
*レイバーネットMLから
皆様
中国で植林を続けた遠山正瑛氏のこと、旧制三高の寮歌「通える夢は崑崙の、高嶺の此方
ゴビの原」のこと、トルファンなどの坎児井(カルジン)のこと、奈良・二月堂のお水取
りのことなど、遠く倭国と言われた頃から、この国は深く大陸と繋がっていることを、改
めて感じさせられた。二月堂の「お水取り」(修二会)の先には、遠いシルクロードからペ
ルシャの人々、その生活から生まれた、水を溜め、用水とした伝統技術に繋がるという話
も、歴史的想像力を喚び起こされる。
日本と呼ばれるこの国は、既に一千年以上に亘り、朝鮮半島や西域と言われた地域を含む
ユーラシア大陸の人々との交流、その恩恵をふんだんに受けて来たことを、忘れてはなら
ないだろう。
そう言えば、この国の現在の首相は、就任時、「私は奈良の女です」と、出身地を強調し
ていたが、奈良は朝鮮語のナラ(나라)から来ていることは、多くの人の知ることだ。多く
の渡来人が育て形成した都である。お水取りの伝統に見るまでもなく、そのはるか以前か
ら、大陸と深く繋がっている場所である。「奈良の女」をアピールするのであれば、鹿と
表面的に戯れるだけではなく、自らの歴史を、しっかり想起してもらいたいものだ。
いつもながら学ぶことの多い、宮田律さんの投稿をシェアします。
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中国軍機のレーダー照射問題で日中間の応酬が続いている。中国側は今回のレーダー照射
について、攻撃目標を定める火器管制用でなく捜索目的だと主張し、一方、小泉防衛相は
「問題の本質は中国側の断続的な照射」と批判したが、高市首相が「存立事態」に関する
発言を撤回すれば問題は容易に収拾できる。高市首相は7日、レーダー照射問題について
「航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為だ。このような事案が発生したこ
とは極めて残念だ」と述べたというが、自らの責任を隠蔽するもので、彼女はそのような
発言をする立場にはまったくない。メディアも照射問題を大きく取り上げ、中国を批判す
るのでは両国の緊張を煽ることになることを自覚すべきだ。我々国民は政治家のつまらな
いメンツのために不利益を被りたくない。
「日中友好は、日本の最大の安全保障であり、日中友好は世界平和の条件である」、これ
は自民党の国会議員であった宇都宮徳馬氏の言葉で、高市氏はこの自民党の先輩の言葉を
知らないのだろうか。抑止とか、軍事力の均衡の上に戦争がない状態をつくるよりは宇都
宮氏の発想のほうがはるかに真の平和に近く、莫大な防衛費の必要もなく、国民に税負担
を強いることもない。
「戦争というものはいつでも、なかなかきそうな気はしないんですよね。人間は心情的に
は常に平和的なんだから。しかし国家は心情で動いているのではない。戦争が起きた時に
はもう間に合わないわけだ。強行採決につぐ強行採決、・・・・・・今の政府のやり方を
見ていると、いつどういうことが行われるかわからない。権力はいつも忍び足でやってく
るのです。」
これは作家大岡昇平の『戦争』(岩波現代文庫)の中の一文だが、緊張が高まれば高まる
ほど強行採決が頻繁に行われる事態となる。
高市首相が警戒を寄せる中国も311の東日本大震災の際には国際救援隊の中では最も早
く日本に到着して支援活動を行った。中国は日本に計3000万元の緊急無償人道支援を
行った。国営新華社通信は「四川大地震で日本から支援を受けた恩に報いたい」という記
事を配信するなど日本の被災者たちに寄り添う姿勢を見せた。
中国で植林を続けた遠山正瑛氏(1906〜2004年)は、その活動は中国への恩返し
だったと振り返っている。山梨県南都留郡瑞穂村(現富士吉田市)の浄土真宗西本願寺派
の寺で生まれたが、仏教の伝来も中国との交流によってもたらされるなど日本の文化が中
国の文化遺産の上に成り立っていると遠山氏は考えた。
遠山氏は、「砂漠の緑化は中国への恩返しでもある。昔の日本は中国からいろいろと学び
、それを各分野で活かした」とも話している。遠山氏は中国への理解と協力を呼びかけ、
中国を守ることができなければ、日本も守り育てることができないと述べている。
遠山氏は中国のゴビ砂漠の上空を飛行機で飛ぶと、旧制第三高等学校の寮歌「逍遥の歌・
紅萌ゆる」の一節にある「通える夢は崑崙の、高嶺の此方ゴビの原」を思い出し感慨深い
ものがあったという。この歌は第三高等学校生の沢村専太郎(さわむら
せんたろう:1884年〜1930年)によって作詞されたが、沢村は後に京都帝国大学
で東洋美術・美術史を専攻し、イギリス、フランス、ドイツにある中央アジアの美術遺産
や絵画の模写事業を推進するようになるなど、シルクロードに対する憧憬が強くあったが
、遠山氏にも同様な想いがあったのだろう。
遠山氏は水の利用に関しては国が違っても、その国、その土地の、長い間培われた伝統に
感動を禁じ得ないと述べている。例えば、奈良・二月堂のお水取りの行事は、福井県の若
狭・小浜市でお水送りがあって地下水脈を通って10日後に二月堂に届くと考えられてい
る。遠山氏はこれを中国・新疆ウイグル自治区のトルファンなどにある坎児井(カルジン
)の伝統が日本にやってきて、日本の春の行事として定着したものではないかと推論して
いる。
カルジンによる水の供給は古代のイランで考案されたもので、イランではカナートと呼ば
れている。アケメネス朝時代のイランで生れたカナートは、農業の振興や居住地の拡大の
ために造られた。カナートは山麓部に掘った井戸にたまった水を、長い水道で運ぶ横井戸
のことで、トルファンあたりだと横井戸というよりも、水が流れるところは地下だけでは
なく、地表を細長い水路のように、天山山脈の雪解け水を運んでいるところもある。
トルファンはウイグル人が多く住むところだが、遠山氏が訪れたトルファンは、日中戦争
の記憶がないせいかウイグル人たちは日本人に親愛の情をもっているようだという印象を
述べている。遠山氏は、ウイグル人は誰でも友だちになってくれるようだと語り、だから
こそ余計に日本の技術協力で緑の大地にしてあげたいという想いになると話していた。中
国人、中国文化、社会への理解を深めることは遠山氏の言うように、日本人を守ることと
して返ってくることは間違いなく、政治家もそのような自覚をもち、無用な対立や衝突を
することは国民の利益のためにも回避すべきだ。
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小泉雅英
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Last modified on 2025-12-13 09:08:10
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