしていた人と、彼らを守ろうとする多くの人権団体 活動家を殴り倒した。戦争中も生命の維持に必要な最低限の補給品は切れない というのに、彼らはとても残忍で、ニュースが見られないようTVを消してしまっ た。会社がこんなことをしている時、正義を守る警察官は何をしていたのか? 盾とこん棒で工場の人を殴り、ハンマーで頭を殴り、スチロールも溶かす催涙 液をヘリコプターから撒き、テロに使うようなテイザー・ガンを撃って。

政府は双竜車問題に直接介入しない、会社と労働者たちが円満に解決してほし いと言ってきたが、工場で起きていることを見れば政府は傍観しているふりを しながら、事実上会社側を助けているとしか思えない。力がある人と力がない 人が戦う時、戦いを見ている人がじっとしていれば、無力な人が傷ついて死ぬ しかない。それは傍観ではなく、死の見物だ。その上政府は傍観ではなく会社 の財産を保護するという理由で無力な人々を取り除く先頭に立っている。

CEO大統領の真っ赤な嘘

大統領が巨大企業の社長出身だからか? 企業と政府は一つで、企業が生きてこ そ経済が生き、経済が生きてこそ国も生きるという論理が、新聞と放送からあ ふれ出る。彼らが言う企業を生かす第1の解決法は、働く人を切ったり、いつで も切れる位置に置くことだ。

なぜ大統領は庶民の生活をもっと良くなするために努力すると約束しながら、 彼らの雇用を揺さぶり人生を不安にさせるのか? なぜ政府はますます疲弊する 庶民と企業から追い出される人が同じ人だということを知らないのか? 違う。 ここまでくれば、彼らが知らないとはいえない。単なる嘘だ。この国を生かす ということは、順調な企業と金持ちをさらに豊かにさせるという言葉と違わな いことを今悟った。

劇的に労使間の交渉が妥結し、お父さんは戻った。『無給休職48:整理解雇52』。 始めは解雇者、非解雇者に分けて『生きている者』と『死んだ者』を分けると いい、今は座り込みに参加した人の一部を会社に残すことで、皆が同じように 暮らそうと最後まで戦ったお父さんと同僚を再び組み分けしている。共に戦っ た人々が互いを軽く叩く余裕もなしで、誰が残り誰が出ていくかでまた戦わな ければならない。

終わらない悪夢

新聞にはまた働けることになったおじさんたちの笑みを浮かべた顔、座り込み 者が戻っても和解に努力しようという非解雇者おじさんたちのインタビューが 載っている。和解とは何か。工場を止めて会社に大きな損失を負わせたお父さ んが許しを乞わなければならないのか。寛大に受け入れた会社と非解雇者のお じさんたちに頭を下げて感謝しなければならないのか。会社に帰る人は「52」 でなく「48」に入ったことに安心しなければならないというのか。では、帰れ ない解雇者は永遠に利己的な暴徒のままなのか。頭の中が複雑だ。そしてこう したことがお父さんのことだけでは終わりそうもない。

私たちの町、そして工場周辺が静かになっている。カメラが消えたところに残っ た多くの傷。今誰にも注目されないこの奥まったところでお父さんと家族、そ してお父さんと一緒に働いた多くの人が傷をなでて一日一日を送るようになる だろう。ヘリコプターのような音を聞いただけで全身をぶるぶる震わせて、毎 晩悪夢を見て鋭い悲鳴をあげて目覚める生活を当分お父さんは繰り返すだろう。 お父さんは帰ってきたが、その傷は元に戻せない。

もう二度とこんな日記を書きたくない。

  • この文は双竜車労働者の77日間の戦いを仮想日記で構成したものです。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2009-08-30 00:52:15 / Last modified on 2009-08-30 00:52:16 Copyright: Default

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