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新保守派により強化される新自由主義政策

[李明博時代展望](1) -経済大統領の経済政策展望

キム・ソング(編集委員長)/ 2007年12月21日7時02分

今回の大統領選挙を決定した問題は、概ね経済問題と盧政権審判2種類で圧縮さ れる。BBKをはじめ李明博当選者の各種の疑惑は政治的攻防が騒がしかっただけ で、大勢を決める要因にはならなかった。金大中-盧武鉉政権の10年が持たらし たものは、韓国社会の新自由主義的再編だった。経済成長の鈍化、雇用の危機、 財閥支配の強化、莫大な投機資本の運動と不動産価格の暴騰、中産層の没落と 非正規職の急増、二極化の深化、さらに激化した入試競争と塾などにかかる費 用の増大など、新自由主義再編は大衆にとって災害だった。これによる大衆の 怒りと審判が、経済回復と雇用創出を最優先の公約に打ち出した保守党候補の 圧勝を持たらした。40%に迫る歴代最高の棄権票と政治的冷笑は、こうした状況 のもうひとつの表現だ。

大衆の選択は実に皮肉だ。彼らは自分たちの生存条件を残酷に破壊した新自由 主義の代弁者を審判し、回復と補償を期待している。だが、彼らの選択はもう ひとつの新自由主義、今回は新保守派の新自由主義だからだ。自分たちの没落 の根源である新自由主義に回復の希望を期待しているのだから、これは明らか にアイロニーであり、誤った選択に違いない。こうした矛盾した選択が可能だっ たのも、新自由主義が持たらしたイデオロギー効果のおかげだ。現実社会主義 の失敗を背景として市場主義と商業主義を至上の政策だと宣伝する新自由主義 10年の支配下で、大衆の意識はさらに資本主義化され、資本主義優越論と生存 競争は大衆を断片化し、政治地形をきわめて保守化した。

韓国の進歩陣営は、自由主義の政派から保守主義の政派まで、新自由主義の強 化という権力変化の性格を正しく把握できなかった。その白眉は盧武鉉政権の 弾劾情勢で、盧政権への批判的支持として現れた。盧政権の弾劾とハンナラ党 政権の登場が、共和国の廃止とファシズムに旋回する反動という宣伝の下に、 進歩陣営は新自由主義政権の維持に協力したのだ。民主労総と民主労働党、旧 民衆連帯、そしていわゆるマルクス主義政治学者3人までがこの歴史的な誤りに 責任がある。盧政権の新自由主義を審判する大統領選挙において、民主労働党 も審判を受ける恥辱と無力感は、批判的支持への苛酷な代価というほかはない。

弾劾情勢では、ハンナラ党=ファシズム論が批判的支持の悪賢い術策だった。だ が今はハンナラ党と李明博政権の登場をファシズムと言うのは間抜けな主張で しかない。ファシズムと新自由主義の結合を原理的に否定することはできない が、弾劾局面の時も、現在の新政権発足の時点にも、権力変化の核心はファシ ズムへの反動ではなく、新自由主義の強化への反動でしかない。新政府は疑う 余地なく、盧武鉉政権の新自由主義を確実に継承するだけでなく、さらに強化 するものと見られる。

李明博当選者の経済公約は、いわゆる『747』ビジョンに圧縮される成長主義政 策だ。年平均経済成長率7%の達成、任期中300万の雇用創出、10年以内に1人当 りの国民所得4万ドルと、7大経済大国への進入というビジョンは、強力な成長 主義政策を予告する。しかしこの政策を新しい成長主義や、新開発主義と規定 するのは難しい。開発時代、現代建設マンとしての李明博当選者のイメージと も自然に結びつく新しい成長主義や新開発主義というレッテルは、政策の内容 を見れば開発時代の成長主義とは大きな違いがある。

なぜなら李明博政権はこうした高度成長を朴正煕政権の開発時代のように政府 の拡大、強化と、政府主導の介入主義政策により、達成しようとしていないか らだ。新政権はむしろ政府の介入と規制を大幅に緩和して、小さな政府を指向 し、市場経済と競争の原理を促進し、対外開放と世界化を強く推進することで 高度成長を達成すると言っている。いわゆる7大経済政策にはこうした原則の上 で、規制の最小化、税率の最小化、金融の国際化、労使関係の法的支配により、 企業活動のための最高の条件を造成するという。これは新自由主義政策の継承 であり、一層の強化に違いない。

▲李明博当選者の韓半島(朝鮮半島)大運河

大きな問題になったいわゆる韓半島(朝鮮半島)大運河の公約も、開発主義政策 ではなく新自由主義政策の一環として推進される計画だ。この公約が実際に推 進されるかどうかは今後を見るべきだが、この大規模土木事業も政府の財政で はなく、民間の投資事業で推進するように計画されている。総16兆ウォンに達 する京釜運河の建設費用のうち、8兆ウォンは骨材販売収益金で充当し、あとの 8兆ウォンは民間資本を引き込む計画だ。政府の財政支出は全くないということ だ。このような点で、新政権の経済政策に新自由主義と新開発主義の結合とい うレッテルを貼るのは不正確な規定だ。

新政権は、盧政権の新自由主義政策を継承しつつ、これを強力に推進するもの と見られ、同じ新自由主義だとしてもさまざまな点での変化は不可避だろう。 法人税率の減少と企業活動に関する各種の規制緩和、問題の出資総額限度制度 の廃止、金融規制の大幅な緩和、金産分離原則の廃止、労使関係への法律的支 配の確立、公共部門の民営化と商業的原理の強化、不動産立法の再改正、大学 入試制度の自由化など、企業と財閥、そして富裕階層には有利で、大衆の生存 はさらに圧迫する、法と制度の変化が予告されている。もちろん競争脱落者と 疎外階層への国家の保護と配慮は語られるが、これは盧政権でも李明博政権で も副次的な修辞でしかない。

企業規制を大幅に緩めて利益をあげる条件を大幅に改善し、民間投資を活性化 することで高度成長と雇用創出を達成するという李明博政権の経済政策に、果 たして未来があるのだろうか? 企業の利潤条件を高めることで投資を活性化し、 経済が成長するということが労働者階級の悲劇であり、資本主義経済の矛盾だ が、新自由主義時代以後は世界的に、企業の利潤条件が改善されても拡大投資 と高度成長が期待できないという新しい現象が支配的だ。いわゆる『雇用なき 成長』は、その代表的な現象だ。盧政権の新自由主義政策で財閥の利潤条件は 大幅に改善されたが、しかし投資は制限され、成長は鈍化した。10大財閥の現 金保有額だけでも140兆ウォン(2005年)を越え、もはや韓国でも利潤増大=投資 増大という公式は成立しない。

このような状況を企業規制と投資環境の悪化のためだと言って新自由主義政策 の加速で解決しようとするのは、原因と結果の混同であり、繁栄を持たらすど ころか危機と対立を深めるだけだ。換言すれば、これまでの盧政権でわれわれ はすでに新しい政権の未来を見たのだ。しかも世界経済も目下、2001-2003年に 始まった景気循環の最後の局面が展開しており、新政権の任期内に新しい恐慌 は不可避だ。さらに韓米FTAの承認など、韓国経済の対内外的環境はさらに不安 定になると見られ、新政権の経済公約の見通しは暗くならざるを得ない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2007-12-27 15:46:12 / Last modified on 2007-12-27 15:46:17 Copyright: Default

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