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〔週刊 本の発見〕『就職氷河期世代〜データで読み解く所得・家族形成・格差』 | ||||||
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データで次々覆される「通説」と、見えてきた全体像『就職氷河期世代〜データで読み解く所得・家族形成・格差』(近藤絢子・著、中公新書、本体880円、2024年10月)評者:黒鉄好
「生きさせろ!」(雨宮処凛、2010年)や「希望は、戦争。」(赤木智弘氏の雑誌寄稿、2007年)のように、この世代の手によりセンセーショナルな刊行物は多く世に出たが、それらの「多くは個別の事例を取材したルポルタージュであり、世代の全体像をとらえたものは意外と少ない」(本書「まえがき」)ことは私もかねてから気になっていた。 氷河期世代に関する研究は緒に就いたばかりであり、この世代の実態を明らかにするのに最適なデータなどもとより望むべくもない。そのため本書では労働力調査、賃金基本構造統計調査、就業構造基本調査など、他の目的のために作成された公的統計から得られたデータを、まるでパズルのピースをつなぎ合わせるようにして、断片から全体へ迫っていくという手法が随所で用いられている。この手法は大変な面倒さを伴う反面、そのピースをつなぎ合わせる作業の過程で、本人が意図した範囲を超え、本書の主題でないため述べられていない多くのことまで証明されてしまう楽しさもある。 就職氷河期世代に対して多くの人々が抱いていた先入観や通説の多くが本書によって覆される。「前後の世代と比べて就職氷河期だけが極端に不遇だった」という通説などはその典型である。実際にはバブル世代より下の全世代で、同年齢時点における所得が上の世代より少なく、上層と中間層との所得格差よりも、中間層と下層とのそれのほうがより大きくなっていることもデータで示されている。就職氷河期世代は問題の始まりに過ぎず、ここで発生した低賃金、非正規化、貧困層ほど所得が低下する「下に向かっての格差拡大」などの諸問題は何ら解決しないまま、その後の全世代に引き継がれていたのである。 40歳までに生んだ子どもの数では、氷河期後期世代(1999〜2004年卒)の女性のほうが氷河期前期世代(1993〜1998年卒)の女性より上回っていたことも意外性をもって受け止められると思う。これらの事実を知ったとき、ほとんどの読者はこの間、日本政府が就職氷河期世代や、それより下の世代に対して打ち出してきた「再チャレンジ」などの政策や少子化対策の多くが失敗に終わったことに納得感を持つだろう。そもそも少子化対策を実施すること自体に意味があるかどうかさえ、本書を読み進めるうちに怪しくなってくる。日本はもはや少子化を抗いがたい現実として受け入れ「社会の幸せな縮小方法」を模索する以外にないかもしれない。 近藤さんは、むしろ氷河期以下の世代で既存の貧困対策から漏れている人々(一例として、生活保護水準より少し所得が上の現役世代が挙げられている)に向けた包括的なセーフティネットの導入や介護サービスの拡充を提案する。再就職支援などの既存の枠組みではすでに手遅れになりつつある就職氷河期世代に対しては、もとより他に方法がなく、賛否以前の問題として直ちに実施すべきである。データに基づく実証的な手法で、就職氷河期とその後の世代の全体像を明らかにし、対策を提案した本書の意義はきわめて大きい。 Created by staff01. Last modified on 2025-07-03 07:44:18 Copyright: Default |