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韓国共同声明:AIシステムへの同意な し個人データ利用を可能とする個人情報保護法改正案を糾弾
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としまるです。

以下、韓国の諸団体が共同で出した個人情報保護法改悪法案への反対声明を紹介します。
AIの開発のために、政府や業界が情報主体の人権の法的保護を後退させて個人情報を利用
する韓国の立法動向は決して他人事とはいえない事態です。韓国のこの声明に心から賛同
し、連帯したいと思います。(JCA-NET としまる)

署名団体リストなどはJCA-NETのウエッブをごらんください。
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/536
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以下、韓国の諸団体が共同で出した個人情報保護法改悪法案への反対声明を紹介します。
AIの開発のために、政府や業界が情報主体の人権の法的保護を後退させて個人情報を利用
する韓国の立法動向は決して他人事とはいえない事態です。韓国のこの声明に心から賛同
し、連帯したいと思います。(JCA-NET としまる)
共同声明:韓国市民社会、AIシステムへの同意なし個人データ利用を可能とする個人情報
保護法改正案を糾弾

「個人データは公共資源ではない!」 - AI開発のため、本来の目的を超えて個人データ
をそのまま利用することを認める改正案に反対する。

政府と国会は現在、個人情報保護法の改正を推し進めており、これにより公的機関や企業
は、データ主体の同意なしに、本来の目的を超えて個人情報そのものを利用できるように
なる。これは、高品質な生データがAI開発に不可欠であるためだ。AI関連分野で世界トッ
プ3に入ることを優先課題とする李在明政権にとって、AI開発は国家の最重要課題である
。

個人情報保護委員会と産業界は、共にこの改正案の成立を後押ししてきており、この改正
案は共に民主党のミン・ビョンドク議員と国民の力のコ・ドンジン議員によって提案され
たものである。 私達の組織は、AI産業発展のためにデータ主体の権利を剥奪する個人情
報保護法改正案に強く反対し、ミン・ビョンドク議員とコ・ドンジン議員による改正案の
撤回を要求する。

いわゆる「AI特別法」は、1月31日にミン・ビョンドク議員、3月13日にコ・ドンジン議員
がそれぞれ「人工知能テクノロジー開発のための個人データ処理」という同一の名称で提
案したもので、データ主体の同意なしに個人データ原本の利用を認める(新設第28条の12
)。この二つの改正案の本質は、個人情報保護委員会の監督下で技術的・行政的・物理的
措置を講じることを条件に、AI技術開発のために、本来の目的を超えた個人データの利用
を一方的に認めることにある。さらにコ・ドンジン議員の法案は、個人情報保護委員会の
権限を縮小し、データ管理者の義務を軽減する条項を追加している。

これは、個人情報保護法の立法趣旨であるデータ主体の個人情報自己決定権を唐突に剥奪
するものである。 私たちは、個人情報を保護すべき立場にある個人情報保護委員会が、
逆に個人情報保護法改正を主導していることに裏切られた気持ちを抱いている。
AIチャットボット「Iruda」による実名・住所・携帯電話番号などの個人情報漏洩事件が
再び起きる可能性がある。

AIはチャットボットや画像・動画生成ツールから自動運転車や産業用ロボットまで、日常
生活に深く浸透している。AIが生活や仕事に良い変化をもたらすことを期待する声が高ま
り、政府もAI産業支援策を推進している。しかしAIが利用するデータの源は人々だ。予測
や判断の対象となるのも人々である。したがって、AIは必然的に一般市民の仕事や権利に
重大な影響を及ぼす。私たちが進む『AI大国』という道において、AIとそのデータが人々
および社会に与える影響を考慮しなければならない。

AIはデータ学習を通じて自律的に学習し、このデータに基づいて推論を行い、出力を生成
する。しかし、訓練されたAIモデルには個人を特定できる情報が含まれる可能性があり、
記憶されるリスクがある。また、訓練データに含まれる個人情報は、プロンプト攻撃を通
じて漏洩または暴露される恐れがある。つまり、AIサービス段階で個人情報がそのまま出
力されるリスクや、個人識別や機微情報推論の目的で悪用される現実的な危険性が存在す
るのだ。匿名化されていない個人情報で訓練されたAIチャットボットが名前・電話番号・
住所などの機微な個人情報を漏洩し、差別的・憎悪的発言を行った「イルダチャットボッ
ト事件」を私たちは経験している。

「個人情報の自己決定権」は憲法上基本的人権として認められており、個人は自身の個人
情報を保護し、その処理を管理する権利を有する。この基本権を体現する現行個人情報保
護法では、データ管理者は合法的に収集した個人データを当初の収集目的の範囲内でのみ
処理できる。目的外利用には原則としてデータ主体からの別途同意が必要だ。例外として
、仮名化情報の処理に関する特例規定により、統計作成・科学研究・公益記録保存等の目
的のみ、データ主体の同意なしに仮名化処理が認められる。つまり現状では、データ管理
者が合法的に個人情報を収集した場合でも、データ主体の同意なしにAI訓練に利用するこ
とはできない。

しかし、ミン・ビョンドク議員とコ・ドンジン議員の法案は、「AIテクノロジー開発及び
性能向上」という極めて抽象的かつ包括的な目的のもと、個人情報を処理する公共機関や
企業が、仮名化処理を施さない元の個人情報をAI学習データとして利用することを認めて
いる。これにはデータ主体の同意は不要で、個人情報保護委員会の審議・承認のみが必要
だ。法案が成立すれば、特定サービス利用のために提供した情報が、本人の同意なくAI学
習データとして利用される可能性がある。結果として、個人データが学習過程で記憶され
るリスクや、記憶されたデータが漏洩・開示されるリスクを、本人の意思や同意なく強制
的に受け入れさせられることになる。
AIテクノロジー開発・改善が、同意なき個人情報利用を正当化するのか?

さらに、本法案は、データ主体が自身の個人情報について学習データとしての利用を拒否
・停止する権利を行使できるかどうかを明確に規定していない。このような形で利用され
、さらには販売される可能性のある元の個人情報は、私たちの生活、職場、オンライン上
で生成・収集されるほぼ全ての個人情報に及ぶ。さらに、キム・テソン議員が提出した、
ソーシャルメディアサービス上で開示された個人情報をデータ主体の同意なしに収集する
ことを認める法案が可決されれば、オンライン上の個人情報は無差別にAI学習教材へと転
用されることになる。

ミン・ビョンドク議員、コ・ドンジン議員、キム・テソン議員が提案した個人情報保護法
改正案は、市民の個人情報を公共資源のように扱う。公共資源である以上、原データすら
AI開発という国家的目標のために容易に利用可能だと主張する。彼らは産業発展の名のも
とで個人情報の利用を広く許可し、AIテクノロジーが未だ克服できていない数多くのプラ
イバシー侵害を無視している。もし個人情報保護法が「AI技術の開発及び性能向上」を理
由にこうした行為を認めるよう改正されれば、新テクノロジーが登場するたびに個人デー
タの利用が当然視される社会風潮が生まれる恐れがある。

「AIの開発及び性能向上」を理由に、データ主体の同意なしに生データの利用を明示的に
認める法律を制定している国は世界にほとんど存在しない。なぜなら、AIの開発・利用に
おいても個人情報という基本的人権を保護することが重要だという原則には誰もが同意し
ているからだ。今必要なのは個人情報利用に特化した立法ではなく、データ産業による情
報の無差別利用を拒否し自分の情報を管理するデータ主体の権利を強化することである。

人工知能が美しい未来をもたらすなら、その未来はテクノロジーと人々によるバランスの
上で創られなければならない。国家発展の追求において人権が軽視されてはならないこと
は、歴史的に合意されてきた。人権を無視した国家や企業による一方的な経済発展は、必
然的に民主主義の後退を招く。政府機関が評議機関として機能することを理由に、データ
主体から憲法上の権利を一方的に剥奪する個人情報保護法改正案は撤回されねばならない
。

政府と国会は、AI産業を口実にデータ主体の同意権を奪う個人情報保護法改正の試みを止
めよ! ショッピング情報、病院記録、通信情報、信用情報を含む匿名化されていない生
データの使用を認める法案に反対する! 私たちデータ主体の同意なしに顔・声・動作な
どのセンシティブ生体情報の利用を容認することに反対する! ミン・ビョンドク議員と
コ・ドンジン議員は、もっぱらAI産業のために情報主体の権利を切り捨てるAI特別法を撤
回せよ!

2025年12月2日

Created by staff01. Last modified on 2025-12-07 10:21:49 Copyright: Default

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