名古屋市教委、「道徳」中学教科書採択で極右「日本教科書」を採択せず！

2024年8月7日 名古屋市中学教科書採択会議報告（小野）

◆速報:名古屋市教委、本日、「道徳」中学教科書採択で極右「日本教科書」を採択せず！

 なお、この報告は、私的メモによるものであり、不十分なものであることを予めお断り
しておきます。

本年9月以降、名古屋市教委が「教科書採択会議議事録」を公開してから、議事録に基づ
いて、より正確で詳細な報告が出来ると思います。

◇まず、前回、8月1日の名古屋市教委「教科書採択会議」で、戦争肯定・人権より義務重
視の「育鵬社」・「
自由社」・「令和書籍」歴史教科書、「育鵬社」・「自由社」
公民教科書を採択させなかった私の報告に、全国各地から多くの共感と激励のメール・電
話を頂きましたことに心から感謝をお伝えします。有難うございました。

 ◇私事で申し訳ありませんが、本日の採択会議の前に、傍聴者受付の会場で、「ゴリラ
先生ですね」と言われ、聞けば、33年前の教え子でした。

教科書会社の名古屋支社にいて採択の傍聴に来たとのことでした。
担任ではなかったのですが、5・6年時に図書委員会（私は6校35年間担当）にいて、体育
館中に古本を集めて行った「こども古本市」、全校読み聞かせ（低学年へのボランティア
）、毎年3回の「読書祭り」での体育館でのお芝居（彼は、五味太郎『いっぽんばしわた
る』や『すてきな三人組』が印象に残っているとのこと）などを鮮明に覚えていると話し
ました。長年の教員生活と教科書運動が、昔の教え子との
教科書採択会議での再会に繋がったことに感激したものでした。閑話休題。

◆さて、本日、8月7日（水曜）2時半から名古屋市役所で行われた、「道徳」の中学教科
書採択会議で、名古屋市では、河村名古屋市長の推す、極右「日本教科書」
を採択せず、「教育出版」に決まりました。



◆理科は「啓林館」（これまでは「大日本図書」）、美術は「日本文教出版」と英語は「
東京書籍」は、これまでと同じ出版社でした。

◆教科書展示会の「市民の声」は、理科が15通、美術が4通、英語が20通、音楽が14通で
した。なお、8月1日採択の「歴史」607通、「公民」182通でした。

◆本日も、市教委事務局から、前回同様、「市民の声」とともに、メール・FAXが多数あ
り教育委員用のファイルに綴じてあると報告がありました。

（１）採択会議の内容に入る前に。

①本日の採択会議は、会場が名古屋市役所会議室で、午後2時半から始まりました。

「令和6年度（2025年度）使用教科用図書の採択及び採択審議」のほか、
「令和6年度学力・学力状況調査（全国学力テスト）の結果について」の報告があり、い
くつかの質問がありました。採択会議は、5時前に終了しました。
なお、「ガイドバランティア」の登録に関する審査請求について」と「名古屋市指定文化
財の指定について」の審議は非公開でした。

②傍聴席は、名古屋市役所会議室で78席。今回は57名の傍聴申し込みで、57名全員が傍聴
しました。

前回8月1日は、106名の傍聴申込みで抽選でした。前回7月26日の採択会議の傍聴席が50名
から78名に増えたとはいえ、
抽選に外れた28名が傍聴できなかったことに対して、前回、名古屋市教委に対して抗議も
行いました。

③教科書会社関係が42名、その他の傍聴者15名余は、「日本教科書」道徳教科書の不採択
を求める市民、右派はゼロでした。

④記者席はゼロでした。前回8月1日は、テレビ局が1社（CBC）、新聞・テレビ局が8名、
フリージャーナリストが1名、合計9名でした。

⑤公職者席は今回はゼロでした。前回は「歴史・公民」の採択ということもあり、名古屋
市会議員が3名。1名は、名古屋市議会で右派教科書の採択を求める意見を述べた「日本維
新の会」大島議員でした。

（２）本日の採択会議について

①議長（坪田教育長）より、教育委員の一人が欠席すると述べられました。

なお、7月26日の会議では2名の欠席が報告されず、市教委事務局に抗議しました。

②各教科の審議では、各教科の指導主事から、「教科用図書専門委員会」の『報告書』、
教科用図書調査会（
現場教員の意見＝「学校票」）の『報告書』、「市民の意見」と各地・各段来・個人から
の「要請書」の「ファイル」が
6名の教育委員に渡されていて、各教科担当の指導主事から各教科のポイントが発表され
ました。

④その後、教育委員から、事務局報告への質問と応答があり、さまざまな意見が出されま
した。

各教科の採択審議では、「名古屋市教育振興計画」にある「学びのコンパス」の観点から
の報告が多く出されました。

⑤「道徳」の採択審議では、教育委員の意見では、「日本教科書」道徳教科書に関するも
のはほとんどありませんでした。

特に、各教科書会社の「道徳」教科書で「いじめ」がどのように扱われているかが審議さ
れました。

教育出版がいいとの意見が多数でしたが、日本文教出版が「いじめ」の加害者・被害者・
取り巻きなどの4層構造が書かれているからよいとの「うどんのサガミ」会長・鎌田委員
の発言があり、発言を聞きながら、イスラエル名古屋名誉総領事に任命された鎌田氏のガ
ザジェノサイドを行っているイスラエルを支持しているあなたは、そんなことが言えます
か？と問いただしたい思いでした。

なお、審議過程での詳しい意見の詳細は、本年9
月以降、名古屋市教委が「教科書採択会議議事録」を公開してから、議事録に基づいて、
より正確で詳細な報告が出来ると思います。

⑥名古屋市では、今回、河村名古屋市長の推す、極右「日本教科書」
を採択せず、「教育出版」に決まりましたが、「教育出版」の教科書を含めて、どの道徳
教科書も問題が多いものであり、また道徳評価（24個の徳目の評価・自己評価）によって
、道徳の授業と評価によって、子どもたちの内面・人格・尊厳が評価されることをやはり
許してはならないと40年近く学校現場にいた教員として改めて思いました。


⑦教育委員全員の意見を聞いた後、各教科の最後に、議長＝坪田教育長より、「○○」は
「○○」採択でよろしいですねと提案があり、異議なしで決定し、
理科は「啓林館」、美術は「日本文教出版」、英語は「東京書籍」に決定しました。

⑧名古屋市立特別支援学校と特別支援学級の教科書については、各学校から採択希望のあ
った教科書の採択が異議なしで採択決定しました。

⑨名古屋市立高等学校の教科書の採択は、各高校代表者による「教科研究会」（名古屋市
教委担当指導主事参加の下、
「名古屋市教委作成・採択関係資料」を基に研究協議⇒『報告書』作成⇒各高校で「教科
研究会」⇒「教科研究協議会」⇒『報告書』作成⇒市教委に提出⇒各高校の『採択希望教
科用図書』作成⇒市教委提出⇒8月7日、本日の採択会議で教育委員に報告書に基づき審議
し採択決定。本日は、過去高校から提出された
『採択希望教科用図書』が、異議なしで採択されました。

⑩今回も、誰が投票したかが判別できない、4年前のような「無記名投票」はありません
でした。

◇この間、「この夏、名古屋の中学教科書採択がアブナイ！」とさまざまな場所で何度も
訴えてきました。

採択の最終段階になり、名古屋・愛知はもちろん、全国から、保護者・市民・教員・退職
教員・学者・研究者などの個人・団体・労組が、思想・政治的立場・組織などを超えて、
幅広い皆さんから、戦争肯定・人権より義務重視の「育鵬社」・「自由社」・「令和書籍
」歴史教科書、「育鵬社」・「自由社」公民教科書を採択しないで下さいという多くの要
請書・要望書・意見書などが、
FAX・メールなどで名古屋市教委に対して送られました。

7月29日には名古屋市教委にFAXが送れないほど集中したとの報告もあり、またFAX
・電話・メールなどが300通を超えたとの情報もありました（情報開示後、詳細は報告）。

また、若い友人たちは、ネット署名を集めたり、SNS等でアピールしたり、さまざまな場
所で訴えました。

◆採択会議後、採択会議会場から移動し、1階フロアーで、簡単なまとめの集会を行い、
本日の採択結果と特徴や以下に述べるような報告と大きな勝利を参加者で確認しました。

◆今回、
戦争肯定・人権より義務重視の「育鵬社」・「自由社」・「令和書籍」歴史教科書、「育
鵬社」・「自由社」公民教科書、極右の「日本教科書」道徳が採択されなかったのは、第
1に、学校現場の教員による、
「教科用図書専門委員会」の『報告書』、教科用図書調査会（現場教員の意見＝「学校票
」）の『報告書』で、
「育鵬社」・「自由社」・「令和書籍」歴史教科書、「育鵬社」・「自由社」公民教科書
が上位に挙げられなかったこと、第2に、教科書展示会での
「市民の意見」が、歴史で607通、公民で182通もあり、そのほとんどが
「育鵬社」・「自由社」・「令和書籍」歴史教科書、「育鵬社」・「自由社」公民教科書
を採択しないでくださいというものであったということ、第3に、全国
各地・各団体・個人からの「要請書」が相当多くあり（事務局報告）、（300本以上と思
われる）、教育員会事務局と教育委員は教員の声、市民・保護者の声の多さに圧倒されて
、4年前に「育鵬社」を採択寸前まで持っていった教育委員を含めて、誰一人、
「育鵬社」・「自由社」・「令和書籍」歴史教科書、「育鵬社」・「自由社」公民教科書
の採択を推すことができなかったということが重要な要因であろうと私は思っています。

◇今回の名古屋市中学教科書採択にあたり、2025年4月からの4年間、名古屋市の2万人近
い中学生に（4年間使われる）教科書に、
戦争肯定・人権より義務重視の極右の「育鵬社」・「自由社」・「令和書籍」の歴史・公
民教科書、戦前の「修身」に近い「日本教科書」道徳教科書
を渡さないことになりました。

さまざまな形で、ご協力、ご支援いただいた皆さん、ほんとうに有難うございました。重
ね重ねお礼を申し上げます。

以上、不十分ながら、私個人のメモによる本日の名古屋市教育委員会教科書採択会議の報
告とします。

これから採択が行われる全国各地の皆さんに名古屋の地から心からの連帯とご健闘を祈っ
ています。

◆最後に、最近の新聞記事で印象に残った言葉を、安倍政権・菅政権に「日本学術会議」
会員を拒否された6名の一人、歴史学者・東大文学部教授の加藤陽子さんの朝日新聞8月1
日のインタビュー「周到に
しなやかに」から引用しておきます。

「相手を調べる、絶対に誤解をしない、軽んじない、過大評価しておく。もし闘う時が来
たら絶対に負けないところまで調べ尽くして、相手の退路を断っておくのです」

「任命拒否関係の資料はつづら三つ分ほどになりました。本来は任命拒否という内閣総理
大臣の判断を支えた根拠が、その意思決定過程をも示す文書とともに明らかにされなけれ
ばならない。私が専門とする歴史学は、一定の時代に現れたり、つくられたりした制度や
論理が、なぜその時代に現れたのかを問う学問です。歴史学者の私は、官邸がなぜ拒否を
決断したのか大変に興味があります。だから記録と資料を残す」

これにて、不十分ながら、本日、8月7日の名古屋市教委「教科書採択会議」報告とします。

猛暑が続きます。

熱中症、コロナにくれぐれもご注意ください。

お元気で。再見。