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抜き打ち処理された非正規職法案の主な内容

非正規職労働者、 国会議長との面談を要求して報道資料を配布

非正規職労働者

3月2日午前、国会議長との面談を要求した非正規労働者たちは『ヨルリンウリ 党とハンナラ党が野合して抜き打ち処理した主な内容』を説明する報道資料を 配布した。報道資料は、△期間制労働に対する『期間第一方式』の採択△派遣 許容範囲拡大の根拠用意△不法派遣時綿棒制裁△差別是正などの内容を含んで いる。- 編集者 注

1. 期間制労働に対する『期間第一方式』の採択

(1)抜き打ち処理された法案の内容

抜き打ち処理された法案の内容は、期間制使用に何の制限もおかず2年を超過 して使う場合には、期間の決めがない雇用と見なすということだ。(最初に政 府が提出した案は期間が3年で、3年以後は『解雇保護措置』を取るということ だった。それが3年が2年に「解雇保護措置」が「無期契約甘受」に変更された のだ。)ただしいくつかの特別な理由(1.事業の完了または特定の業務の完成 に必要な期間を定めた場合、2.休職・派遣などで欠員が発生し、当該勤労者 が復帰するまでその業務の代わりをする必要がある場合、3.勤労者が学業、 職業訓練などの履修にともない、その履修に必要な期間を定めた場合、4.高 齢者雇用促進法第2条第1号の規定による高齢者勤労契約を締結する場合、4. 専門的知識・技術の活用が必要な場合と政府の福祉政策・失業対策などにより 雇用を提供する場合で大統領令が定める場合、6.その他に第1号ないし第5号 に準じる合理的な理由がある場合で大統領令が決める場合)があれば、そのよ うな『保護措置』を適用せず無制限に期間制で使うことを許す。2年を超えた 時点で雇用を持続するかどうかは全面的に使用者が決める。

(2)法案の問題点

(a)期間制労働の周期的交替

政府案が一定期間の間には期間制使用に何の制限をおかないのは深刻な問題だ。 これは私たちの社会で慣行的に通用してきた『常雇い原則』および私たちの労 働法制の解雇制限措置を完全に無力化させるのだ。政府は一定期間経過後で事 実上正規職で転換される余地があるという点を期間制制限装置で説明している が正規職での転換有無|可否を使用者が全面的に決める限りそれは期間制制限 装置でない期間制交替装置に過ぎないのだ。使用者が期間制労働者に対しては 期間制労働者の雇用不安を武器で優越的地位を確保できて、差別是正手続きが 作動する場合にも多少ながら安い賃金を至急できて、企業の事情により日常的 構造調整を断行することができるのに、なぜ期間制労働者を正規職に転換させ ようとするだろうか?これは合理的使用者を前提にする限り尋ねるがやめると 思った質問だ。これは経済人総連が昨年末会員企業を対象に実施したアンケー ト調査調査で、期間到来後期間制労働者を正規職に転換すると答えた企業の比 率が11%に過ぎなくて約90%に近い企業が正規職に転換しないという意思を表明 したことを通して、明確に知ることが出来る。

政府も2年単位の期間設定に対しては、そのような状況が発生するかもしれな いと認めている。政府が法案審査小委に配布した資料には、2年単位の期間設 定は、「(3年に比べて)交替使用の可能性が非常に高まり、非正規職勤労者の 雇用不安を促進」し、その上「非正規職の多数が集団化して政府に雇用対策の 樹立を要求し、社会問題化される」という憂慮まで表明されている。政府は、 期間制限を実施する場合、2年よりは3年のほうが良いと強調するために上のよ うな主張をした。だが、最終的に期間が2年に確定した今、どんな立場を見せ るのか見守らなければならない。

(b)現行規定との比較

一方、政府案は気に入らないが、それでも現行規定よりは良いのではないかと いう反論を提起する人がいるが、これは不適切な指摘だ。まず、上の案が現行 の規定よりよいかどうかを調べれば、そのように断定することは難しいという ことが分かる。期間制に関する現行の勤労基準法規定を文言的に解釈すると、 勤労契約期間は1年を越えることができず、1年を超過すれば『期間の決めがな いものと擬制』するということだ。このような解釈に土台を置けば、上の案が 現行規定よりましだとはいえない。ただし、大法院が1996年までは上のように 解釈していたが、それ以後は別の解釈をしており、上のような指摘が出る根拠 が全くないわけではない。すなわち、この解釈の変更に土台をおけば、期間制 労働者を何年間使っても関係ないということがなるから、上の案が現行規定よ り多少良い側面もあるという余地がある。

しかし現行規定は期間制が今のように820万人(金ユソン所長推測)に達して、 その規制と保護が至急な状況を念頭に置いて作られたものではなく、期間設定 に対する一般的な規定に過ぎないため、期間制労働の規制規定とはいえない。 すなわち、現行勤労基本法では期間制に対する規制規定はなく、今初めて期間 制の規制規定が作られると考えなければならない。そのため、今、期間制の規 定を用意し、現行規定を中心に置いてそれより少し良い案を作るという調子で 接近することは適切ではないと言えるだろう。その代わりに、期間制の乱用を 規制する適切な方案は何かという観点から接近すべきだろう。そうすれば、政 府案は期間制の乱用を規制できる案ではなく、むしろ期間制を量産して期間制 を『公式的な雇用形態』として追認する案といえるため、適切な案ではないのだ。

2.派遣許容範囲拡大の根拠を用意

(1)抜き打ち処理された法案の内容

抜き打ち処理された法案の内容は、現在は客観的な要素だけで構成されている 勤労者派遣対象業務の要件を主観を加味するものに変更した。すなわち、現在 は勤労者派遣対象業務とされるためには、派遣法に規定されている客観的要素、 すなわち△直接生産工程業務ではないこと、△専門知識・技術または経験など を必要とする業務であることの要件を充足しなければならない。だが、抜き打 ち処理された法案によると、そのような要件を備えなくても△労働部が業務の 性質などを考慮して適していると判断した、という主観的要素さえ備えれば、 派遣対象業務にできるようになったのだ。

政府が派遣対象業務について当初提示した内容は、ネガティブ方式の全面許容 だった。これが労働界の抵抗で挫折し、労働部は2005年12月の法案審査小委員 会での審査時に、労働部が恣意的に派遣対象業務を定められるようにする内容 の修正案を提出した。ヨルリンウリ党とハンナラ党は政府のこうした修正案が あまりにも露骨と判断したのか、条文をまた修正して最終通過した。しかし、 客観的要素を主観的要素に転換させるという当初の趣旨はそのまま生きている。

(2)法案の問題点

派遣法第5条によれば派遣対象業務は施行令で定めるとなっている。すなわち、 労働部が最終的に派遣対象業務を定める。そのため、労働部が恣意的に派遣対 象業務を定めることを防ぐために、法律によってその範囲が限定されなければ ならない。しかるに現行法には派遣対象業務に定める要件が客観的な形で規定 されている。現在の施行令に規定されている26の派遣対象業務が派遣法上の要 件に符合するかどうかが絶えず論議になっているが、それは当初、日本の法律 を書き写して作った26の業務が誤って選ばれた可能性を意味するものであり、 派遣法上の要件が誤っていることを意味しない。このように、現行の派遣法第 5条第1項は、派遣対象業務が無制限に増えることを防ぐ安全弁役をしてきた。

これをよく知る労働部は、派遣対象業務を増やすためにはこの規定を改正しな ければならないと判断し、その内容がそのまま修正案に提出された。その内容 は、上で調べたように客観的要素だけで構成されている派遣許容要件に主観的 要素を加味するものだ。これは結局、労働部に派遣対象業務を決める全権を与 えて要求することである。実際に新任のイサンス労働部長官は、労働部業務報 告時に労働部が上のような修正案を提出した理由は、派遣制の範囲を柔軟化し て大幅に拡大するためだと率直に認めた。

今回通過した内容は、政府が提出した修正案の露骨性を多少隠してはいるが、 (『人材需給状況』に関する規定は削除された)それでも主観的要素の加味とい う基本趣旨はそのまま生きており(それ自体では範囲が限定されない『業務の 性質』という規定がそのまま入っている)、国民がすぐに政府の意図がわから ないように偽装しているに過ぎない。近い将来、労働部は手綱が解けた小馬や ブレーキのないベンツのように、派遣対象業務を拡大していくだろう。結局、 労働部が本来構想したネガティブ方式は、迂回的ながらそのまま実現されるだ ろう。その終局的な帰着点は、派遣労働者の雇用不安と中間搾取の蔓延および 労働基本権の無力化であろう。

3.不法派遣時の綿棒制裁

(1)抜き打ち処理された法案の内容

抜き打ち処理された法案の内容は、合法派遣も不法派遣も区別せず、2年の期 間が超過した場合にだけ『雇用義務』とその義務を履行しなかった時に過怠金 (3000万ウォン)のに賦課義務を付与するということだ。ただし、派遣が絶対的 に禁止される業務、例えば△建設工事現場業務、△船員の業務、△勤労者供給 事業許可を受けた荷役業務などに対しては2年の期間を要せず、発覚すれば直 ちに雇用義務と過怠金賦課義務を付与するということだ。(この内容は労働部 が最初に提出した内容のうち、期間が3年から2年に変わった他は変わっていな い。韓国労総とヨルリンウリ党は、合法派遣の場合には2年の期間が経過した 後に雇用擬制を適用し、不法派遣の場合は発覚したら直ちに雇用義務を賦課し ようという主張をしたが、最終通過した内容にはそのような内容さえ反映され なかった。)

(2)法案の問題点

この問題に対し、現行法は2年の期間が経過すれば『雇用擬制』が適用される と規定している。この規定が不法派遣にも適用されるのかどうかは明確ではな いが、労働部は担当責任解釈で、不法派遣の場合にもこの規定が適用されると 見ている。それから考えると、上の法案の内容は現行法からみても明確に後退 している。

抜き打ち処理された法案では、労働部の不法派遣判定は派遣労働者の解雇につ ながる公算が非常に大きい。不法派遣を使った使用者が、派遣労働者を直接雇 用する可能性は殆どないからだ。派遣労働者を直接雇用しないことに対する制 裁も、事業場の事件単位で賦課される総額『3000万ウォン』の過怠金賦課だけ なのに、どこの使用者がその措置を恐れて派遣労働者を直接雇用するだろうか? このような事情を考えると、いったい政府は不法派遣を摘発する意志があるの かという疑いを持たざるをえない。

不法派遣を根絶するためには、現行法に規定され、民主労働党が主張している ように、雇用擬制措置を取らなければならない。雇用擬制は不法派遣した時点 から使用事業主の従業員になったものと見なすものだ。そのため、その派遣労 働者は不法派遣された時点から請求時点までの賃金差額の支給を請求でき、使 用事業主が雇用を拒否すれば不当解雇の陳情をしたり救済申請を提起すること ができる(最近ソウルインターコンチネンタル ホテルの不法ストライキ事件に 対し、ソウル地方労働委員会とソウル江南労働事務所は事業主が不当解雇を行っ たと見た)。一言で、労働者個人に具体的な権利が付与され、労働者はそれを 土台として使用事業主に対抗できる。これは、事業主にとっても非常に大きな 負担なので、不法派遣を行う意図を基本的に遮断する効果がある。

一方、事業主が直接雇用を履行する場合でも、直接雇用の形態を規定しないこ とも問題だ。抜き打ち法案には直接雇用する場合、その形態に対する規定が全 くないため、事業主が直接雇用をすると宣言すれば『期間制労働者』として直 接雇用することも許される。すなわち3か月の直接雇用も可能になるのだ。実 際、そうしたけちな手段を使う使用者は現れるだろう。その場合、労働部は 過怠金を賦課するだろうか? あれこれ考えてみると、法の穴はとても大きいの に労働部の意志は弱く、労働者の境遇はわびしいことこの上ない。

4.差別是正

(1)法案の内容

法案の内容は、非正規職勤労者であることを理由に賃金などの勤労条件で差別 待遇することを禁止し、差別待遇の概念は合理的な理由なく正規職に比べて不 利な勤労条件を適用することを意味するものと規定した。賃金など勤労条件で 差別された勤労者は3ケ月以内に労働委員会に是正を申請することができ、労 働委員会の差別是正命令が確定しても正当な理由なく履行しない事業主は、最 高1億ウォンの過怠金が賦課される。しかし差別行為を行ったこと自体に対す る制裁は何もない。

(2)法案の問題点

差別是正に関する法案の要旨は「非正規職労働者を正規職と同一に待遇する」 ことでなく「不合理な差別を禁止」するということだ。これは結局『合理的な 差別』は容認するということで、その水準と基準が問題になる。政府はそれに 対する基準は何も提示しないまま、今後労働委員会で決定されるという立場を 繰り返すだけだ。そのため、労働委員会の差別意志が弱ければ、この条項はた だの飾りに過ぎなくなる。

その上、差別を認められるためには労働者が直接労働委員会に是正を申請しな ければならない。その過程がかなり難しいことは火を見るより明らかだ。とこ ろが非正規職労働者の不安な雇用状況に照らしてみると、事業場に在職しなが ら差別是正申請をする非正規職労働者がどれほどいるのかは多いに疑問だ。こ れに対して労働部は退職後も申請できるのではないかと主張するが、その場合 でも同種の業界に就職をすることに困難を味わうため、困難は相変わらずだろ う。結局、労働部が強力な行政措置を取らない以上、差別是正手続きなどは絵 に描いた餅でしかない。

差別が確定しても、事業主は何の不利益にあわないのも問題だ。事業主が1億 ウォンの過怠金を賦課されるのは、確定した是正命令を履行しなかった時だ。 差別したことについては、いかなる制裁も受けない。そのため、事業主の立場 では、とにかく差別する方がはるかに有利だ。後で差別とされれば、本来履行 すべきことを履行すればよいので、何も損はない。労働者が差別是正手続きを 踏むことが難しい点と、労働委員会と裁判所が差別と認めない可能性が存在す る点を考えれば、経済的にはそれが合理的な選択である。

2006年03月02日13時07分

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンス:営利利用不可・改変許容仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2006-03-03 14:36:22 / Last modified on 2006-03-03 14:36:24 Copyright: Default

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