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公共性に基づいた労働社会新しいデザイン、障害者労働権代案で議論を

「利益ではなく、何が価値ある活動なのかの論争で障害者労働権パラダイムを変えろ」

ハ・グムチョル ビーマイナー記者 2018.05.13 21:18

全国障害者差別撤廃連帯をはじめとする障害界団体は、 昨年11月21日から今年2月13日まで、何と85日間、 韓国障害者雇用工団ソウル支社で占拠座り込みした末に、 雇用労働部と障害者労働権保障のための公式交渉テーブルが作られた。 核心的な議題は障害者公共雇用1万個導入。 これは今まで最低賃金制からも死角地帯に置かれるなど、 障害者を資本主義労働市場の例外的な存在として扱ってきた経済システムに対抗する要求で、 これまで価値を認められなかった障害者の多様な活動を「公共雇用」で認めろということだ。

これまで、障害者労働権に関する論理を先導的に提起してきたビーマイナーのキム・ドヒョン発行人は、 こうした要求を出発点として障害者労働権議題を単に既存労働市場への参加を越えて、 新しい公共市民労働体制を作るところに進まなければならないと主張した。 5月11日、汝矣島のイルムセンターで開かれた韓国障害学会春季学術大会で、 キム発行人はこれが単に障害者問題だけに限らないとし、 窮極的には「万人のための統合的労働社会のユニバーサルデザイン」を作るべきだと強調した。

▲キム・ドヒョン ビーマイナー発行人[出処:ビーマイナー]

キム発行人は「これまで障害者の労働懸案でもバリアフリー(Barrier Free)、 つまり障壁を除去しようという問題意識で接近してきたが、 障害者に標的化された政策を作って障壁を除去する方式では、 実質的な労働権保障にならない」とし、 社会を大きな枠組みで新しくデザインする構想が必要だと暗示した。

キム発行人は「経済という言葉は本来『経世済民』、 つまり世の中を治め、人民の人生を救済するという意味の言葉だ。 英語のエコノミー(economy)もやはり家庭の暮らしを意味するギリシャ語の『オイコノミア(oikonomia)』からきた」という点を想起させ、 「東洋と西洋を問わず、経済とは本来、暮らしの問題であった。 しかし近代社会になると、経済が金儲けの問題に縮小され、 利益を創出する活動だけが労働と認定されている」と指摘した。 換言すれば、社会的に価値ある活動に代価を払うのではなく、 代価の支払い受ける活動だけが価値あることだと評価される転倒現象が起きたということだ。

しかしどのような活動が労働なのかを決定すること(代価を払うこと)は、 単に市場の法則によってなされるのではなく、 イデオロギー的で文化的な「認定闘争」の過程によりなされる。 したがって、これまで完全な価値を認められず、 適切な代価の支払い受けられなかった活動(家事労働、ケア労働など)を労働と認めるための具体的な認定闘争が必要な状況だ。

キム発行人はそのために既存の労働連係福祉(workfare)の論理で運営される 「公共勤労」と「社会的雇用」の概念を受け入れ、 これを極端に押し通す試みを提案した。 「社会的雇用」とは、利益とは無関係に社会的に価値があることに対して公共が代価を提供する雇用だと解釈されるが、 人々にとって十分に魅力的な「よい雇用(decent job)」にはなっていない。 その理由としてキム発行人は、まずこのような仕事に支払われる代価が極めて最小限にしか提供されていないこと、 次にそのような社会的雇用の目録に入る活動を国家が一方的に決めることをあげた。

そしてキム発行人はドイツの社会学者ウリッヒ・ベック(Ulrich Beck)等の議論を使い「公共市民労働」という概念を提案した。 韓国の憲法では、労働は教育と同じように国民の権利であり、同時に義務でもある。 何が権利であり、同時に義務として保障されるためには市場に任せてはならず、 基本的に公共がその責任を負わなければならない。 そのため教育には義務教育制度があるが、同じように一定の年齢以上のすべての人々に基本的に公共が労働の機会を保障しなければならないということだ。 キム発行人はこうした原則は1947年にILO(国際労働機構)が発表した 「国際労働機構の目標と目的に関する宣言」に含まれる最初の原則(「労働は商品ではない」)という点も強調した。

彼は「昨年基準、韓国の常用職労働者平均賃金が360万ウォン程度だが、 少なくともその半分程度の180万ウォンを初任給賃金として払う雇用を公共領域で提供し、 その仕事の種類も国家が一方的に決めるのではなく、 市民が集団的に決めなければならない」と主張した。

彼が提示した具体的な制度設計は次のようなものだ。 市民が申請した活動が公共市民労働に適したものかは地方自治体単位で組まれる公共市民労働委員会を設置して審議し、 この委員会には地域の女性・性少数者・障害者・老人・移住民などの少数者を2/3以上参加させる。 また、委員会とは別途に基本的な行政業務を総括するために、 中央と地方に公共市民労働庁を設置する。 委員会の審議基準は「該当人が持つ顕在的な条件および能力」に照らして 「地域社会構成員の物質的・精神的・情緒的人生に寄与」するかどうか以外には他の何も存在しない。 例えば、最重症の寝たきり状態にある人の場合には、 彼らの生存活動自体も労働として認められるということだ。 彼の生存活動は彼と関係を結ぶ社会構成員に相当な精神的・情緒的価値と意味を持つためだ。

キム発行人はこうした構想は単に障害者だけの政策ではなく、 女性の家事労働認定、青年失業解決などにも影響を与え、 「こうしたように公共市民労働の適用集団が順次拡大し、 労働に対する定義と観念が一定に再構成されるなら、 基本所得制度の導入も併行して推進できるだろう」と明らかにした。

▲11日に開かれた韓国障害学会春季学術大会で公共市民労働を主題とする討論が進められた。[出処:ビーマイナー]

全州大学校のチェ・ボクチョン教授はキム発行人の発表に概して同意しつつも、 いくつかの疑問点を提起した。 チェ教授は「発表者は生存活動そのもののように不備な活動でも労働と見なすことができるという立場だが、それが果たして妥当なのか疑問」とし 「例えば、赤ん坊が生きていくことを労働と見なすことが、 労働をめぐるこれまでの多くの制度や政策に照応できるだろうか?」と反論した。

続いてチェ教授は労働問題を考える時、障害者は相互矛盾した2種類の論理を立証しなければならない境遇に置かれるという点に言及した。 第一に「障害者=無能力者」という社会的偏見に対抗して障害者の能力を立証しなければならず(障害者の特殊性希薄にさせること)、 第二に基本的な所得保障を受けるために労働能力が欠如していることを他人に証明(障害者の特殊性を表わすこと)しなければならない。

チェ教授はしたがって 「障害者労働をめぐる二重の権利が同時に具現される必要がある」とし 「障害者の労働市場参加拡大は、相変らず重要な権利として認められなければならず、 そのために制度も強化されなければならないが、 労働市場に参加せずに存在そのものとして正当な所得を受けて生きていく権利を保障することも保障されなければならない」と主張した。

グローバル政治経済研究所のチャン・ソクチュン企画委員はキム発行人の主張に全面的に同意する立場を示し、 「公共市民労働」の案が基本所得制に進む履行戦略として大きな意味があると伝えた。 チャン企画委員は、ただし憂慮される点として 「何を『公共市民労働』として認めるのかという時、 その手続きはかなり対立的で官僚的な抑圧が行使される。 もちろん、発表文はこれを考慮して市民社会が認定の過程を主導するように設計したが、 過去の英国の救貧委員会も地域市民社会が参加したが烙印と排除の機構として機能した前例がある」と指摘した。

チャン企画委員はまた 「提案されたように、幅広く柔軟に公共市民労働を認めるようになれば、 認定の過程自体が、あえてなくてもいい要式的な手続きや、行政力の浪費になりかねないという逆説が存在する」とし 「ハンコを受ける手続き」なく、ただ基本所得を受け取れれば良いのではないかという反論も提起されると指摘した。

しかし彼は「基本所得論者の楽観的な認識と違い、 韓国社会では賃労働こそが労働だという通念が根深く、 何が社会的に必要な活動なのかに対する論争と対立、 新しい合意に達した後に完全な意味の基本所得制に進めるだろう」とし 「公共市民労働構想は遠い未来ではなく、 政策代案を整える議論の良い出発点になるかもしれない」と明らかにした。

キム・ドヒョン発行人はまとめ発言で 「今までこうした主張を障害界の中だけでしていたので、 政府は既存の障害者福祉雇用程度だけを考える傾向があった。 それで労働権全般に対して考える(障害界以外の)団体も一緒に考えてほしい」と要請を伝えた。[記事提携=ビーマイナー]

付記
この記事はチャムセサン提携言論ビーマイナーの文です。

原文(ビーマイナー/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-05-21 04:53:48 / Last modified on 2018-05-21 04:53:52 Copyright: Default

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