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伊藤詩織さんの映画「Black Box Diaries」を観て | ||||||
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西里扶甬子(ジャーナリスト) 伊藤詩織さんのドキュメンタリー「Black Box Diaries」上映と記者会見がプレスクラブであったので、出席。U-PLANの三輪さんに来て貰って短いレポートもアップした。全部英語なので、苦手の人は有名ジャーナリストが色々来ていたので、その方たちのレポートを読まれるといいと思います。 私は関心はあったけれど、この事件をずっと追いかけていたわけではない。自分が生きているメディア・報道(ノンフィクション)の世界で起こった事件として、今の時点に至ってみると思うことが色々あるのでその一部を書いてみた。実はそんな暇ないのに。 1)マスメディアの人間関係の中で起こったMeToo事件であること。男・TBS報道部政治部・ワシントン支局長 そういう地位からくる思いあがりに裏打ちされたセクハラ事件。しかし、何とでもなる小娘という見下しが実は痛恨の誤算だった。差し違える覚悟の詩織さんは、裁判も本(Black BoX)の執筆もドキュメンタリーの制作もジャーナリスト根性で臨んだ結果、Peabody賞を受賞、Academy賞のBest Documentary賞候補にもなっている。相打ちではなく、傷だらけだとしても詩織さんが勝利した。スキャンダルまみれだった「総理」の伝記本作者の方はこの世界で生きてゆく道は残っていない。 2)ドキュメンタリーとは? 数多くのドキュメンタリー作品に関わってきた経験からいえることは、ドキュメンタリーは妥協を繰り返して完成する。制作者は当事者ではないから、事実の一部しか見いだせない。事実の全容は過ぎてしまえば、映像や音声が記録されていても失われる部分がある。公表することに問題も生じて、泣く泣く使用を諦めることは珍しくない。しかしこの作品は制作者は当事者であり、事実そのものである時、簡単には妥協できない。現在では、訴訟社会の欧米は勿論、日本のテレビ局、制作会社でも出来上がった作品に異議を唱えたり、訴訟を起こしたりしないという誓約書へのサインを取材後半に持ち出すというのが普通になっている。ここにサインを拒否された場合は訴訟を起こされれば勝てないかもしれない。人権やプライバシーを守るために法律が現実を追いかけるようにつくられてきた。制作者が用意する誓約書はしばしば制作者側に都合よくできていている。 3)現在の問題 この感動的なドキュメンタリー作品について、激しく批判しているのが、詩織さんのかってのサポーターであった女性弁護士、女性ジャーナリストであるのは残念なことである。彼女たちが問題にしているのは、同意なくドキュメンタリーに使用された証言者たちの人権である。ホテルのドアマンは名前を出してもいいとさえ言っている。捜査員Aについてはその後の状況がわかっていない。その他の事情については長きに渡る事態の経過をフォローしていたわけではないので、言及は控える。ひとつだけ私見として述べたいのは、ホテルの防犯カメラの映像である。それは「防犯」と呼ばれてはいるが、犯罪の証拠となる映像を撮影していたことで、次の犯罪が起こることへの抑止作用を持つとしても、設置現場で起こった犯罪を物理的に止める訳ではない。警察や裁判所からの要請があれば、ホテル側は提出を拒否はできない。それは犯罪者の特定の決め手となるからだ。顧客のプライバシーを守る意味で、犯罪と無関係な事態に利用されるべきではないし、提供されるべきでもない。今回の場合山口氏は顧客かもしれないが、詩織さんがBlack Boxの中で書いているように、同じホテルに客として泊まったことがあるのだから、彼女もまた顧客の一人である。警察も裁判でも強姦という犯罪の重要証拠として認められた映像を加工した上で使用したことには制作者側よりの立場から擁護したい。それは人の記憶や証言に勝る映像の力である。 4)内部告発者 日本では内部告発者はその勇気を讃えられるより、会社や組織に対する裏切り者というレッテルが貼られることが多い。すんでのところで山口氏の逮捕を中止させたのが中村格氏であるとわかっている以上、そのような不正は許し難いという世論が起こる訳ではなく、納得できないと真情を吐露しているA氏のキャリアを危うくしたとして非難されるのは、いかにも日本的現象である。 世の中に向かって内部告発した訳ではなく、詩織さんにこれ以上の追及を諦めさせるために警察の「上」からの指示で逮捕中止となったことを告げたということだとしても、A氏の処遇は気になるところである。この後に及んでも、山口氏は逮捕されないし、その後警察庁長官にまで上り詰めた中村格氏は何のお咎めも受けていない。森友事件に象徴されるように、公官庁において行われ、白日の下に晒された不正行為も犯罪的嘘でなかったことにしてしまう日本においては、これも極めて日本的な現象だと思う。現場の捜査員が捜査を進めて逮捕状まで取り付けた犯人を、すんでのところで見逃せという命令がトップから下されるということが現実にあるのだということを暴いただけでも、被害者でありながらジャーナリストであり続けた詩織さんの功績だと思う。 Created by staff01. Last modified on 2025-12-25 23:36:40 Copyright: Default | ||||||