夢洲カジノを止める大阪府民の会と万博工事費未払い被害者が共同会見
かわすみかずみ
＊会見時の未払い被害者と府民の会メンバー
２０２５年７月９日、大阪府庁で記者会見が行われた。夢洲カジノを止める大阪府民の会(以下府民の会)と万博工事費未払い被害の当事者による共同会見だった。約３０席あった記者席は埋まり、大手メディアは関心を寄せた。
冒頭で府民の会事務局の八木正行さんは、府民の会と未払い問題被害当事者との関わりを語った。
八木さんは被害者の会のSNS を知り、６月上旬に「連帯したい」とコメントした。被害者の会はコメントを読み八木さんに連絡を取った。府民の会はこれまで、継続的なメタンガス濃度のチェックや実地調査、子ども無料招待事業の危険性を訴えてきた。「万博工事で危険と隣り合わせで働いた労働者に未払いが起こっていることは、私たちが訴えてきた『人命軽視』『人権無視』の万博の諸問題と通ずるものがあると思います」という。
府民の会事務局長の山川よしやす氏は、「吉村知事は『民民の問題』と切り捨てていますが、私たち府民は心から支援したいと思っています」と語った。
私達の笑顔を返してほしい
未払い問題被害当事者から３人が参加し、うち２人は発言に臨んだ。
アンゴラ館の未払い当事者Aさんは、新たに加わったアメリカ館での当事者Ｃさんの手紙を代読した。Ｃさんは２０２４年１１月から翌年３月までアメリカ館の内装工事に参加した。建設現場では、言葉の壁や日本の建設つけ現場との違いなどがあり、工事が進まないことやトラブルがたくさんあったという。それでも開幕に間に合わせるために頑張ったというＣさんは、万博の工事に携われたことに誇りを持っているという。
しかし、万博に来場する人々の笑顔をみるにつけ、思うことがある。手紙には「万博の来場者の笑顔を見ると、笑顔になれない人がいるのはおかしいと思います。私たちの笑顔を戻してください」と書かれていた。
Aさんは、被害者の会のSNSにアンチとみられる書き込みや質問があることについてこの場で答えたいという。万博協会は昨年3月の時点で未払いが発生していたことを知っていたことや１０社以上の業者から万博協会にクレームがいっていたことが被害者の会の調べで分かっているが、万博協会は隠していた。万博協会の隠ぺい体質に納得いかないとAさんはいう。
大阪府知事は「(被害者に)寄り添う」と言いながら、被害者らが府に提出した要望書の回答は通常のマニュアル対応しかなかった。回答書にあった相談窓口に電話をかけたAさんは「知事から『寄り添う』という言葉を聞いてますが」と府職員に言うと「そんなことは聞いていません」と言われたそうだ。新たに未払いを訴える業者は近々公表されることもあり、万博を成功させたいなら誠実に対応すべきだとAさんは述べた。
Bさんは中国パビリオンの二次下請け業者として、防犯カメラの設置や配線などの電気工事に携わった。元受けの中日建設から料金が支払われていないことが今年４月にわかり、二次、三次と未払いの連鎖が起こった。２０２４年８月頃から中国館の電気工事は始まっているが、溶接などの業者が次々といなくなっていった。周囲に聞くと未払いが原因だという。一次受けと中日建設が付き合いが３年近くあると聞き、大丈夫だろうと思ったが、未払いとなった。万博協会が進行管理をしっかりやっていなかったとBさんは振り返る。2025年2月頃から「(開幕に)間に合わせるように」と万博協会から指示が出たため、中日建設からも同様の支持が出た。昼夜働く日々が3週間ほど続いた。その対価である6000万円が払われず、「万博協会は間に合わせればそれでいいのか」と失望したと語った。見積も作業の確認もすべてしているのに、対価が支払われないことが理解できないと、Ｃさんは言う。取引先の数社は支払いを待ってもらっている状態で、従業員には、給料以外の経費は身銭を切ってもらっている。いつ倒れてもおかしくない状態だ。何とか早く解決してほしいと訴えた。Ｂさんは「悔しいです。元請けが自分の評価をあげるために使われたと思います」と思いを語った。
府民の会事務局長の山川よしやす氏は、「民民の問題というのはありえないと思います。吉村知事自身がSNSで『工事が間に合わないので助けてください』と発信し、中小の業者が働いたのに、対価が払われないなんてことがあってはならない。万博の光の部分だけ見せて、闇の部分を隠すようなことがあってはならないと思います」と発言した。
大学生の子どもを退学させないといけない、家を追い出されるなど、恐ろしい波及効果があるため、国や万博協会、大阪府市はしっかり向き合ってほしいと強く訴えた。吉村知事は工事費が足りないと言って70年の万博基金から95億円を切り崩すよう管理団体に要請したが、今回の問題については、建設業登録のない業者に弁明書を送っただけで積極的な動きをしていないのはなぜか？と山川氏は投げかける。
3月28日のメタンガス爆発事故後、万博協会はメタンガス濃度を明らかにすると言っていたが、4月3日以後情報を公開しない部分が増えた。だが、ホームページ上では、「安全ですのでご来場ください」と書かれていると山川氏は述べ、不信感を招いているという。
被害を受けた人たちは救われないといけない
記者からの質問の中でBさんは、現在仕入れができず、社会保険料も払えない状態だと述べた。産経新聞は府民の会と被害者が連携する意味を再度質問。府民の会が調査する中で、メタンガスの数値が基準を超えているのに労働者を働かせていたことが分かっている。夢洲一区はそもそも立ち入り禁止区域でＰＣＢ、ヒ素、フッ素などが埋められていることや福島のがれきの焼却灰を埋めている。労働者は健康被害はないのか？という疑問があったと、山川氏はいう。
被害者が孤立してはいけない。この問題についてみんなが自分のこととして決着をつけないといけないと府民の会は考えている。
Ａさんはこれに加えて、現場の様子を証言した。万博協会はメタンガス爆発後に �．瓮織鵐�ス濃度を作業前にはかること ��基準値を超える場合は送風機で拡散する、という方針を公表した。しかし、現場ではメタンガスのことさえ知らされていなかった。当然濃度測定器も送風機も現場にはなかったと証言する。
また、4月6日のテストランの前には、万博協会から「土壌汚染があるから土が見えている部分をすぐに隠すように」という指示が出ていたことも複数の業者が証言している。Ａさんは、「作業員の人権はないがしろにされていると感じた」という。未払いによって生存権も脅かされていると憤る。
Aさんら被害者は、被害者の会を立ち上げてから、多くの集会に参加し、市民団体との意見交換の中で初めて、万博会場で深刻な土壌汚染があったことやメタンガスのことを知った。被害者らも万博の問題を学んでいき、多くの矛盾に突き当たった。Ａさんは、工事中に健康被害が出たら誰が責任を取るのか？とびっくりしたという。
産経新聞は「カジノの団体がなぜ万博の未払い問題を行っているのか？」という問いに、山川氏は「ネーミングや思想信条、政党という狭い範囲で考えるべきものではなく、ひがいを受けた人たちは救われないといけないということだと思います」と語る。
今回の万博でだけ未払いがこんなに生じているのかというの質問については、Ａさんが �‥攵蹐量簑�(軟弱地盤など) �▲ぅ戰鵐伐饉劼�元請けとなって作った設計書・積算がまとも出ない(ゼネコンが無理だと言っているのに無理やり工事を進めた) ��イベント会社を元請けにした万博協会の問題、をあげた。
Aさんら中小建設事業者は、従業員や職人から「自分の腎臓売ってでも払え」と何度も言われている。自家用車などを売って支払いに充てた業者もある。万博における未払いの金額は、ほかの工事の比ではない。一時は死のうかと思ったという業者も多い。そういう中で、声をあげられない業者のためにも、仲間たちとともに闘っていくと、会見で再度表明した。現在は複数の労働組合や弁護士、ジャーナリストや議員が支援に入っている。
本当に「寄り添う」
＊街頭行動での一コマ。手作りのプラカードで参加した女性がいた。
会見終了後、京阪天満橋駅前で府民の会と被害者は街頭行動を行った。署名やカンパをあつめ、交代でアピールした。被害者のＡさんは「結婚したばかりの仲間が、妻を実家に帰らせて、じぶんは家を追い出されるという状況になった。仲間たちを救いたいので、カンパをお願いします」と交差点を通り過ぎる人波に訴えた。
1時間あまりの街頭行動で、2万７２３０円のカンパと２５筆の署名が集まった。参加者は高校生がＱＲコードを読み込んで、家で署名すると言ってくれたことがうれしかったという。筆者もカンパ箱を持って呼びかけた。障がいを持った女性が「可哀そう。おかしいよね」とカンパをくれたこともうれしかった。
７月１１日現在、早急な立て替えを求めるネット署名は１万筆を超えた。被害者の会は継続したカンパ呼びかけを行っている。ご協力いただける方は下記まで。
●百十四銀行 坂出支店２６１
番号１６２６７１１ バンパクコウジヒミバライモンダイヒガイシャノカイ
Created by staff01. Last modified on 2025-07-11 16:32:49 Copyright: Default