起亜自動車のモーニングはなぜ当たったのか

中央日報のドンヒオート注目に非正規職労働者たちは

「軽自動車は赤字」という国内完成車業界の固定観念を変えた。車を安く作る のは生産性が高いうえ、低賃金協力業者の生産勤労者を活用するためだ。この 会社は一日20時間2交代で工場を完全稼動させる。労組がなく、ラインがストラ イキで止まったこともない。

忠南の瑞山で起亜車モーニングを生産するドンヒオートの話だ。上の説明は、 中央日報が今日(10月16日)E3面でドンヒオートを「生産専門会社」として持ち 上げた内容。中央日報は「軽自動車は作るほど赤字? 固定観念を破ったドンヒ オート」という題のこの記事で、ドンヒオートの「生産性の秘訣」を詳しく説 明している。

記事によれば、「国内唯一の生産専門会社」であるドンヒオートはモーニング の生産で、起亜自動車の内需占有率増加に大きな役割を果たし、他の軽自動車 が1台当たり10〜20万ウォンの損失を出しているのにモーニングは1台当たりの 営業利益率が6%を越えるという。

▲起亜車モーニング生産業者のドンヒオートの生産性秘訣を紹介した中央日報16日付記事

中央日報はこのような大当たりの秘訣を「低賃金協力業者の生産勤労者活用」 と見る。記事によれば、起亜車生産職は1人当り一年約60台を生産するが、ドン ヒオートの勤労者は約170台を生産する。工場稼動率も100%と、これ以上供給量 を増やせない状況だ。「協力業者間の生産性競争が行われ、少し後れを取れば 苛酷だが翌年の契約を延長できない」と説明している。

「全生産職勤労者の80％以上が協力業者職員」(労組は100%非正規職と主張)で あり、彼らの賃金は「起亜車正規職の50%水準」だと言う。「それでも働きたい という勤労者が列を作り、瑞山市ではかなり大きな製造業者と安定した職場と 見られている」という説明だ。

労働組合をしようと思わず最低賃金で静かに働け?

中央日報の「称賛」の通りなら、一言で「ドンヒオートは低賃金非正規職労働 者を長時間働かせて金を稼ぐ会社」ということだ。こうした会社で「労働組合」 は邪魔者でしかない。

ドンヒオートは2005年8月、労働者が民主労組(ドンヒオート社内下請支会)を作 ると、多くの組合員が所属していた業者をそっくり廃業して約50人の労働者を 追い出した。組合員が残っていたもうひとつの業者も2007年末に廃業した。数 年前まで毎年契約書を更新する負担も労働者たちには大きな脅迫手段になった。

中央日報が引用したドンヒオート関係者の話によれば「最低限の人件費で最も 安く作る努力をすれば、協力業者間の競争を誘導するのは仕方ない」と言って いるが、協力業者(下請け業者)間の生産性競争と契約延長の拒否などは労働者 が「変な考え」をしないようにするためにも効果的だ。

金属労組ドンヒオート社内下請支会のイ・チョンウ支会長職務代行は「元請が 下請け業者を競争させるというのは真実」とし「業者を評価し、その評点によっ て請負契約時の金額に違いがあると言われる」と話した。評点の基準項目には 所属労働者の勤怠、生産品質に続き「労使関係」があるという。

イ・チョンウ職務代行は「言わば金属労組組合員が(下請け業者に)いるかどう か、いるとすれば何人いるか、活動は熱心にしているかで評点を付けるという」 と伝えた。昨年末に廃業した業者にも多くの組合員が所属していて、活動も熱 心にした結果、評点は最下位だった。イ・チョンウ職務代行が所属していた業 者も現在は評点が底という。

賃金も5年間、最低賃金ぎりぎりだ。新入社員の時給は3670ウォン、研修を終え ると法定最低賃金の3770ウォンを受け取る。一年過ぎるとさらに30ウォンがつ き、2年過ぎると50ウォン、3年目はさらに100ウォンを受け取る。会社はさらに 2万ウォンの手当てを時給に入れたため、さらに49ウォン程度を受け取ることに なり、受領額は変わらないが新入社員の時給も、とにかく最低賃金より高い。 こうしていくと、1か月350時間働いても手取りは120万ウォン程度だという。

中央日報は「労組がなく、ストライキもない」というが、実はドンヒオート社 内下請支会と複数労組で問題になった韓国労総に所属する労組が存在しており、 毎年低い水準の形式的な団体協約と賃金を維持している。

労組民主化運動標的で議論も

9月、秋夕の前後に5人の労働者が解雇された。このうち4人は学歴未記載を理由 に懲戒委員会で解雇されたが、労働者たちは彼らの解雇を「活動家を狙った」 と見ている。解雇された労働者たちは、韓国労総に所属する労組の組合員で、 労組の民主化に関心を持ち工場内で生産性向上による人員補充問題などを提起 してチラシを配っていた。これについて管理者の監視と尾行、身元照会があっ たという。

解雇者たちは昨年から韓国労総の労組がある業者の労組代議員として活動し、 「労働組合は組合員の意見を聞け」、「賃金交渉に強く対応しろ」など、御用 労組に問題を提起してきた。そのうち今年7月、ラインのUPH(時間当り生産量) が32台から36台に増えたことで、人員補充を要求するチラシを出した。

▲ドンヒオートを解雇された労働者がピケデモをしている。［出処:メディア忠清］

解雇の当該でドンヒオート社内下請解復闘の議長をしているイ・ベギュン氏は 「この時から会社は一挙手一投足を監視して、住んでいる家の前まで尾行した り、他の労働者たちに『イ・ベギュンと会うな』と強要した」と話した。この 時から「裏調査」が行われたのか、つまり入社時に履歴書に「大学中退ないし 卒業」の学歴を書かなかったという理由で懲戒委に回付、解雇された。

イ・ベギュン氏は「実際に学歴を低くして記載することが解雇の理由にはなら ないという判例もある。工場の中にも大学中退の学歴を記載しない人も多いが、 あえて活動した4人を解雇したのは事実上、標的解雇としか考えられない」と主 張している。

9月24日には、解約日の前に労働者が工場内の食堂で不当性を訴えて会社の警備 員から殴られ、集中治療室に入院する事態もあった。他の解雇者たちが工場前 で抗議したが、会社の申告で警察に逮捕された。

「地域の好調な会社」で、こうした問題が大きくなり、忠南地域労組と社会団 体が「ドンヒオート非正規闘争勝利と民主労組建設のための忠南地域対策委」 を設置するなど、ドンヒオートの実状が次第に知らされている。

イ・ベギュン氏は、中央日報が記事で「働きたいという勤労者が列を作り、瑞 山市のかなり大きな製造業者と安定した職場と見られている」と報道したこと にも憤激をさく烈させた。「仕事がとてもつらく、誰かがやめると空席を埋め るために半月やひと月かかる」と説明する。「瑞山近隣の地域では、ドンヒオー トと言えば、入った若者ががりがりにやせて苦しむ工場と噂されている」と付 け加えた。

使用者には夢の工場、労働者には絶望の工場

イ・チョンウ職務代行は「モーニングが大ヒットしたのは、中央日報の指摘の とおり、非正規職で工場を埋め、労働強度を高めて賃金を下げた結果」とし、 「経営者には利益という形で戻ってくるのだろうが、その利益はドンヒオート の20、30 代青年労働者たちが重い病気にかかり、未来の希望もなく機械のよう に働いても、いつクビになるかわからない不安な生活を送る代価」と話した。

「中央日報が経済危機の新しい代案としてドンヒオートのような低費用高効率 経営を提示したのかもしれないが、非正規職労働者の立場としては、最悪の死 の工場だ」とも付け加えた。

イ・ベギュン氏も「起亜自動車の全ての赤字をモーニングが埋めるほど大ヒッ トしているのに、労働者たちは3年たっても最低賃金とほとんど変わらない賃金 しか受けとれない」とし「会社の社長が見れば、最適な低費用高効率の工場か もしれないが、われわれ労働者としては一番頑張って働いてもまともに労働の 価値を待遇されない会社」と吐露した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
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