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〔週刊 本の発見〕『まちは言葉でできている』(西本千尋)
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毎木曜掲載・第413回(2025/11/27)

まちを守り、つくる言葉を一緒に探す

『まちは言葉でできている』(西本千尋 著、柏書房、2025年10月刊)評者:大場ひろみ

 この本のタイトルはイメージで捉えにくい。実際読んでみると、とても平易な言葉を選んで書かれているのに、まちを言葉でとらえるのがどんどん難しくなっていく。その困難さによって、実は自分たちの町を自分たちの町でないようにさせられていくのだと、まずこの本は訴える。例えば、再開発計画における行政の言葉には、「わたしたち」のような主語(主体)がない、と。神宮外苑の再開発における「まちづくり」の目標を例にとって、著者はこう書く。

 「三つ目の目標にようやく『誰もが利用しやすく』と出てくるが、『誰もが』という用語はわたしたちひとりひとりを『主体』とし、各々をユニークな個人個人とみなすというよりかは、その実わたしたちがみな誰かに用意されたまちの従順な利用者で、管理の対象であることを意味するように思える。資産価値の拡大を図りたい大規模地権者と財政難である行政の利害が合致し、主体なき匿名的な権威によって、まちの色が塗り替えられようとしている。」

 ほら、なかなか過激なのだ。著者は「『過去』や『他者』に居場所を与えるような『まちづくり』にこそ未来があるのであって、そうでない『まちづくり』に未来はないと思っている。だから今、『言葉』を探そうとしている。」つまり、一緒に主体として、「まち」について考えることを読者に促している、とても手厳しい本だ。

 読者に厳しい著者はまず自分に対して厳しい。元々再開発を推進する立場にあった著者は、新宿のオープンカフェの開店時にホームレスの排除を命じられる。「安心で安全で快適な空間づくりのために自分たちがしてきたことが、崩れた瞬間だった。」

 著者は違う言葉をさがしだす。
 例えば、自身の生まれ育った川越の町の住民が、マンション(著者の生まれ育った所だ!)建設を機に専門家と一緒に作った『町づくり規範』に。

 例えば、銭湯を中心としたある地区のマップに描かれた「地下水でつながる地域の関係図・資源図」が示す、地下水というコモンズ(共有財)に。

 例えば明石市で泉房穂前市長が先導した『すべての人が自分らしく生きられるインクルーシブなまちづくり条例』に。しかしその市政の成果として、「10年連続人口増」「地価7年連続上昇」「税収8年連続増」…等の「経済的効果」をあげなければいけない(と思わせられている)社会にぐっと唇を嚙む。そして条例の理念を祈りのような「言葉」だと思う。言葉をつくり、守るには妥協はないという、著者自身に対する規範を見る。この人はもう二度とホームレスを排除するようなことをしないと自分に銘じているのだ。

 だから小タイトルはそれ自体が金言のようだ。
「都市の暴力は『みんなのため』に始まる」
「『規範』のなかにある自由」
「『公共の福祉』による換金不可能なものの剥奪」
「もっとゆっくり復興したかった」
 それぞれの持つ意味は是非本書を実際に手に取って確かめてほしい。


Created by staff01. Last modified on 2025-11-27 08:09:19 Copyright: Default

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