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アリの一言:日曜日記379・「ジェンダーとマイクロアグレッション」
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 3日、「ジェンダーとマイクロアグレッション」と題したシンポジウムが龍谷大学(京都市伏見区)であった。竹安栄子・京都女子大学長の講演と、安藤徹・龍谷大学長を加えたシンポだ(写真)。

 

 竹安氏によれば、マイクロアグレッション(小さな攻撃・差別)とは、「意図にかかわらず、偏見に基づいて相手を傷つける言動。小さな、積み重なる差別的な行動や言動が社会の「空気=常識」を形成する」。

 

 たとえば、「女の子は浪人してまで大学に進学しなくてもいいよ」「看護学は女性向き、機械工学は男性向き」などなど。

 

 竹安氏は女性議員の少なさを力説したが、同時に教育界も引き続き「男社会」であることを指摘した。教授の女性比率は京都女子大では42・6%に達しているが、龍谷大は19%というありさまだ。

 

 マイクロアグレッションについては知っていたが、あらためてその危険性を思った。有意義なシンポだったが、肝心な問題が欠落していた。

 

 それはジェンダー差別とマイクロアグレッションの根源ともいえる天皇制について、竹安氏も安藤氏も一言も触れなかったことだ。「ジェンダー差別の日本固有の問題は何か」が話題になったときも「天皇制」は出なかった。

 

 天皇制、とりわけ後継者を「男系男子」に限定している皇室典範の差別性については国連でも再三指摘されている。なのに…だ。

 

 長男が「家」を継ぐという概念の家父長制の残滓は日本に根深い。それはジェンダーギャップ・女性差別の根源であり、その元凶が戸籍制度・天皇制であることは言うまでもない。

 

 マイクロアグレッションについても、天皇の後に一歩下がって皇后が従う(侍る)姿、それを仲睦ましい夫婦の理想像であるかのように流布するメディア報道がマイクロアグレッションを醸成・助長していることは明らかだ。

 

 たとえば、ずっと気になっていることだが、NHKの人気番組「ブラタモリ」。タモリが全国各地を巡る番組だ。アシスタントはこれまで何人も代わったが、すべて若い女性アナウンサーだ。なぜ男性アナウンサーはアシスタントにならないのか。若い女性がタモリの後を一歩下がってついて回り、時々質問する。どう見ても対等ではない。天皇・皇后の姿の相似形だ。

 

 ジェンダー差別をテーマにした2人の学長のシンポで、天皇制の「て」の字も出なかったことは、この国でいかに天皇制がタブーになっているか、あるいは意識さえされないほど深く浸透しているか改めて痛感させられた。

 

 蛇足だが、質疑応答で上記の問題を質問しようと思ったら、「質問はチラシのQRコードからスマホでお願いします。挙手による質問は受け付けていません」とのことだ。スマホを持っていなければ(扱えなければ)講演会で質問もできないのか。窮屈な世の中になったものだ。




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