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キャンドル1周年を前に…文在寅政権の共は誰か?

[政治コラム]文在寅政権を越えて本当に「目覚めた政治主体」になろう

イ・グァンイル(聖公会大) 2017.10.10 17:17

文在寅(ムン・ジェイン)政権は、うまく政治をしているのだろうか。 まだ5か月しか経っていないのに、何の評価をするのか、もっと見守ろうという言葉は少なくない。 まだ評価できることもあまりないのに、むやみに言葉尻を捉えるなという言葉も聞こえる。 政治を歴史の特殊な関係の産物と見るよりも、具体的な政策の投入とその結果を算出するブラックボックス程度に見ているからだろう。

政治とは何か。 意見の差はあるとしても、既存の社会関係、それに内在して作動する権力関係をどのような姿にしていくのかをめぐって行われる理論と実践での目的意識的な争闘だ。 もちろんこの時、既存の関係は非対称的で不均等なので、それらの関係を過去に戻そうとする守旧(極右)、 現在を維持しようとする保守、そしてそれを変えようとする進歩が今なお残り、互いに競合するのは自然だ。 もちろん、進歩も一つではないので、その中でも緊張と対立は持続する。

こうした脈絡で「見守る」ということは、どんな意味を含蓄するのか。 しばしば「後で会おうという人は恐ろしくない」という諺があるが、 政治では後で会おうという言及は注意して聞かなければならない。 その場合、「後で」はどんな意味であれ、ゲームが「一段落した局面」を意味するためだ。 その意図があるかどうかとは無関係に、文在寅政権も労働者たちに1年の時間をくれと言った。 文在寅政権、その支持者、そして彼らと蜜月を夢見る社会政治勢力にとって、 1年はとても短い時間かもしれないが、ある人にとっては1日が1年、いやそれ以上に感じられたりもする。 その間にいかに多くの人々が切迫した状況で悲痛な生活を送らなければならないだろうか。 既存の関係を再構成するための、政治が生死の境を画定することと同じだという点を知っているのだろうか。 さもなくば、あまりにもよく知っているが、「財産と教養を持った人たちを代弁する彼ら」だから、ただ余裕を持っているのだろうか。

[出処:チャムセサン資料写真]

「人が優先だ」、文在寅政権がこの社会の構成員を保護してくれるのか

去る2012年の大統領選挙の時に、文在寅候補は 「理念、成功、権力、開発、成長、家、学歴よりも『人が優先の世の中』を国民の皆様と共に作りたい」、 「初めも『人が優先』であり、最後まで『人が優先』の世の中のために、いつも謙虚な扉になる」と話した。 そしてキャンドルの力を背に負った2017年の選挙で「国らしい国」を打ち出して「人間らしい世の中」を作ると力説し、執権に成功した。 彼の政治的同志だった盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領もまた 「人が生きる世の中」を話題に掲げたが、事実、そんな社会と国を夢見ない人はいるのだろうか。

だが今この瞬間にもその理念、権力、家、学歴などが人を評価する尺度になっている。 それらのために人生を諦める人は少なくない。 単に物理的に生涯を終えだけでなく、死と変わりない人生を過ごす人々が多い。 だから本当に時間がなくて、社会、国、世の中を作れないのかとまた尋ねるようになる。 文在寅政権が位牌のように大切にする金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の時にそのような機会があり、 すでに韓国の憲政史で最も無能な政権と記録されている守旧李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権の時も、 また過去の執権期の試行錯誤を教訓として、さらに大衆的にアピールできる時間ではなかったのか。

それでも「キャンドル革命」で執権に成功したと自任する政権の口から「待ってくれ」という言葉がためらいもなく流れ出る。 それも自分たちもまたその一軸をになった新自由主義体制20年の支配時期の間、 搾取、収奪、差別、排除され、これ以上退く所を失った人々に対してだ。 自分たちの政治的軌跡を省察せずに「革命」を「人種と節制の美徳」として対峙するような言及が 「未来のためにもっとベルトをきつくしめよう」と言う人々が、 積弊の起源と見なす過去の守旧ファシスト政権、 いや今の守旧社会政治勢力の言葉と何が違うのか。 断言するが、その中にすでに「革命」は消えてなくなった。 それで彼らが語る改革も、息をつくことも容易ではないが、 現実の歴史の中で「革命のようにやらない改革」が成功した例はないからだ。

もちろん、待つかどうかとは無関係に、文在寅政権が「人が優先の社会」を作るという点に関しては疑わない。 ただ蛇足を付け加えなければならない。 すべての人が皆同じ人だったことは過去にもなく、今現在にも、そして未来にもないという点だ。 つまり、人は「超歴史的な存在」ではない。 それで文在寅政権のそうした抱負は、 理念、権力、家、学歴などの基準で一定の資格を持つ人だけが、人として扱われるようになると、あらためて公表するのと同じだ。 そのだけではない。 障害、性同一性、皮膚の色、民族、国籍などによる差別と排除が緩和されることを望んでいるが、 むしろさらに露骨になっているのが今の現実だ。 文在寅政権が語る「非正常の正常化」が 「正常化すべきもうひとつの非正常」だという点をあらためて十分に噛みしめるべき理由だが、 それは現実の中で自己否定するしかない「民主主義の運命」を確認すること以上のものではない。

さらに一枚皮をむいて質問してみよう。 新自由主義グローバリゼーション時代の国家、すなわち「新自由主義競争国家」がすべての人を保護できるだろうか。 「誰が誰を保護するのか?、国家が市民を?」という、さらに本質的な問題は置いておくとしても、歴史に存在したどの国家も社会構成員すべてを保護したことはなく、 国境の内外の誰かを絶えず他者化して、再生産されてきたのは事実だ。 それでも見逃してはならないのは、この時代の国家が近代以後の核心イデオロギーとして機能してきた「国家中立性」さえも投げ捨てたという事実だ。 こうした事実は、その「国家中立性のイデオロギー」が近代以後の労働者階級など貧しい大衆の至難な闘争の産物であったという点に着目すれば、 そもそも国家の核心遺伝子だったが押さえつけられてきた階級性、家父長性、自然収奪性という性格が公然となったことを意味する。

文在寅政権もまた例外ではない。 歴史の中の多くの自由主義政治勢力のように、文在寅政権が始終一貫して「人が優先の社会」を語るのは、 彼らの専売特許である「自由」に符合するからだ。 だがその言及の裏には「人だと言ってもみんな同じ人ではない」という秘められた言葉が記されているのもまた、もはや秘密ではない。 彼らが自任するいわゆる「キャンドル革命政権」が作動している今この瞬間にも、 少なからぬ人々が相変らず「犬、豚」と見なされて、そのように扱われているのだ。 それは誰か。 女性、非正規職労働者、そして何よりもその上に移住者、障害者、性少数者(LGBT)等のタイトルがつけられた人々だ。

[出処:青瓦台]

「秩序自由主義」の実現、「政治貧困」の見通しが暗くなった夢

文在寅政権の核心目標は「秩序自由主義」の実現だ。 特にそれは一方では過去の金大中政権のモットーだった「民主主義と市場経済の併行」という言及の継承を、 他方ではそのモットーとは違い、市場万能主義に進んだことに対する「自己批判」を含蓄している。 もちろん、そこでは民主主義は国家の法制度的な介入による市場での「公正な競争秩序造成」、 それによる機会均等の向上を意味する。 これが彼らが語る「非正常の正常化プロジェクト」の核心だ。

では、そうした企画はどんな政治的な問題を持たらすのか。 生活の危機に瀕した人々が、 彼らが文在寅政権が福祉予算を増やし、雇用構造を改善しようとしていることについて、 そして所得主導の経済成長を目標としていることについて好感の関心を持って拍手するのは自然だ。 自由主義政治勢力の限界を認知している進歩的な社会政治勢力の中で、少なからぬ人々が彼らが文在寅政権の「真情性」を信じて支持、協力しようとしていることも理解できる。 事実、全てを別として、特定の理念、態度を準拠としてブラックリストを作り排除し、 さらに一歩進んでその社会構成員の存在自体を否定する守旧ファシストよりも、 理念の多様性を認める自由主義者の執権が肯定的だということを否定する人がどこにいるだろうか。

それでも文在寅政権の政治を冷静に見なければならないのは、 この政権が秩序自由主義の実現を民主主義そのものと信じているという判断のためだ。 秩序自由主義的な改革を実現するために必要な最低の条件が政権の改革の意志ではなく、 その意志を裏付ける政治的な力、すなわち「人民の自己統治性」を向上させるための新しい社会関係、政治関係の造成にあるが、 ことにも文在寅政権はその課題をしばしば背面に押しやろうとしている。 自らキャンドル政権だと話しながらだ。

だが、少し過去に戻ってみよう。 「民主主義と市場経済の併行」という金大中政権のモットーが失敗に終わり、 結局、盧武鉉政権期になって「サムスン共和国」になったという、 相変らず生々しく残っている記憶のことだ。 何のためにそうなったのか。 既存の社会、権力関係を再構成するための争闘の政治、その核心の民主主義のための闘争を制度的なものに還元させてしまったためだ。 つまり、大統領弾劾を無力化させたキャンドル大衆の力を社会、政治変化の基盤とするのではなく、 既存の守旧政治勢力と妥協して問題を解決しようとしたからそうなったのだ。 人民の力がその上にあることを忘れ、自分たちを支える大衆的な力を自ら破壊したためだ。 こうした脈絡で、執権末期に盧武鉉元大統領が 「目覚めた市民」を強調したのは非常に逆説的だが、 本当に目覚めなければならなかった時に目覚められなかったのが、 まさに彼が象徴する当時の執権勢力だったためだ。

では「民主政府3期」として、金大中盧武鉉政権の赤子を自任する文在寅政権に尋ねよう。 2017年の「キャンドル革命」を起こした大衆は「目覚めた市民」なのか、そうではないのか。

文在寅政権を越えて新しいキャンドルを作ろう

文在寅政権は「キャンドル革命の産物」であることを何度も強調している。 キャンドルがなければ、執権は容易ではなかったという点で、その評価は適切だ。 それだからか、自称「フェミニスト政権」、「労働者を代弁する政権」であることを掲げ、 それに呼応して少なからぬ組合主義的フェミニスト、労働活動家の支持を受けているのも事実だ。 そして相変らずそうした期待は冷めずにいる。

だが他方からは、文在寅政権が「キャンドル革命を裏切っている」という批判の声が聞こえ始めている。 もちろんそうした批判は修正される必要がある。 文在寅政権はキャンドル蜂起を裏切ってはいない。 単にキャンドルの要求のうち、一部を変形、受け入れて、他の何かの要求を排除しているだけだ。 当初、キャンドル大衆は均質な一つの岩塊ではなく、 異質であり、その要求も相異なるものだったからだ。 既存の制度政治勢力と分離できないキャンドル大衆の中で、すでに「政治」は進行中であり、 だから非正規職撤廃、女性嫌悪反対、財閥解体などの要求が次の順位に押し出されたのではないだろうか。 キャンドル蜂起それ自体が「革命」の制度化と脱制度化の緊張と対立、妥協等を含む過程だったという点で、 そこに「皆の勝利」という名前を付けたとしても、それが「中立の言及」にはならない理由だ。

これが今、文在寅政権が一方では容易な「行政命令」、 他方では守旧野党との妥協により問題を解決しようとする背景だ。 そして、そこから引き起こされる大衆の不満は、いわゆる「共感と疎通」に集約される「イメージ政治」で慰める。 ところが現代の政党政治の危機を象徴する「イメージ政治」は、その意図とは無関係に問題解決能力の貧困を確認させるものだ。 特に民主政権を自任する文在寅政権の場合、 そのすべての動きが守旧李明博朴槿恵政権を対照点として形成されているという点で退行的だ。 既存の「守旧-保守独占の政治」という枠組みを維持しつつ、 「キャンドル政権」という言葉で自分たちの歴史的な誤りと限界を隠してやりすごそうとしているためである。

ところでいつまでそうした下降平準化された動きが通じると信じているのであろうか。 5か月経った今、文在寅政権は単に「改革」の時間を失っているだけだ。 時間をくれと言いながらも、ただ時期尚早、国会での協力政治を強調し、傍観しているだけだ。 金大中盧武鉉政権がそうだったように、 そうした要求を特定の社会政治勢力が自分たちの利益を極大化させようとする過度な要求として片付けながらである。

文在寅政権が語る「革命」が何であれ、 それは既存の関係を変化させることを核心とするほかはないが、 そこで重要なことは「恩恵授与的な政策」ではなく、 社会の構成員を市民人倫を持つ政治主体に立て起こすために必要な措置だ。 労働三権などの労組する権利の保障、さらに市民的普遍性を確認する差別禁止法の制定、 そしてそれらの変化を政治的に担保するドイツ式の比例代表制導入などが必要な理由だ。 もちろん、今のこの状況を文在寅政権の責任で処理することができないことがわからないわけではない。 差別禁止法、労組をする権利、政党名簿比例代表制などの完全な実現は、誰かが先頭に立ってすることができることなのだろうか。 どの時代のどの権力が、大衆の自分統治を向上させる措置を自ら発動したことがあるのか。 それらの実現は常に自分統治を望む彼らの役割に残っているだけだ。

それでも最後に問いかける。 文在寅政権、あなた方の「政治的な友」は誰なのか。 差別禁止法、労組をする権利、政党名簿比例代表制などに賛成、支持する人々なのか、 さもなくばそれに反対、嫌悪する人々なのか。 どの道を歩むことが「人が生きる世の中」、「国らしい国」に符合するのか。 この質問をするのはいつも「歴史の重さ」を強調するあなた方の政治的運命はもちろん、 あなた方との政治的関係、この社会の構成員の現在-未来の生が関わっているためだ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-10-16 22:48:37 / Last modified on 2017-10-16 22:48:39 Copyright: Default

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