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死を呼ぶ『電子産業』...労災と自殺のドミノ

電子産業の核心『サムスン』、そこで死んでいく『労働者』

ユン・ジヨン記者 2011.03.09 20:45

1月3日、サムスン電子LCD湯井寄宿舎で、女性労働者のパク某氏が投身自殺する 事件が発生した。それから一週間後の1月11日、湯井寄宿舎で男性労働者故キム・ ジュヒョン氏がまた投身自殺で命を失った。

自殺だけではない。サムスン半導体、サムスン電子LCD、サムスン電気などで働 いていた労働者のうち120人が白血病、リンパ腫、ガン、脳腫瘍などの病気にかかった。 そのうち46人が死亡した。それこそ悪夢のような電子産業労働者の実態が次第に 表面化している。

あらわれない電子産業下請け労働者、地獄のような労働

民主労総サムスン対策会議と金属労組は3月9日午後、民主労総で電子産業労働 の実態と改善のための討論会を開いた。問題提起と討論をした専門家は誰もが 今の電子産業の労働現場は『労災』と『自殺』を呼ぶほかはない構造だと言う。 長時間労働、低賃金、有害物質露出などに苦しむ労働者にとって電子産業の 現場はそれこそ『地獄』そのものだからだ。

韓国電子産業の労働者のうち女性労働者の超過勤労時間は月30.4時間に達する。 製造業の平均超過勤労時間の28.5%を大きく上回る数値だ。自動車部門に従事する 男性労働者の場合は、さらに状況は深刻だ。彼らは55.2時間の超過勤労に苦しんで いる。

製造業の平均賃金は2,168,285万ウォンだが、電子産業従事女性労働者の賃金は 1,727,254万ウォンに過ぎない。しかしこの数値で電子産業の労働者の全般的な 数値を知ることは難しい。労働者運動研究所のハン・ジウォン室長は、「上の 統計は常用職労働者だけが対象で、電子生産職で一般化している派遣労働者の 実態の数値は事実上、除外されている」と説明した。

実際に電子産業には集計されていない多くの下請け労働者が存在する。ソウル のデジタル団地で働く電子産業労働者は、公式には15万人程度と集計されてい るが、数値から脱落した派遣業者に所属する労働者の数は把握されていない。 ただしソウルデジタル団地駅を通って毎日出勤する労働者だけで30万人になる という数値だけがおおざっぱな数として報告されている。

数値でも把握されない派遣労働者の勤労条件はなかなか表面化しない。そのた め民主労総は、『ソウル南部労働者の権利のための事業団・労働者の未来』を 組織して、ソウルデジタル団地の労働者の権利のために立ち上がった。この過 程で事業団が調べた電子産業派遣労働者たちの実態は、それこそ『地獄の労働 現場』だった。

労働者の未来南部地域支会のク・チァヒョン支会長は「賃金制は大多数が最低 賃金で、賃金を残業や特別勤務手当てに依存する程度が非常に高い」とし、 「また、長時間労働は非常に不規則だが、当事者の選択権や自律性はほとんど 保障されていない」と伝えた。

会社での賃上げ誘引をはじめとする雇用安定誘因もなく、社内福祉はほとんど 最低水準だ。その上、よく知られている電子産業の労働者の労働安全は、本当 に劣悪だといううわさをありのままに見せている。ク・チァヒョン支会長は 「洗浄の過程で人体を刺激する化学物質を使用するが、その危険要因もきちん と把握していない」とし「短時間で繰り返される労働により、筋骨格系疾患を 抱えている人も多い」と伝えた。

電子産業の核心『サムスン』、その中で死を迎える『労働者』

1月11日に自ら命を絶った故キム・ジュヒョン氏は、生前、労働現場での苦情を 訴えてきたという。実際、彼は入社から1年間、皮膚病と憂鬱症に苦しんできた。

[出処:メディア忠清資料写真]

2010年2月1日、サムスン電子LCD事業部天安工場のFAB(クリーンルーム)カラー フィルター工程の設備エンジニアとして入社した彼は、クリーンルームで防塵 服を着用し、化学薬品を扱いながら整備を担当した。この過程で皮膚病を発病 した彼は、2010年8月2日、防塵服と化学薬品の取り扱いによる皮膚病と診断さ れた。イ・ジョンナン労務士は「2010年4月から7月まで彼はいつも家族と友人 に皮膚病と一日14〜16時間の長時間労働を訴えてきた」と明らかにした。

すでに遺品になった故人の教育ノートには、「12時間勤務=基本」、「1年で死 ぬ」という記録が残っていた。イ・ジョンナン労務士は「故人は寄宿舎で寝て いても、呼び出されて、トイレに行く時間もないほど膨大な物量を短い時間に 消化しなければならなかった」とし「また1か月に一度も休めない場合もあり、 基本は12時間勤労で、一日14〜16時間の不法超過勤労が強要された」と述べた。

だがサムスンで働き、自ら命を絶った人々は今年の2人の労働者以外にも多いと 予想されている。『半導体労働者健康と人権守備パノルリム』でサムスン半導体 器興工場で起きた自殺事件の情報提供は、そのような主張を裏付ける。イ・ジョ ンナン労務士は「交代制がおかしな2交代に変わった後、労働強度が強まって 2年間で6事例も自殺が発生したという情報提供があった。ある生産職女性労働者 は、同僚の李某氏が2001年に自殺したが会社は違う死亡理由を話したと伝えて きた」と伝えた。

2000年後半に在職していたヨン某氏は、「私が働いていた当時も寄宿舎で自殺 した女性がいた」とパノルリムに知らせてきた。部長級エンジニアのホン某氏 の夫人も「夫が一生サムスンマンとして忠誠をつくしたのに、6か月間、重症の 貧血治療を受けて、ある日、昇進からの脱落と業務のストレスのために自殺し たが、サムスンは自殺の理由を家の問題にした。くやしい」と訴えたと言う。

サムスン半導体をはじめ、サムスン電子、サムスン電気などで働いて貴重病に かかった労働者のケースもこれと違わなかった。彼らは数百、数千種類の化学 物質と放射線などに露され、長時間労働に苦しんだ。白血病、リンパ腫、脳腫 瘍、ガン、再生不良性貧血などを発病したが、サムスンはこれらの労働者が扱う 化学物質も公開していない。

すでに消えてしまった工場、そして正体不明の化学物質は、彼らの労災の有無 をさらに迷宮に陥らせる。現在まで17人の労災申請のうち、審議中の1件を除く 16件で続々と労災不承認の判定が出るのもサムスンと勤労福祉公団の『工作』 だという見方は少なくない。

事実、半導体をはじめとする韓国電子産業で、サムスンなどの大企業は核心的 な役割を担っている。ハン・ジウォン室長は「韓国の半導体産業での売上額を 見ると、サムスン電子とハイニックスの比重が圧倒的に高く、特に、サムスン 電子は半導体から最終消費財までのほとんどが系列会社内部で作られている」 と説明した。また彼は「韓国のディスプレー産業はサムスンLG系列の会社が全 世界のLCDパネルの52%以上を占めている」とし「携帯電話は、サムスン電子が 部品、モジュールセット組み立てのほとんどの過程に系列会社を布陣している」 と強調した。

だが報道機関とイメージメーキング、そして機密維持により、現場の労働者の 労働環境を公開しないサムスンと、労働者の数も把握できない多くの電子産業 関連の下請企業は、労働者の労働実態を日の当る場所に持ち出せない。結局、 電子産業に従事する多くの労働者は、彼らの労働環境を公開できないまま今日 も『自殺』と『労災』に直面しているのだ。

電子産業の労働実態、『常識的』な改善も難しいのか

こうした電子産業の労働実態を改善する方案は、極めて常識的な線に留まって いる。イ・ジョンナン労務士は「サムスンの組織文化が人間的なら、サムスン に民主的な労組があったなら、適正な勤労時間と休息が保障されたなら、少な くとも労働法さえ守っていれば、キム・スヒョン氏の死を防げたのではないか」 と残念さを吐露した。

[出処:チャムセサン資料写真]

実際にサムスンの無労組経営方針は、労働者との疎通を遮断し、有害化学物質 の公開拒否は、労働者の知る権利を遮っている。社員証による常時監視と、労 働者の日常を監視する労務管理により、労組を結成できない彼らは長時間勤務 にも、労災にも、同僚の自殺にも、口を閉じるほかはない。

サムスンだけでなく、すべての電子産業事業場での労働環境の改善は重要だ。 だが、労働の実態を告発したり、変えるためには、少なくとも労働者の声が大 きくならなければならないが、サムスンは強力な無労組方針により、多くの下 請業者はそれぞれが労働者の組織化の困難を味わい、いつも挫折を経験する。

ハン・ジウォン室長は「労働者数にすればサムスン電子、LG電子労働者の数は ごく少数なので、組織化の量的な拡大は部品下請業者の組織化によるものでな ければならない」とし「だが汎用モジュールと規格製品が多い電子産業の特性 により、ほとんどの部品メーカーでは元請に交渉力を持っているケースはすく ない」と指摘した。

だがこれらの大型部品下請業者が、財閥大企業と中小零細電子企業の労働者の 組織化の核心的な媒介として作用するので、可能性は充分だ。ハン・ジウォン 室長は、「下請業者労働者の組織化は容易ではない問題だが、財閥大企業の生 産の過程で直接的な打撃を与えられることは、中小零細電子業者の労働者にも さまざまな自信を植え付けられる」と予想した。

一方、彼は多くの下請業者に所属する労働者を組織するためには何よりも公団 内の組織化が必須だと説明した。ハン・ジウォン室長は「ソウルデジタル団地 のように企業が密集し、政府が直接管理している工団が存在する以上,ここで の組織化に成功できなければ勤労条件や不公正下請けなどの構造そのものを変 えるのは難しい」と診断した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-03-10 17:59:01 / Last modified on 2011-03-10 17:59:03 Copyright: Default

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