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〔週刊 本の発見〕『ボリビア・ウカマウ映画伴走50年』 | ||||||
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出会うべき人にたどり着く『ボリビア・ウカマウ映画伴走50年』(太田昌国 著、藤田印刷エクセレントブックス 2025年)評者:根岸恵子
ウカマウ集団というのは、ボリビアで人口の過半数以上を占める先住民の社会的な背景や文化的な重要性を映画によって訴えようとして集まった映画製作者のグループで、1962年に短編『革命』を、66年には長編『ウカマウ』を製作し、以後先住民や鉱山労働者など社会的弱者を主体に映画を撮り続けている。『ウカマウ』はカンヌ国際映画祭で受賞し、内容的にも興行的な成功を収め、彼らは「ウカマウ」と呼ばれ、自ら「ウカマウ集団」を名乗ることになる。ウカマウとはアイマラ語で「そんなふうなことだ」という意味だそうだ。監督はホルヘ・サンヒネスという白人で、スタッフは白人とメスティーソ(先住民と白人の混血)で構成されている。 映画は集団制作という方法で製作され、先住民の経験を聞き書きし、現実の出来事を背景に、実際にそこで暮らす先住民が出演している。また使われる言語もスペイン語のほか先住民の話すケチュア語やアイマラ語で、内容に真実性と臨場感を与えている。 今回の特集上映は新たに日本で上映される2本を含め、14本の映画で構成されている。 著者の太田昌国さんは、いまから50年前、1975年にエクアドルのキトに滞在中、たまたま散歩中の街角で一枚のポスターを見つける。それがウマカウ集団の映画『コンドルの血』であった。太田さんは映画を観て感動し、その映画の資料などがないかと上映会場となった大学の事務室に行ってみた。すると資料はないが監督はキトにいるから連絡すると言われ、滞在するホテルの住所を伝えた。翌日、監督のホルヘ・サンヒネスとプロデューサーのベアトリス・パラシオスが訪ねてきた。長いこと話す中で世界観や歴史観の話になり、太田さんは物の見方や考え方に共通するものを随分と感じたという。以来50年間、ウカマウ集団と太田さんの関係が続いていく。本書はその50年間を太田さんが述懐したものとなって、関係した人々によって書かれたものや太田さんが書いたものを載せている。また、そこには50年間の社会の情勢や中南米の動向が関連性を持って織り込まれている。そこからは太田さんの見識や良識の深さ、経験の多さ、人間関係の広さなど、太田さん自身の生きる姿勢も見えてくる。
上映会の案内には「ボリビア独立200周年/日本との協働50周年記念」とある。半世紀に及ぶ太田さんとウマカウとの協働がなければ、私たち日本に暮らすものがウマカウの映画の作品を全作品観る機会はなかっただろう。それは私たちの世界観を広げてくれたと同時に、私たちが何をしなければならないのかを考えさせられる機会となったはずだ。 私の好きな映画の中に『地下の民』(1989)がある。主人公のセバスチャンはラパスで暮らしていたが、ある時生まれ故郷の村に帰る決意をする。その最中軍事クーデタが起き、故郷では鉱山労働者に連帯し軍事クーデタに抵抗するために人々が鉱山へと駆け付けていた。セバスチャンは訳があって故郷の村を追放されており、故郷へ帰ることは死路に赴くことであった。セバスチャンは過去を回顧しながら帰路を歩いていく。過去と現在が行ったり来たりしながら、だんだん故郷は近づいてくる。 この映画の冒頭シーンで村の長老が「われらが過去は現在の内にあり、過去は現在のそのものです。私たちはいつも、過去を生きつつ同時に現在を生きています」と述べている。監督のホルヘは過去→現在→未来へと、時制が直線的に移行するのではなく、その時間概念は循環的、円環的で、時制は自在に入り混じるのが先住民の精神世界の特徴だと強調していると本書にある。 本書もまた過去、現在を入り混ぜながら書かれているから、なぜかゆっくりとした渦の中で太田さんの経験を再体験しているような感覚に陥る。 ウマカウ集団の映画はどの映画も心を揺さぶられる力強さを感じる。それはこの映画を通して訴えたいものの大きさによるのだろう。太田さんがこの映画を50年も支えてきた理由はそんなところにあるのかもしれない。 太田さんは「書物でも映画でも、出会うべき人にたどり着くと、事態は動くのだ」と本書を締めくくっている。そう世界はそうやって動いていく。 上映は5月23日まで続く。まだ観てない方はぜひ足を運んでウカマウ集団の映画を観てほしい。そうすれば、世界はまた良い方向へ少し動くかもしれない。世界は人々によってしか動かすことができないのだから。 ・映画情報:https://www.ks-cinema.com/movie/ukamau60/ Created by staff01. Last modified on 2025-05-09 11:43:13 Copyright: Default |