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復元すべきは社会的対話ではなく労働者の権利だ

[連続寄稿]傾いた運動場と社会的対話(2)

チェ・ウンシル(全国不安定労働撤廃連帯法律委員長/公人労務士) 2019.01.15 12:42

経社労委参加は提案ではなく民主労総に対する社会的圧迫だ

しばらく前まで、労働者-使用者-政府が出会う場は労使政委員会だった。 しかしある瞬間、労使政委員会はなくなり、すっかり経社労委という単語が覆った。 経社労委は従来の労使政委員会から名称を変更した機構で、 2018年5月28日に労使政委員会法を全面改正して経済社会労働委員会になった。 経済社会労働委員会は社会的対話機構の「範囲を拡大」して多様な社会階層の主体が参加できるように変更したという。 しかし常に範囲を拡大するのが良いことだろうか? 労働の重要な議題がさまざまな事案の中で「水割」になるのではないのかという憂慮を拭えない。

[出処:労働と世界ピョン・ベクソン記者]

まず経済社会労働委員会の紹介を調べよう。 経済社会労働委員会は、社会的対話について 「社会経済政策に利害を共有する政府、使用者、労働者代表が参加するすべての形態の交渉、諮問、情報交換」だとし 「公共政策の決定過程に労使の参加を意味する社会的協議よりも広い概念」で、 「企業、産業、地域政府、国家水準に至るまで、 労・使・政間の多様かつ多面的な公式または非公式な接触を含む」という。 またそのための基本条件として 「結社の自由と団体交渉を含む労働基本権が尊重されなければならない」とし、 そのために国家は 「労使団体が不利益の心配なく自由に行動し、決定できる安定した政治・社会的環境を造成」しなければならず、 「主導的行為者ではない」が「社会的対話の手続きを積極的に奨励」すべきだという。

しかし、果たして現在の韓国の労働組合の状況、労働者の状況を考慮しると、 社会的対話のための基本的な条件がみたされているのかは疑問だ。 民主労総、韓国労総をはじめ、全体労組組織率が10%ほど、 非正規職の労働組合組織率は最近は良くなって2%ほどという状況だ。 また非正規職労働者と特殊雇用労働者をはじめ、 多くの労働者が労働組合の結成から解雇/いじめという不当労働行為と雇用労働部の不承認が幅をきかせ、 労働組合の団体交渉権は窓口一本化手続きで封鎖され、 ストライキは必須共益事業場制度、下請事業場は元請の代替人員使用、職場閉鎖、各種民事刑事上の処罰で犯罪視されるのが、 この国の労働権の赤裸々な状況だ。 果たして経済社会労働委員会が語る社会的対話のための「基本条件」はみたされているのか?

経済社会労働委員会は公共政策の決定過程に参加するわけでもなく、 諮問-情報交換的な形態に過ぎず、 多面的な公式または非公式の接触を含む概念であり、強制ではない。 対話に参加するかどうかは経社労委に参加する資格が付与された労働組合の自律と判断に任せられている。 しかし現在、報道機関と政府、国会、企業だけでなく、 一部の労働団体までが民主労総の経社労委への不参加をめぐり罪人取り扱いしている。 早く経社労委に参加して、はやく差し出すものは差し出し、受け取るべきものは受け取るべきで、 自分の利益だけ得るために既得権労組の利益に没頭し、社会二極化をあおり、 経社労委に参加しないという攻撃をはばからない。 これは提案ではなく強制だ。

経社労委で議論されるものはいったい何か

では、なぜこれほどまで「社会的対話」への参加を強制しているのか? これを理解するためには、社会的対話でどのような内容がやり取りされているのかを調べる必要がある。

まず経社労委の構成を調べよう。 経社労委には既存の労使代表者に加え 「青年、女性、非正規職、中小企業、中堅企業、小商工人の参加を拡大」した。 しかし、新しく労働者と使用者の代表が追加されたのではなく、 これまでの代表者の配分を分けただけだ。 合計18人の委員のうち、勤労者代表は5人で民主労総、韓国労総の代表者と 青年代表1人、女性代表1人、非正規職代表1人でTOは満杯になったといえる。 残りは政府を代表する委員2人と公益を代表する委員4人、 委員長と常任委員で、労働者代表5人を除いた残りの委員は合計13人になる。 使用者代表5人、労働者代表5人と政府/公益/専門家7人の構成は妥当で公正なのか?

大韓民国は資本主義社会で、 建設以来、労働者や労働組合を保護したり強化した例は見つけるのが難しく、 むしろ使用者側で使用者を強化して経営しやすい国を作るために積極的に努力してきた。 時には親労働者的な政府ができて労働者の政府を標榜したが、 むしろそのたびに非正規職法の立法、派遣法導入、社会二極化深化など、 労働市場の柔軟化が強化された。 こうした状況を考慮する時、 今の経社労委の構成は、労働者代表5人に対して反労働者代表12人の構成だと見てもよい。

次には経社労委の議題を調べよう。 現在、経社労委は非常に複雑な委員会体系を持っている。 特別委員会と議題別委員会、業種別委員会に加え、 社会各階層関連の委員会に研究委員会まで存在する。 特別委員会の中には国民年金改革と老後所得保障特別委員会があり、 業種別委員会には金融産業委員会と海運産業委員会がある。 一番活発な活動をしている委員会は議題別委員会で、 労働時間制度改善委員会を除けば昨年7月から議論を始め、 労使関係制度慣行改善委員会はこれまで合計12回の全体会議を開き、 2019年1月以内に所期の結果を導くという抱負を明らかにした。

デジタル転換と労働の未来委員会と社会安全網改善委員会はそれぞれ11回、 産業安全保健委員会は9回の全体会議を開いた。 労働時間制度改善委員会は昨年12月に始まって、すでに3回目の議論をしている。 19年1月現在、最大の争点になっている状況は、 まさに労使関係制度慣行改善委員会(以下『労働開発委』)で議論中の ILO協約批准に関係する事項と 労働時間制度改善委員会で議論中の弾力的勤労時間制拡大に関する事項だ。

昨年、労働開発委ではずっと使用者団体は労働開発委内でILO結社の自由に対する 「代価」として代替労働の許容、使用者不当労働行為に対する処罰規定削除、 労働組合の不当労働行為新設、事業場内争議行為禁止、団体協約有効期間延長(3-4年)、 争議行為の賛否手続きの要件強化、 団体交渉対象明確化(人事経営事項、政治的問題を交渉対象から除外することを明示)、 職場閉鎖要件の緩和(予防的職場閉鎖の許容)を主張した。

こうした使用者団体の主張は遠慮なく労働三権を無力化するどころか、認めないという主張だ。 使用者団体の主張の水準がこれほどだが、労働開発委はこうした主張をとても真剣に検討している。 その上、公益委員案は使用者の主張を受け入れるのに終わらず、 公務員の団結権と団体行動権、そして教員の団体行動権制限を維持しているだけでなく、 特殊雇用労働者の労組をする権利についてはどんな立場も提示せず、 元請に対する労組する権利についてもやはり言及していない。

最近の労働開発委全体会議の議事録を読むと、 特殊雇用労働者の労組をする権利について内部的な意見の差が大きく、 意見を狭めるためにやむをえず案件から除外したという。 誰の意見の差か? 労働界が決して受け入れられない使用者側の主張は全て含まれているが、 労働界の要求は意見の差を理由に除外されているこの状況で、 労働界が引続き経社労委に参加することが、参加を強要されることが 果たして正しい「社会的対話」で、社会的交渉の枠組みなのかという疑問を感じる。

労働者に必要なことはその声に耳を傾けさせる「力」だ

昨年12月5日、与野政国政常設協議体は突然、弾力的勤労時間制拡大適用に合意するという合意文を発表した。 その後、経社労委は迅速に労働時間制度改善委員会を作って議論を始めた。 最初に弾力的勤労時間制拡大に言及してからわずか1か月ほどで 経社労委は労働時間制度に関する海外事例発表についての結果発表を終わらせ、 1月末までに弾力的勤労時間制単位期間拡大に対する議論を終わらせるという立場を発表した。 こうした迅速な進行と立場の発表を主導しているのは誰か?

[出処:チャムセサン資料写真]

弾力的勤労時間制の拡大により、勤労時間短縮による被害を最小化して、 延長勤労手当てなどの加算手当ての支払いを最小化したままで、 労働をさらに柔軟に使うという使用者団体の立場を政府は積極的に受け入れて主導している状況だ。 労働時間制度改善委員会には現在、民主労総の参加拒否で労働界代表として韓国労総代表1人だけが参加している状態だ。 使用者団体が弾力的勤労時間制単位期間の拡大に死活をかけて総力を傾けており、 政府と国会が支持している状態で、 果たして現行の議論構造と民主労総の参加強制は公正なのだろうか? 労働者を死地に追い詰めて自分の意に従わないと駄々をこねるのは、 むしろ政府と使用者団体だ。

現在、ILO批准をめぐる議案と弾力的勤労時間制単位期間拡大の議案は、 議論している委員会も別で、議論の時期も完全に違う。 それでも現在、二つの案件はまるでパッケージのように扱われている。 マスコミは絶えず労働界がILO結社の自由協約批准という成果を取るのだから 労働基本権と弾力的勤労時間制度を譲歩しろという。 しかし、ILO協約批准は労働界が譲歩する事案ではない。 すでに何度も政府はILO協約批准を国際社会に約束した。 約束を履行すれば良いのに、なぜ労働界に譲歩しろというのか? ILO協約批准は履行すべき問題であって、 労働基本権や弾力的勤労時間制単位期間拡大と交渉する事項ではない。

政府と使用者団体は、社会的合意という名前で労働者の権利を奪った。 1996年、金泳三(キム・ヨンサム)政府の時の労使関係改善委員会も、 1998年以後の労使政委員会も同じだった。 社会的合意の過程での労働組合の反論は、いつも組合利己主義と批判された。 そして現在、経社労委は民主労総が社会的対話を拒否し、 また既得権労組の組合利己主義だと言って、同じ主張を繰り返している。 20年間、労働組合と労働者たちは、社会的対話と合意という「見かけ」にだまされて後退し続けた。

今、政府で社会的対話に参加しろと主張する人々に問う。 すでに親資本的な動きを表面化している政府に対して、 労働尊重を繰り返して言う政府に頼り、 資本の願いを一つ一つかなえている今のこの時点で、 経社労委は果たして違うと言えるのだろうか? 社会的対話以前に、労働組合が自分たちを代表し、 労働者として発言する権利を持つために、 まず回復すべきことは見かけが良い社会的対話の復元ではなく、 労働者が自ら組織して闘争する権利ではないか? 本当に必要なことは「対話」ではなく、 むしろ労働者の声に耳を傾けさせる労働者の「力」ではないのか?

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-01-17 04:53:53 / Last modified on 2019-01-17 04:53:54 Copyright: Default

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