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投稿者 : Takeshi(大阪市在住)

大阪の高校授業料無償化は、上位進学校生き残り政策?

今年度(2024年度)から大阪府下の公立私立の全高校で授業料が無償化されます。

授業料無償化という政策実施(現象)を額面どおりに受け取ったなら、近年の物価高騰などで家計が苦しいなか現役の高校生や高校進学予定の子供のいる家庭を救済する朗報といえましょう。

とはいえ、多くの生徒が平等に高校教育を受ける機会を得られるであろう一方、問題や課題について指摘がほとんどなく詳細な検討もないまま施行されたように思えてならないのです。

効果として選択肢の拡大並び自由化がより促される反面、それまで一部の成績優秀な生徒や保護者以外は敬遠しがちだった上位進学校への関心や志向が高まり、公立私立問わず有名ブランド大学への進学率が高い学校に志願者が集中し(流れ)、競争がより過熱激化してしまうでしょう。

なぜなら低迷を続ける国内景気やコロナ禍に加え海外の政情不安もあって就職が厳しく難しいなか、保護者としては無理してでも他の子より少しでも上の学校に進学させようと躍起に、ましてどこも同じ授業料無償となれば上位校を選ぶため軽減分を先行投資として早い段階から学習塾や進学塾につぎ込みたくなるのは自然の成り行きだからです。

こういった傾向が続けば、少子化がさらに進行しても上位進学校は定員割れを心配することなく運営可能でいられるのに対し、中堅クラス以下や工業商業など実業系の学校は定員割れに歯止めがかからず運営悪化が続く負のスパイラルに陥り、やがて府から存続意義や見込みがないと判断され授業料収入分の補助・肩代わりを打ち切られ廃校に追い込まれる可能性が出て来ます。

いずれ大阪で上位進学校を普通の高校と見做す風潮の定着と引き合えに他種及び他目的の学校が切り捨てられてしまったら、生き残った“普通の高校”に進学できる学力を有しない生徒や志願しない生徒は、行き場を失うだけでなく人生設計にも重大な影響を受けるのです。

いわば進学の自由や選択に対する制限以前に、「すべての国民はそれぞれの能力において等しく教育を受ける権利を有す」と定められた日本国憲法の「教育の機会均等」の趣旨を侵害するのではないでしょうか。

また、大阪独自というより身勝手な政策で国の教育行政の公平性が歪められたと他の都道府県が受け取る傍ら、ウチはどうなるのか・どうするのか、大阪がやったのだからウチもやらなければという牽制や挑発となって混乱を引き起こすかもしれません。

維新によるこの政策を手放しで歓迎する向きも多々あるようですが、飛躍し穿った見方をすれば生徒はもとより保護者の社会不安や上昇志向に付け込んだ受験エリート・学校秀才の育成推進を優先させる上位進学校以外の切り捨てを以って格差と分断対立へ誘導のうえ、賛同する親子をそろって支持者に取りこみ党勢拡大と国政掌握に向け一層スピードアップを図るべく心理操作の狙いがあるとも考えられるのです。

結局のところより良い方法を挙げるとすれば、すべての高校の一律無償化という上位下達で一方的な政策ではなく、各校と定期的に意見交換をおこない運営状況などの把握に努めると同時に、自由な提案や要望を受け付ける行政から独立し政治介入もなく公正中立な運営が可能な専門機関と教育関係以外の民間人も含む第三者機関、さらに当事者である生徒自身や保護者をはじめ一般からの意見要望を受け付ける窓口の設置及び拡充です。

同様のものは既に存在するかもしれませんが、とりわけ私立においては先述の専門機関の指導監督の下で受験生の保護者の年収等に応じた授業料など各種料金の減免や補助、支払時期猶予(一定年数先延ばし可)措置といった独自の制度を作成提案してはどうでしょうか。

もちろん個人情報やプライバシーに関わる事項を扱うため、守秘義務を規律と罰則付きで徹底しなくてはならない難しい面はあるものの、家庭の経済状況に左右されることなくすべての生徒に進学先と進路選択の自由を保障する方法として、素朴とはいえ一番効果的で実効性もあると思います。

そんななか大阪では府により高校授業料の一律無償化が施行されましたが、本当に必要なのはこのようなトップダウンではなく現場の教職員を中心とする労働者や生徒保護者自身が知恵を出し合いボトムアップで時代に即し個々の事情も反映した制度を生み出すことではないでしょうか。

全国で叫ばれている教育の民主化と並び、今こそ教育関係者と生徒保護者の想いと真価が問われ試されているのです。


Created by staff01. Last modified on 2024-04-04 22:16:42 Copyright: Default

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