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幽霊になった性暴力被害者、「私を見つけないで」

[記者の目]統合進歩党と全教組が消した彼女の声

キム・ヨンウク記者 2012.03.18 17:25

春雨が降る金曜の晩、突然湿度が上がったからか、からだがぞくぞくと震え、 湿っぽい感じに捕われるような日だった。3月16日『国会議員・李正姫(イ・ ジョンヒ)』というアクリルの表札がつけられた10数階のビルの前に黄色い 雨具を着た20人ほどの人が集まった。質素だった。小さな横断幕2枚。そして プラカード約10枚。

彼らは統合進歩党代表の李正姫代表に、比例代表順位4番になったチョン・ジヌ 候補の公認撤回を要求していた。キャンドル集会という知らせは出されていたが、 雨が降っていたので最初は火をつけられなかった。

ここから少し離れた所に、自分を隠して集会を見ていた一人の女性がいた。 彼女はざあざあと降る雨脚に身を隠しているようだった。彼女はキム某性暴力 事件の被害者だった。人々の記憶に強く残っていても、自分の存在を表わせない 境遇になってもう3年になる。彼女は生きながら幽霊になった。

▲16日、性暴力被害者を支持する会と雑女行動が主催した李正姫統合進歩党代表選挙事務室前キャンドル集会

自分に関するキャンドル集会なのに、誰かに見つかるかと不安だった。自分に 連帯するために集まった人々とプラカードを見て、いきなり涙が流れた。すぐ 飛び出して「私が被害者です。ありがとう。ありがとう。頑張って、倒れるこ となく、皆さんが送ってくれたとても大きな気持ちのおかげで勇気を失わずに 最後までやります」と言いたかった。

だが彼女はキャンドル集会が終るまで、できるだけ見られないようにしていた。 彼女はそんな自分が嫌だった。集会の間、ずっと自分に問いかけた。「何のため にまだそうして出てこられないのか」。その問いと共に、以前、正しい教育の ために闘争しながら、さっそうと多くの人の前に立っていた自分の姿が重なっては 過ぎ去った。

父兄総会で「私は全教組組合員です」と話してきたのに...

2011年5月28日、全教組首都圏教師大会が開かれたソウル駅広場に行く時もそう だった。彼女は支持する会が宣伝紙を配り、性暴力事件白書発刊委員の募集と 募金をする場に参加するためにバスに乗った。

バスに乗って行く間、ずっと震えが止まらなかった。性暴力事件を知っている 人に会うかも知れないという恐れと、それでも行かなければならないという 気持ちが入り混じった。バスが停留場で止まるたびに、降りようかどうしようか と悩んだ。そんな混乱の中で、彼女を大会場まで連れてきたのは、自分を支持 する人々への感謝だった。

だが大会場に入ると、彼女は人々の足しか見られなかった。目が会うかと思い、 首を上げられなかった。彼女の目は下へと向かい続けた。支持する会のブース に行く間、あるいは誰が自分を見分けるのではないかという恐れはさらに 大きくなった。

彼女の目には、教師大会の参加者の足ばかりが入ってきた。そのうち支持する 会に所属する先生を探すために首を上げた。彼女の目に知っている組合員が 一人、二人と入ってきた。また地面を見た。彼女は呪文を唱えた。 「私を見分けないで...知っている様子をしないで...」

彼女はその瞬間をこのように回想した。「短い時間でしたが、その時間は私に とって、遥かな闇の中、深い穴に落ちるようでした」。

支持する会のブースでも、まだ彼女は首を上げられなかった。よく出てきたと 歓迎してくれる支持する会の教師の後で、終始そわそわしていた。彼女は結局、 テーブルの後の死角にうずくまって座り、体を隠していた。彼女は毎年、支会 の後輩と共に教師大会にきたが、もう彼女は全教組にとって存在しない人になっ ていた。その集会が終わる頃、彼女が闘争現場で十数年間歌ってきた歌、 『正しい教育の叫び声で』が聞こえてきた。「屈従の人生を振り切って、 反教育の壁を壊し、沈黙の教壇を乗り越え、正しい教育を...」 彼女はやっとのことで涙をこらえた。

彼女は学年のはじめに父兄総会がある日には「私は全教組組合員です」と 話してきた。

全教組も統合進歩党も幽霊扱い

彼女は3年前、教育監選挙に関して、検察の調査を受ける渦中で、性暴力事件を 体験した。統合進歩党の前身の民主労働党を後援したという理由でも、今裁判 を受けている。二回の苦難と性暴力のどちらも、全教組に献身する過程で発生 したが、全教組は彼女を徹底的に無視した。

2010年の性暴力事件評価のための全教組のある会議で、当時、被害者の存在を 知っていた全教組の核心執行部の一人は、討論会に参加した被害者を堂々と見 ても組織的な隠蔽はなかったと話した。彼女が他人に被害者だと言えないこと を知り、彼女を完全に幽霊扱いしたのだ。

幽霊扱いをされて、幽霊のように暮らしてきた彼女は、自分を支持する支持す る会の会員のおかげで絶望の毎日を断ち切ることができた。支持する会はキム 某性暴力事件の2次加害者への再審の結果が単なる警告になったことで、公式に 結成された。その時から被害者に支持する会は、唯一の希望の糸だった。被害者 は少しずつ性暴力問題討論会など、自分に関する場に出るようになった。正しい 評価がなされれば、自分が幽霊から抜け出せるからだった。

彼女が本格的に自分の問題を解くために、さまざまな現場に出てくるようになって 1年半程度になった。最近ではもう自分と全く関係ないと思っていた統合進歩党の 掲示板に自分を表わすこともした。MBC 100分討論の柳時敏代表の発言に怒り、 統合進歩党自由掲示板に他の人のIDを借りて文を残したのだ。柳時敏代表の発言 には、被害者である自分の声はなかったという血の滲むような文だった。

だがこの文には被害者が書いた文ではないというコメントがつけられた。それでも 多くのネチズンは彼女の言葉を支持してくれた。被害者の声がそのまま受け取れられる 時、被害者が幽霊から抜け出せるということを示す逸話だ。だが統合進歩党と 全教組は、相変らずチョン・ジヌの公認を強行し、彼女の声を世の中から消している。

彼女は1年前までは全教組の組合員だった。自分を徹底的に捨てたチョン・ジヌ 執行部への背信に歯ぎしりしながらも、同じ学校で全教組活動をしてきた後輩 に申し訳なく、組合員に残っていた。彼女は2011年3月に学校を変わり、全教組を 脱退した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2012-03-20 00:38:20 / Last modified on 2012-03-20 00:38:32 Copyright: Default

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