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韓国:サムスン半導体白血病被害労働者インタビュー | ||||||
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偶然というには十分に残忍だった[インタビュー]サムスン半導体白血病被害労働者パク・ジヨン氏
メディア忠清/ 2009年06月03日13時32分
ジヨン氏がインタビュー中、一番よく言った言葉は「申し訳ない」だった。彼 女がどんな罪を犯したからといって、そんなに申し訳なく思わなければならな いのか。名前だけでも怖くなる白血病にかかり、人生を根こそぎなくした23歳 のジヨン氏がなぜ『申し訳ない人生』を暮さなければならないのか。 サムスン半導体温陽工場で働いてまだ3年にもならず、急性骨髄性白血病の判定 を受けて闘病中のパク・ジヨン氏。彼女がサムスン半導体白血病被害労働者4人 と共に提出した労働災害申請が、5月19日に全員不承認の決定を受けた。
少女が抱いた夢とは距離がある遠い現実 暮らしが豊かでなかった彼女は中学生の時、すでに大学進学をあきらめて商業 高校に進学した。『はやく卒業して金を稼ぐ』という考えしかなかったと言う。 その少女にサムスンという企業は、夢をかなえてくれる踏み石に見えただろう。 だが、高校3年の春にサムスン半導体に入社願書を出し、その年の12月温陽工場 に入社した彼女にやってきた現実は、少女が抱いた夢からはるかに遠かった。 「初月給が78万ウォン程度でした。O/Tを付けて90〜100万ウォン、12時間二交 代を一週間に4日しても賃金は130万ウォンを少し越える水準でした。ほとんど 長時間肉体労働の現実で、寄宿舎と工場だけを行き来して暮しました。その上、 寄宿舎に入ってもいつも気持が不安でした。初めは暗記することもとても多く、 試験を受けるストレスもありました。後になって『私が不良を間違って処理し たのでないか』と思って楽に休めないほどでした。」 パク・ジヨン氏は、温陽工場で半製品状態になった半導体を検査し、次の工程 に渡す仕事をしてきた。彼女が化学薬品のいやな臭いを我慢してつらい労働に 耐えたのは、『がんばってお金をためて、両親に家でも買って差し上げて、旅 行にも送って、親孝行をしたい』という夢があったからだった。そんなに熱心 に5〜10年働けば、たくさん金が貯まると思った彼女を待っていたのは、映画や ドラマに出てくるような白血病だった。 「韓国最高の大企業に入社したことがとてもうれしくて、ひそかな自負心もあ りました。頑張って働けばお金もたくさんためられるという期待もありました。 でもサムスンで働いた代価として私が白血病にかかるとは、本当に夢にも思い ませんでした。」
「私が白血病だということに実感がなかったけれど、訳もなく恐ろしくて泣く ばかりでした。まるで夢を見ているようでした。しかし、あまりしないうちに 坑癌治療を受け、髪の毛がごっそり抜け始めて、私が白血病だということを実 感できました。」 『労災申請さえしなければ、治療費はすべて責任を取る』? サムスンで働き、白血病で死んだり闘病中の労働者は現在までに確認されてい るだけで22人だ(サムスン白血病忠南対策委、半導体労働者の健康と人権守るパ ノリム)。すでに白血病と闘い故人になったファン・ユミ氏のお父さんの言葉に よれば、サムスンは最初、この問題を提起した人々を巨額の金品で懐柔して、 労災申請の試みを遮断しようとし、現場の同僚の口をふさいで作業現場をきれ いに掃除して労災を隠そうとしたという。パク・ジヨン氏の場合もあまり違わ なかった。サムスンはパク・ジヨン氏のマスコミのインタビューが出るまでは、 特別な反応もなかったという。労働者のポケットをはたいて少し募金でもして やれば隠せると考えたのか。ところがパク・ジヨン氏が他の被害労働者とその 家族、連帯団体と一緒にしていることが把握された直後から、サムスンの態度 は積極的に変わった。 「家まで訪ねてきて『労働災害申請をするな』と要求しました。労働災害申請 さえしなければ治療費はすべて支援すると言い、田舎の家にも訪ねてきて『家 を清潔に直す』とまで言いました。初めはどうするべきか、両親も激しく対立 しました。でも、労災があまりにも明白で、これさえ確認できればあえて不確 かな会社の話を信じなくても、安定して治療を受けられると思いました」。と ころが、パク・ジヨン氏が他の被害労働者と共に労災申請をすると、サムスン の態度は『家をいつ直すといったか。法の通りにしろ』に急変した。 疫学調査?ハク!する調査 「私が働いていた時とはまったく違う作業環境を作っておいて、そこで問題が あるかないかと言えばどうなるでしょう? その頃、働き続けていた姉と電話を したのですが、疫学調査の時は工場を清潔に清掃したばかりか、今はマスクも みんな使い、化学薬品が染みた綿手袋とその他の保護装備も新しく補強された といいました。」 12月29日、韓国産業安全公団が発表した『半導体製造工程勤労者の健康実態疫 学調査』の結果もまた、発病の危険を隠蔽-歪曲したという疑いが提起された。 パノリムはこの結果報告書について、別名『事故ライン』と呼ばれた危険な生 産ラインの労働者ではなく、サムスン半導体の全労働者の発病率で統計をざっ とまとめたと明らかにした。そして就職段階からもっと健康な人が入社する上 に、勤務中に健康問題が発生すれば退社や離職で、その現場を離れるから結局、 工場には健康な労働者しか残らない現象(健康労働者効果)を考慮しない分析を 出し、リンパ腫瘍と白血病が違う疾患のように表現し、白血病の危険が少ない ように表現するなど、わかった危険まで小さく隠すことに汲々とする報告書だ と疑いを提起した。結局、一部のマスコミはすでに『半導体産業で白血病危険 が高くないことが確認された』、『むしろ一般人口集団より安全だ』というな ど、真実を歪曲する報道をする状況になった。
「不承認の理由は2〜3行しかありません。とうてい納得できません。とてもく やしいです。サムスンも勤労福祉公団もみんな悔しいです。初めて白血病診断 を受けた時の衝撃と、不承認の結果を受けた今の衝撃はあまり違いません。サ ムスンという巨大な権力との戦いなので、難しいとは推察しましたが、心の片 隅にはそれでも小さな希望を持っていたのに……」 勤労福祉公団が1年以上の時間をかけて送ってきた不承認通知書に書かれたたっ た数行の文が、パク・ジヨン氏のこれから残された人生をまた絶望に追いやっ た。通知書の『処理結果および具体的な理由』という項目には「同疾病が業務 上の疾病に該当するかどうかを確認するために、関連資料と、韓国産業安全保 健公団の疫学調査結果報告書、わが支社の諮問医師会の結果、旧労働災害補償 保険法施行規則第39条1項[星印1]などを総合的に検討し、災害者の白血病は 業務と因果関係が低いと判断されたため、貴下の最初療養給与申請を不承認と することをおしらせします」という文句が全てだ。『具体的な理由』は全く具 体的ではなかった。 「不承認とすることをおしらせします」 「今どうすればいいのか、まったくわかりません。今お母さんが昼夜で働いて、 生活費、治療費を払っていますが、こんなに毎日毎日延命していくことがいつ まで可能なのか……。何もできないので、ご飯を食べることさえ両親にとても申 し訳なくて…… 一日中家に一人でいると、度々自責感を感じます。私は何の罪も ないのに、なぜ私にこんなことが起こったのかくやしかったり…… 白血病患者に は清潔が最優先なので、両親がいる田舎の家では生活できず、お父さん一人に してお母さんと町に別に部屋を借りて住んでいます。一度は田舎の家にお父さ んに会いに行ったのですが、お父さん一人で苦しい暮らしをしているのを見て 申し訳なくて涙が出てきましたよ……」 ジヨン氏は昨年4月に骨髄移植手術をしたが、7〜8日に3回も応急室に運ばれた。 疾病への抵抗力が極度に弱まり、顔面と目に水泡が生じるなどの帯状疱疹が発 生したためだ。その苦痛が強く、鎮痛剤を使わなくては耐えられないという。 彼女はいつまた帯状疱疹が発生するか常に不安に震えて、生活しているという。 そのように、ジヨン氏は自分の身を取りまとめることだけでも大変な状況で、 21歳で白血病にかかり、一瞬にして今後の人生全体を完全に失ったという衝撃、 当面の治療費と生活費を心配しなければならない現実、労災と承認されず、サ ムスンという職場とこの社会から捨てられたという心の傷まですべてに耐えて いた。そんな彼女が両親に申し訳ない気持と、両親を疲れさせているという自 責感に苦し、インタビュー中ずっと『申し訳ない』という言葉を繰り返していた。
「治療費の心配だけでもしなくて暮せればいい」 「今までの治療費は1億近くなるようです。そしてこれからあとどれほどの治療 費がかかるのか果てが見えません。特別に応急状況がない状態では平均2週間に 一度通院治療を受けるのですが、一度病院にくるたびに30万ウォン程度かかり ます。こんな状況では、私が望むのは当然また健康になることですが、今の私 には治療費の心配さえせずに暮せればという考えしかありません。」 『今病気でなければ何がしたいですか?』という質問に、ジヨン氏はとても漠 然としているといった。『これはどんな問いだろう?』と考えたのか。彼女は一 度もそんなことを考えなかったのではないだろうか。暮らしを心配したある少 女が中学生の時、すでに大学進学を放棄して、高等学校を卒業するやいなやサ ムスン半導体で働き始めた。いくらにもならない月給を一銭一銭惜しんでつら い労働に耐えてきた彼女に『したいこと』があると考える暇もなかったはずだ。 そんな彼女の返事が「したいこと……ですか?……そんなことは考えてたことがな いのですが……」というのは、あるいは当然のことだったかもしれない。 パク・ジヨン有罪、李健煕無罪!
パク・ジヨン氏をはじめ、その被害数も確認できず、名もなく消えていった白 血病被害労働者が身を置いた半導体産業は、90年代からITコリアというスロー ガンの下で韓国経済の輸出代表走者として認められてきた。 昨年は『半導体の日』が制定された。サムスン電子はその中で80年代後半から 半導体で莫大な利潤をあげる代表企業だった。李明博政権も世界的な競争力を 確保した半導体・ディスプレー・携帯電話・造船・自動車産業をグリーン化し てグローバル市場の掌握力を画期的に高めた緑色成長期本法を作るという。 だがその華麗な表面にかくされた半導体労働者の現実はあまりにも苛酷だった。 とても大切なものを犠牲にして得た企業の利益と『世界最高の競争力』、『半 導体市場全体の世界市場占有率11.3%(2007年)』等の各種タイトルが、何でそん なに誇らしいのか。半導体産業が韓国経済を食わせて生かしたとすれば、それ はまさに半導体労働者の生命を古草履を捨てるように捨てた代価、それ以上で もそれ以下でもないだろう。 病院での待ち時間が特に長かったその日、ジヨン氏は午後6時に診療を終えて 病院を出ることができた。とても疲れる彼女とインタビューを終えて帰る車中 で、サムスンの李健煕会長の無罪判決のニュースを聞いた。 たった61億ウォンで、16億ウォンの贈与税だけ払い、200兆ウォン台のグループ を息子に譲り渡した李健煕前三星グループ会長が無罪を宣告されたのだ。キム・ ヨンチョル弁護士の良心宣言と、世に知られたサムスンの天文学的な秘密資金、 国家機関と個人への全方向金品ロビー、法廷証拠と会計資料操作なども同じだ。 世の中がこう言った。『パク・ジヨン、あなたは有罪、李健煕は無罪!』 偶然というにはすでにこの世は十分に残忍だった。
インタビューの後の話 インタビューをした日、血液検査と癌センター、そして眼科診療をしながら疲 れるだけ疲れたジヨン氏に「今、病気でなければ何がしたいですか?」と尋ね た。その時、彼女は一瞬、返事が見つからず『考えたことがない』とからだを 深々と椅子に埋めていた。 何日か後にジヨン氏から携帯のメールがきた。 「最後に言いたい返事を、普通の人のようにマスクを脱いで自由で平凡に働い て、食べたいものを思う存分食べて暮したい…ちょっと答えを追加して下さい。」 何日も悩んだジヨン氏の返事であろう。だがもしかしたら永遠にかなわないか もしれない23歳の労働者のあまりにも正当で素朴な望みを、サムスンが、勤労 福祉公団が、そして韓国社会がその芽から踏みにじっている。(パク・ウォンジョ ン記者) 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2009-06-07 15:21:02 / Last modified on 2009-06-07 15:21:04 Copyright: Default このフォルダのファイル一覧 | 上の階層へ | ||||||