| 米国労働運動:労働者階級に選ばれたマムダニ・ニューヨーク市長 | |
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【解説】11月4日、ニューヨーク市長選挙が行われ、民主党のゾーラン・マムダニ候補が勝利した。34歳になったばかりのウガンダ生まれのインド系、しかもイスラム教徒で民主的社会主義者を自称する新市長がニューヨーク市に誕生したことで注目が集まっている。同日にレイバーノーツ誌はオーガナイザーのルイス・フェリス・レオンの記事を掲載した。長いので、マムダニの勝利演説と労働組合の支持に関する部分を中心に要訳した。記事の最後に引用されているユージン・デブスは1920年の大統領選挙に社会党候補として獄中から立候補した。マムダニが引用したのは、デブスが1918年に反逆罪で有罪判決を受けた時の陳述の中の言葉である。(レイバーネット国際部 山崎精一) 労働者階級に選ばれたマムダニ・ニューヨーク市長2025年11月4日ルイス・フェリス・レオン
民主的社会主義者であり、民主党の指名候補であるゾーラン・クワメ・マムダニは、アンドルー・クオモ前知事を打ち負かし、ニューヨーク市の次期市長に就任することになった。 「ニューヨークの労働者たちは権力を持てないと、富裕層や特権層から、言われてきた」と、マムダニはブルックリンで開催された祝勝集会で、熱狂的な聴衆に向けて語った。 「労働者たちは倉庫で箱を持ち上げて指を傷つけ、配達用自転車のハンドルで手のひらにたこができ、厨房で火傷をして指関節に傷跡が残った。こうした手は、権力を握ることを許されてこなかった。しかし、この 12 か月間、皆さんはより大きな目標に挑戦し続けた。今夜、あらゆる困難を乗り越え、私たちはそれを掴んだ… 私たちは政治王朝を打倒したのだ」 しかし戦いは始まったばかりだ。「これは生涯にわたる闘いの一部だ」とマムダニは締めくくりのメッセージで、選挙運動を支えた大勢のボランティアに語った。「これはただの選挙戦ではない。あなたたちは生涯続く運動に参加したのだ。これからその運動にどう関わるかはあなたたちの決断次第であり、いつまで関わるかもあなたたち次第だ。」 勝利集会でのシュプレヒコールを先導し、マムダニは叫んだ。「共に、ニューヨーク、我々は凍結する…」すると「家賃を!」と群衆が続く。「共に、ニューヨーク、我々はバスを速くし…」「無料にする!」「共に、ニューヨーク、我々は普遍的な…」「保育を実現する!」「共に口にした言葉、共に抱いた夢を、共に実現する政策としよう」とマムダニは語った。 クイーンズ選出の州議会議員であり、アメリカ民主的社会主義者党(DSA)の支持者であるマムダニは、ニューヨーク初のムスリム市長となる。1万1千人の党員を擁するニューヨーク市DSAは、マムダニの大規模な戸別訪問活動を主導し、104,400人のボランティア軍団を組織して、300万戸の戸を叩いた。(記者はDSAの党員であり、マムダニの選挙運動で戸別訪問活動を行った。) 選挙管理委員会によると、200万人のニューヨーク市民が投票に参加し、これは半世紀ぶりに高い投票率となった。 ボランティアたちは、マムダニが生活費高騰問題に焦点を当て続け、ガザで進行中のイスラエルによるジェノサイドに原則的な立場で反対した姿勢に共感して運動に加わった。彼の公約には、家賃が規制されたアパートに住む250万人への家賃凍結、高速の無料バス、食料品価格引き下げのための市営食料品店、生後6週間からの無料保育、手頃な価格の住宅建設が含まれる。 しかし2月まで、マムダニは無名の存在で、世論調査では1%の支持率で「その他」の仮想候補と同率だった。「クオモ元知事に勝てると確信していた」とマムダニは10月、バーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員とアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員と共にクイーンズで集会を開き、1万3000人の聴衆に語った。「1年と3日前の10月23日にこの選挙運動を開始した 時、取材に来たテレビカメラは一台もなかった」 移民と労働者に焦点労働者は単純な経済ポピュリズムにしか惹かれず、社会正義の問題には関心を持たない、という嘘がマムダニの勝利により葬り去れた。現実には、労働者も性別やアイデンティティ、宗教的信念を持つ人間であり、それらが互いの関係や世界との関わり方を形作り、行動の動機の要素となるのだ。「私は若い。私はムスリムだ。民主的社会主義者だ。そして何よりもそれを謝罪するつもりは全くない」とマムダニは勝利演説で述べた。この運動が民族・人種的分断を越えられたのは、差異を無視したからではなく、良質な公共サービスと強力な労働運動を核とした統一的な政治綱領を構築したからだ。「私たちは生活をより良くする政府を求めることができる」とマムダニは述べた。労働者階級にその多様性の素晴らしさを訴えた。「ニューヨークの政治でいつも忘れ去られてきた人々が、この選挙運動に参加してくれたことに感謝する。それはイエメンの食料品店のオーナーやメキシコ人の祖母たちであり、セネガルのタクシー運転手やウズベキスタンの看護師たちであり、トリニダード・トバゴ出身の調理人、エチオピア人のおばさんたちのことである。」 「この政治的な暗雲が立ち込める時代において、ニューヨークは光となるだろう。ここでは、移民であれ、トランスジェンダーコミュニティの一員であれ、ドナルド・トランプによって連邦政府の仕事から解雇された多くの黒人女性であれ、食料品の価格が下がるのを待ち続けるシングルマザーであれ、あるいは追い詰められた状況にあるその他すべての人々であれ、愛する人たちのために立ち上がることを信じている。あなたの闘いは、私たちの闘いでもある。そして、それは、私が市庁舎の外で 15 日間のハンガーストライキを一緒に行ったタクシー運転手、リチャードのような人々についても同じである。彼は今でも週 7 日、タクシーを運転しなければない。リチャードよ、今日私たちは市長選に勝利したのだ。」 選挙の前夜、マムダニはラガーディア空港のタクシー乗り場に行き、運転手に投票を呼びかけ、写真に写り、バングラデシュ人、セネガル人、アルジェリア人、インド人のタクシー労働者と談笑した。英語、アラビア語、ヒンディー語、ウルドゥー語で挨拶を交わした。選挙戦終盤には、スペイン語、ウルドゥー語、ヒンディー語版に続き、アラビア語版の選挙広報動画を公開した。 ニューヨークタクシー労働者同盟のバイラヴィ・デサイ会長は、2021年の債務救済闘争と15日間のハンガーストライキでマムダニが運転手たちの信頼を勝ち取ったと語る。「ハンガーストライキ中、この謙虚な州議会議員が医師の診察を受ける際、必ず最後尾に並ぶ姿や、選挙戦の情報共有・戦略会議で運転手たちと輪になって話し合う姿、他の議員に運転手たちの名前を挙げて紹介する姿をメンバーは目撃した」と彼女は語る。「だから運転手たちは当然、マムダニを仲間の一人と感じている。移民と労働者に焦点を当てた選挙運動に自分たちの姿を重ね、マムダニが権力への一歩一歩を労働者階級と共に歩んでいると認識しているのだ」 拡大した労組の支持今やマムダニは全国的に知られる存在となった。様々な分断を乗り越えることに成功したが、それは生活費高騰に対して低廉な価格を求める政策を広く訴えたからである。その分断の一つが大労組の間の分断であった。予備選では、市職員を代表するAFSCME地区評議会37、ニューヨーク市立大学専門職員会議(PSC-CUNY)、全米自動車労組UAW第9A地区のみがマムダニを支持した。大半の組合はクオモを支持した。「民主党主流派の問題の多くは、労働組合の主流派も、民主党主流派と同じ問題を抱えている。」とデサイは指摘する。「政党支持問題は労働組合同士を対立させてきた。各組合が勝ち目のある候補者への支持を一番早くに決めたいからだ。労働運動の指導者の多くは、労働者の政治的意識を高めことよりも、政治的なキングメーカーになることにより政治力が高められると考えている。政治的な権威主義が台頭する中、労働組合がゼロサム政治に後退する余裕はない。労働組合は今こそ、産業や潮流を超えた結束で労働者階級に奉仕する候補者と政策を推進し、自らの影響力を取り戻すべき時だ」 UAWは昨年秋にニューヨーク市長選挙の議論を内部で開始し、マムダニを最初に支持した組合である。第9A地区委員長のブランドン・マンシラは、組合員と指導部双方がマムダニ候補者を熱烈に支持し、組合の政治評議会で支持を決めたと語る。「コロンビア大学での闘いからメルセデス・ベンツの最初の労働協約集会まで、あらゆる闘争の最前線でマムダニは中心人物だった」 強まる労組の政治力マムダニが56%の得票率で予備選挙を制した後、ホテル・ゲーミング労働組合評議会、ニューヨーク州看護師協会、ドアマンやその他のビル労働者を代表するSEIU ローカル32BJがマムダニ支持に結束した。その後、多くの労働組合が相次いで支持を表明した。主なものとしては、アメリカ北東部で45万人の組合員を擁する国内最大の医療労働組合SEIU 1199、全米教職員連盟(AFT)最大の地方組織であるニューヨーク教職員連盟、全米通信労組(CWA)第1地区、300の労働組合の100万人の労働者を代表するニューヨーク市中央労働評議会などである。建設産業労組のレイバラーズ労組はマムダニを支持しなかったが、クオモも支持しなかった。組合内部の関係者(匿名を条件に取材に応じた)によれば、考え方の漸進的な変化の兆しが見られるという。一部の組合員や指導者は、共有された価値観ではなく金銭的貢献に基づいて関係や影響力が決まる「金権政治」モデルに疑問を持ち始めている。「選挙では投票率向上装置として利用されながら、政策決定では脇に追いやられる現状に人々は心底うんざりしている」とこの関係者は語る。「労働者のために動く人物を選ぶべきだ。必要な時だけ利用する人物ではない。かつてバーニー・サンダースの過激だと思われた主張も、今やそれほど過激ではない。人々が彼に近づいているからだ」。例えば「手頃な価格の住宅を建設すべきだ。高級住宅ばかり建てていてはならない」といった主張が挙げられる。 マムダニは勝利演説を次の言葉で始めた。「今晩、この街には夕日が沈んだかもしれない。しかし、ユージン・デブスがかつて言ったように、『人類にとってより良い日の夜明けはこれからだ』」 「ニューヨークは移民の街であり、移民によって築かれ、移民によって支えられ続けてきた。そして今夜からは、移民によって率いられる街となる。」 Created by staff01. Last modified on 2025-12-01 15:38:14 Copyright: Default | |