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一夜の白色テロ

[問題]覆面の用役が乱入...自分の土地から引きずり出された人々

ソン・ジフン記者 2016.04.04 22:58

1月30日明け方。まだ夜が明けない6時30分だった。 ハンマーが扉を壊す音でキム某氏とイ某氏は眠りから覚めた。 コンテナに付けられた薄い鉄の扉と扉の取っ手は、2回ほど若い男が槌を打つと落ちていった。 扉が開き10数人の男がコンテナの中に押しかけた。 うっすら見える顔には覆面がつけられていた。 眠りから覚めたばかりのキム氏とイ氏は、どうしようもなく男たちに引きずり出された。 腰の周りをつかまれて引き出されたイ氏の腰のベルトが切れた。 イ氏は激しく抵抗したが無意味だった。 男たちはキム氏を引き出して工事現場の片隅に投げ捨てた。 コンテナから150メートルほど離れたところだ。 キム氏は地面に倒れて失神した。 当時の気温は零下4度だった。 彼らが地面に倒れているすきにコンテナは撤去された。 扉を壊した最初の槌の音から、男たちが消えるまで、30分ほどしかかからなかった。 キム氏とイ氏の同僚が知らせを聞いて現場に到着した時、男たちはすでにいなくなっていた。 その時、やっと日が昇った。

[出処:平沢細橋地区撤去民対策委員会]

白色テロ

コンテナは平沢市細橋都市開発地区のヒルステート建設敷地にある平沢細橋地区撤去民対策委員会(対策委)の事務室だ。 対策委はコンテナの事務室を毎晩2人が交代で守った。 キム氏とイ氏はコンテナが撤去された1月30日の当番だった。 二人は75歳の老人と50歳の中年だ。 キム氏は脳震蕩などで全治5週の診断を受けて入院した。 対策委の関係者は「キム氏が退院後も当時の事をはっきり覚えておらず、 精神的衝撃を受けている」と伝えた。

キム氏は事故の後、急激に口数が減った。 イ氏は普段腰ディスクを病んでいた。 イ氏は当時を思い出しながら「寝ていると突然コンテナをたたく音が聞こえ、すぐ覆面をかぶった男たちが攻め込んできて、腰の周りを捉えて引張って行った」と話した。 イ氏は腰のベルトが切れるほど、男たちの力は強かったともつけ加えた。 彼は「今も夜に良く眠れないほど」と、事件当時の恐怖感から抜け出せずにいる。 侵入の知らせを聞いた対策委の関係者たちは直ちに事件現場に駆け付けたが、 工事現場を警備する用役に阻止され、現場に接近することもできなかった。 対策委の総務ナ某氏は「コンテナから引きずり出され、 フェンスのすみに捨てられたキム氏の動かない手を10分以上見ていることしか出来なかった」と当時の状況を伝えた。

テロの辞書的な意味は 「目的のために相手に暴力を行使したり恐怖感を造成する行為」だ。 対策委は事務室が撤去されてから二人が身体的、精神的被害を受け、 撤去反対の闘争動力を失った。 今回の暴力が対策委の力を弱める効果をあげたとすれば、これは明白なテロ行為だ。 一種の「白色テロ」だ。

犯人はこの中にいる

事件発生後に警察は19人の関係者を立件して捜査を続けている。 立件された19人の中には、施工者の現代建設と施行会社、用役会社の関係者が含まれている。 平沢警察署はコンテナに乱入し、直接暴力を行使した10人の用役の他に、彼らに指示した背後が誰なのかを明らかにすることに捜査の焦点を合わせている。 平沢署の関係者は立件された人々の容疑について 「直接暴力を加えなくても事前にこれを謀議したり指示した人々が立件対象者に含まれている」と明らかにした。 この事件が直接暴力を加えた用役職員だけの犯行ではなく背後があることを確認したわけだ。

しかし現代建設と施行会社のエネルギーバンク、再開発組合は、すべて関連の事実を否認している。 立件された19人の中に施行会社と施工関係者がすべて含まれているという警察の伝言と違い、 現代建設は「この事件に関して調査を受けた人もいない」と主張した。 再開発組合は「事件と組合は何の関係もない」という立場を固守している。 施行会社は警察の捜査の結果を待つという立場を繰り返すだけだ。 テロが起き、指示した背後がいるという点も明らかになったが、 背後として指定された誰もが言い逃れている状況。

現代建設は細橋地区に1万人ほどの人員を収容できる33棟のヒルステートを作る予定だ。 しかし施行会社と組合が土地の補償問題をきれいに解決できず、撤去民との摩擦を引き起こし、工事が遅れている。 この渦中で対策委が対策委総務が所有する私有地にコンテナを設置して事務室を作ったわけだ。 現代建設は、事件発生5日前の1月25日、対策委宛にコンテナ撤去を要求するという内容証明を発送した。 現代建設は内容証明で、コンテナが工事の邪魔になっていて、工程の損失や警護と警備人員の増加などで深刻な損害を受けており、 刑事告発と損害賠償を請求すると明らかにした。 現代建設が内容証明を送った直後に平沢市の公務員が対策委の事務室を訪問し、 自主的な撤去を要請した。 平沢市の公務員は、陳情による措置だと明らかにした。 現代建設が対策委活動を面白く思っていないことの傍証だが、 事件との関係は否定している。 現代建設の関係者は「認可された事業で工事を担当するだけで、 施行会社が用役を動員したものと理解している」と話した。

施行会社でも、対策委の活動は邪魔ものだ。 2010年に開発区域と指定され、実施計画を樹立したが、6年間足踏み状態だ。 住民に対する土地補償問題が解決しないためだ。 一部の住民とは法廷での攻防も続いている。 国土交通部の未分譲資料を見ると、昨年12月31日に平沢市アパートの未分譲物量は2360世帯だ。 11月よりも1320世帯増えた。 昨年9月末の未分譲の物量が95世帯まで減り、3か月で約2300所帯も増えた。

この地域の不動産景気は大企業の産業団地の建設と米軍基地移転、KTX駅開通などの好材料が支えてきた。 しかし中途金融資規制がマイホーム心理を萎縮させたうえ、過剰供給などで全体の不動産景気が沈滞している余波は避けられないものと見られる。 こうした状況で対策委の活動が活発になり、事業がさらに遅れれば事業自体が危機を迎えかねない。 施行会社であれ、施工主であれ対策委活動を阻止して事業を迅速に進める必要があるのだ。

計画された犯行なのか

対策委は1月16日に細橋洞サン48-22番地にコンテナ事務室を作った。 対策委の総務ナ某氏所有の土地だった。 当時まで、工事現場は建物どころかフェンスさえない荒野だった。 コンテナが設置された直後に現代建設は工事現場の周辺を囲むフェンスを設置し始めた。 敷地の真ん中にあるコンテナは、外部の視線から完全に遮断された。 現代建設は工事現場に通じるゲートを三つ作り、すべてのゲートに警備室を作った。 敷地に入ろうとすれば警備室の目を避けられない構造だ。

フェンスが設置された後、対策委の関係者は自分たちの事務室に行くたびに現代建設の警備員たちと揉め事をしなければならなかった。 この点が対策委が事件の背後に現代建設があると主張する根拠だ。 現代建設がすべてのゲートを統制しており、現代建設の許諾がなければ用役がコンテナに接近できないという主張だ。 また、現代建設が暴力を犯した用役を隠していなかったとすれば、 事件直後に到着した対策委の関係者が彼らを見たはずだ主張した。 現場を警備する用役会社と契約を締結した時点も事件発生日と遠くない。 現代建設はフェンスが完成した1月25日頃にK警備の用役業者と契約を結んだ。 この用役業者の職員は事件当日、対策委の関係者が負傷したキム氏とイ氏に接近することを妨害した。 これに抗議する人を採証もした。 フェンス設置後にゲートをふさぎ、対策委と衝突したのもこの用役業者の職員だ。 京畿南陽州に本社があるこの業者は、労務法人のウェブサイトごとに 「労組ができたり争議が発生した現場を連結すれば収益を分配する」という広告を残した。 その広告は現代建設をはじめとする各種建設現場や労組を「処理」した実績を明示している。

しかし現代建設側は「事件が発生した時刻は作業員の出勤時刻で、 現場に出入する人をいちいち確認していなかった」と主張する。 現代建設の関係者は「どの建設現場でも、出勤時間に混ざって入れば自由に出入できる」と話した。 平沢署は事件を捜査しながら、当時、出入口にCCTVが設置されておらず、 出入者の身元を直接確認できなかった。 平沢署によれば、現代建設は事件直後にCCTVを設置した。

どう進行しているか

精神的、身体的損傷を受けた被害者が発生したが、 現代建設とエネルギーバンクは法的・道義的な責任を回避している。 用役に直接暴行されたキム氏とイ氏は5週間以上入院したが、 現代建設もエネルギーバンクも病院を訪問しなかった。

事件の後の土地補償問題も動いていない。 対策委は当初補償金額がきちんと策定されていないと主張する。 金額を調停する交渉も進んでいないと主張した。 しかし再開発組合と施行会社は対策委が嘘をついていると反論した。 細橋開発組合の関係者は「2014年4月16日から補償協議を始め、その後20回以上会って協議をした」とし、 すでに補償が終わった世帯との公平性のためにも、さらに高い補償金額は策定できないという立場だ。 組合と施行会社は裁判所に供託金を払って土地収容を終えたので、迅速に事業を強行すると明らかにした。

対策委は法的な対応をしてこの事件の背後を明らかにし、応分の処罰を受けさせるという強硬な立場だ。 対策委は弁護士を通じ、4月1日に平沢警察署に告発状を提出した。 告発状は現代建設とエネルギーバンク、再開発組合が「暴力行為など処罰に関する法律(暴処法)」と「警備業法」に違反して、 共同住居への侵入、共同財物の損壊、傷害を行ったという内容だ。 警察は告発状が受付られる前から事件について捜査を進めた。 直接暴力を行使した用役はもちろん、背後と推定される人物まで立件したが、 検察の補強捜査の指示により追加立件の対象を検討しているという。 警察も暴処法と警備業法違反の容疑に捜査の焦点を合わせていると伝えられた。

テロには色がある

2009年1月、ソウルの真ん中で「テロ」が起きたという記事が広まった。 火炎瓶を持った撤去民が建物を占拠して火災を起こしたという知らせだった。 今は「龍山惨事」として記憶されるその日の悲劇を、ある人たちは「テロ」と言う。 2016年1月30日、日も登らない明け方、覆面をつけた十余人のがっしりした男がハンマーを持って攻め込み、暴力を振るった。

犯罪行為があり、被害者も明確だが、まだ犯人は明らかになっていない。 被害者は恐怖に苦しみ、テロの「成果」として村と家を奪われた人々の抵抗は力を失って行く危機にある。 よく構成されたこの寸劇をある人々は「テロ」だと言う。 テロには色がある。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-04-10 02:17:22 / Last modified on 2016-04-10 02:17:24 Copyright: Default

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