本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:誰のための通信秘密保護法改正か
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1230367559435St...
Status: published
View


どうしてもわれわれは彼らを信じられない

[論説]誰のための通信秘密保護法改正か?

チャン・ヨギョン(論説委員)/ 2008年12月23日6時58分

12月11日。国会法制司法委員会のイ・チュンソク議員室と、民主党政策委員会 の共同主催で通信秘密保護法に関する討論会が開かれた。この席で最も注目を あびたのは、参加していない討論者だった。通信秘密保護法改正を強く主張し てきた法務部が出席する代わりに書面で討論に代えたのだ。法務部は書面討論 文でハンナラ党のイ・ハンソン議員が発議した通信秘密保護法改正案を強く擁 護し、この法案が事実上、政府の法案であることを再度確認させてくれた。法 務部の核心の主張は、捜査機関が通信事業者を通じて監聴することが「世界的 な立法傾向で、監聴の乱用を防止する効果的な方案」ということだった。同じ 内容の通信秘密保護法改正に反対した国家人権委員会の意見には「情緒的拒否 や、十分な検討なく、市民団体の憂慮をそのまま反映した」とさげすんだ。果 たしてそうだろうか?

通秘法の改正は国家情報院のため

最初に指摘する点は、この法の改正を最も強く推進している勢力が国家情報院 だということだ。マスコミでは、通信秘密保護法改正が国家情報院の「念願事 業」という話がたびたび出てくる。通信秘密保護法がどうして国家情報院の念 願事業なのかは、監聴統計がよく示している。

上のグラフは政府が年2回公開する監聴統計を再構成したものだ。警察、検察、 国家情報院、国軍機務司令部のうち、断然圧倒的な監聴執行者は国家情報院だ。 2007年には全8803件の監聴のうち何と8623件の監聴が国家情報院によって行わ れた。驚くべきではないか? これは現行の通信秘密保護法が「国家保安法に規 定された犯罪」全体を監聴できるように保障しているためだ。

ところが国家情報院は、なぜこれほど多くの監聴をしなければならないのか? 誰もが知る通り、彼らは一般犯罪は捜査しない。国家情報院が最近、技術流出 犯罪を摘発して成果を上げているとはいうが、これが彼らに認められる業務範 囲なのかについての議論も続いている。なぜなら現行の国家情報院法では、彼 らは国内情報は収集できないためだ。すべてが国家保安法違反事犯でなければ、 国家情報院は自分たちに認められる以上の範囲を監聴していると考えなければ ならない。確かに、国家情報院も論議の余地があるという点をよく知っている。 だから彼らはこの際、国家情報院法も改正して、情報収集範囲を合法的に拡大 しようとしている。国家情報院と通信秘密保護法はパッケージだ。

憲法18条が保護する国民の通信秘密の権利の上に君臨する国家情報院の権力は、 通話内訳、IPアドレスなどの通信事実確認資料の場合、さらに激しい。警察や 検察が通信会社に通信事実確認資料を要請する時は、法院から許可を受けなけ ればならないが、国家情報院は法院の許可を受けなくても良いのだ。

このように、現行の通信秘密保護法が国家情報院のための穴をそのままにして いるのに、彼らは足りないという。犯罪捜査のためだというわけではない。監 視して査察するためだ。だからどうして私たちが通信秘密保護法改正に賛成す ることができようか? なぜ彼らを信じることができようか?

すべての通信事業者を手中に入れる

二番目、今回の改正案のとおりに通信秘密保護法が改正されると、最も大きく 変わる点は、すべての通信事業者を通して監聴できるようになるという点だ。 通信事業者は監聴設備を備え、捜査機関の協力に応じなければ通信事業ができ なくなった。法務部は捜査機関が通信事業者を通じて監聴すれば「監聴の不正 乱用の余地を根本的に遮断」し、監聴手続きが「透明」になると主張する。果 たしてそうか?

2005年にちょっと帰ってみよう。当時、全国民に衝撃を与えた「安全企画部Xファ イル」事件により、国家情報院とその前身の国家安全企画部が不法に携帯電話 を監聴してきた事実が明らかになった。不法監聴は2種類の技術的方法によって 行われた。一つはよく知られた通り、移動式携帯電話監聴装備のカス(CAS)だ。 国家情報院は45kg程度のこの装備を車両にのせて移動し、監聴対象者の200メー トル以内に接近してひそかに監聴したという。もうひとつの装備は有線中継通 信網監聴装備のR-2だ。この装備は非常に重要だ。なぜなら通信秘密保護法が改 正された時に導入される監聴方式と同じだからだ。当時、国家情報院は携帯電 話でも有線網を通じて中継されるという点に着眼し、通信会社の有線中継通信 網に監聴装備を設置した。この話はつまり通信事業者の協力の下に不法監聴が 行われたということだ。

R-2は実に強大だった。1998年5月この装備が開発された後、彼らが装備を廃棄 したと主張した2001年3月まで、国家情報院は政治・言論・経済・公職・市民社 会団体・労働組合幹部などの主要人物1800余人の携帯電話番号を入力し24時間 盗聴したという。十年もたった今は、その時よりはるかに多くの人々が、もっ と頻繁に携帯電話を使っているので、さらに強力な盗聴が行われるだろう。 ちょっと待て、通信秘密保護法によれば監聴は法院の許可を受けて執行するの だから問題ないだろうって?

とんでもない。彼らが不法監聴した時も、通信秘密保護法がしっかり存在して いた。だが監聴は全く「透明に」行われなかった。通信事業者は、不法監聴の 協力者に転落した。不法監聴の事実が知らされる前、すでに監査院が2000年5月 12日、「通信制限措置運用実態監査結果」を発表して指摘していた。監査院の 指摘の核心は、捜査機関の監聴が多い場合、不法な方法で行われており、通信 事業者がこれに協力していたという点だ。電話局の担当者が監聴許可書をきち んと確認しないばかりか、きちんと台帳に記録もせず、捜査機関が要請すれば、 すべての便宜をはかったという。不当で無理な監聴でも断りにくい韓国社会の 序列主義と身分上の不利益に対する心理的負担感のためだ。今後、そんなこと はないと、どうして断言できるのか?

携帯電話監聴だけが問題ではない

事実、今回の改正案は、携帯電話の監聴を始めるためだという。間違ってはい ないが、この改正案が含む内容はそれ以上だ。固定電話、無線電話はもちろん、 モバイルを利用したすべての無線通信、インターネット電話、画像電話、イン ターネットチャットとメッセンジャー、そして今後登場する多くの名前を知ら ない未来の通信まで、すべてを監聴の対象にしてしまった。世の中のどこにこ んな法があるのか?

固定電話がプライバシーに及ぼす影響と、無線通信がプライバシーに及ぼす影 響は違うだろう。インターネットがプライバシーに及ぼす影響はまた違うだろ う。ところが今回の改正案では、これについての討論の機会をまったく封鎖し てしまった。今、存在している通信だけでなく、未来の通信すべてを監聴義務 に従属させてしまった。人権の問題を事業者がどんな装備を保有するかという 技術の問題に還元してしまった。他の国々は、新しい通信手段の監聴を始める 時、多くの議論をしてきた。しばしば法務部が言及する米国のカリア(CALIA)法 さえ、現在の通信手段だけを対象にしており、インターネット電話をはじめと する未来の通信はその対象から除外している。

すべての国民を犯罪者と見なし、すべての通話内訳とインターネットの記録を 保管させるようにしたのもそうだ。施行令の水準に留まっていた通信事業者の 保管義務を、完全に法で強制し、従わなければ過怠金3千万ウォンを賦課すると いう。利用者の個人情報保護のため、あるいは一日にも数十ギガずつ溜る容量 の負担のために、不必要と思われるログ記録を削除する通信事業者がいれば、 直ちに処罰するということだ。

法務部はこれについて「1年の範囲内で」保管するようにしたので個人情報保護 が強化されたと主張する。まったくとんでもない話をしている。法案のどこに 「1年の範囲外で」収集したら罰すると書かれているだろうか? 通信事業者は、 当然これを「最低1年」保管しろという意味に読むだろう。情報人権団体は個人 情報のため、通信事業者が保有する個人情報をどうしても必要な場合を除いて 削除しろと主張してきた。国際的に、各国もそのような方向で個人情報保護法 を用意してきた。ところが韓国の通信事業者は、インターネット実名確認のた めという名目で、捜査機関に協力するという理由で、過度に多くの個人情報を 収集してきたし、それらの情報を利用して商業サービスを実施している。その ようにして保管された個人情報が数千万件流出し、インターネットに飛び交っ ている。これが個人情報保護か?

特にインターネットのログ記録は、設定によって利用者がいつ、どこで接続し たのかという情報だけでなく、敏感な通信内容も記録される。例えば利用者が 不法ファイルをアップロードしたりダウンロードした記録が捜査機関に必要だ という理由で、今後施行令次元ですべての利用者がファイルをアップロード・ ダウンロードした記録をすべて保管するように強制することもできるのだ。こ れは結局、利用者のどんな通信事実の情報であれ、膨大な量が蓄積されるとい う意味であり、これが現実になれば大韓民国のインターネットには通信の秘密 は存在しない。

結論として、今回の改正案は純粋に捜査機関の便宜のためであり、すべての通 信手段を捜査の手段に転落させてしまった。監聴可能な通信サービスだけにし ろということだ。この国は警察国家か? この法は果たして通信の秘密のための 法ではないのか?

われわれは、決して彼らを信じられない。百歩譲って、通信秘密保護法改正が 必要な合理的理由があったとしても、今、事が進められるやり方はとても不吉 だ。政府が法案を立法予告し、公聴会もして、正常な手続きを踏み、ゆっくり 法を改正する方法で、よく分かる議員によりすばやく法を発議した。すべての 民主的な手続きを無視して数で押し通すという、この明らかなことの一つを見 ただけても不純なことこの上ない。だから私たちがどうして信じられようか? 通信秘密保護法の改悪に猛烈に反対する!

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-12-27 17:45:59 / Last modified on 2008-12-27 17:46:00 Copyright: Default

関連記事キーワード



このフォルダのファイル一覧上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について