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台湾の有権者は何を選択したのか

2024年01月16日 | 日本の政治・社会と民主主義
   

 13日行われた台湾総統選挙は民進党の頼清徳氏が当選しました。この結果について共同通信は、「有権者は頼氏当選の阻止を狙った中国の揺さぶりに動じず、米国との連携を重視する蔡英文政権の路線継続を支持した」と「解説」しました(14日付京都新聞)。
 
 日本の超党派の議員連盟「日華議員懇談会」の会長で自民内右派の中心人物の一人、古屋圭一氏は14日、台湾で頼氏と会い、「台湾民主主義の勝利というだけではなく(台湾と)理念を共有する国にとっても勝利だ」と述べました(15日付京都新聞=共同)。

 頼氏の当選を、「親米・反中国」のイデオロギー選択の結果だとする論評・評価です。果たしてそれは正当でしょうか。

 選挙結果を論評した各紙社説、「解説」の中で、注目されたのは朝日新聞台北支局長・石田耕一郎氏の論評です。以下、抜粋します。

<台湾総統選で浮かび上がったのは、台湾の存立に自信を深めた民意だった。台湾は国際社会での存在感を急速に高めた。日本や米国がうらやむ世界有数の半導体産業がある。アジア初の同性婚の法制化など多様性を受け入れる社会づくりを進め、日米欧の視線を引きつけた。台湾人は中国と違う社会のありように自信を深めてきた。

 有権者は今回の選挙で、中台関係より経済政策などの論争を重視した。そして、誰が台湾の社会や経済を前進させられるかを見極めようとした。その結果、生活問題に焦点を当てて「独立や統一議論は無意味」と訴えた民衆党に、多くの票が流れた

 こうした判断を支えたのは、多様な意見を包含する成熟した民主主義であり、国際社会の支持だ。>(13日付朝日新聞デジタル)

 これを受け、鈴木一人・東京大学大学院教授(地経学研究所長)がこうコメントしています。

<日本の報道では、台湾の選挙の争点は中国との関係、という論調が多かったが、実際に問題になったのは経済。統一や独立といった問題を論じなかった民衆党が躍進したのがその証拠。総統与党が立法院では過半数を取れない、いわゆる「ねじれ」状況になる中で、経済政策をどのように回していくのか、ということが新総統にも立法院にも求められる。>(同朝日新聞デジタル、抜粋)

 民進党と国民党が交互に政権を担当する「二大政党制」の中で、26・5%の票を得た台湾民衆党(民進党の得票率は40・1%、国民党は33・5%)の健闘こそ注目すべきであり、その背景には「中台関係」より「経済政策」「生活問題」を重視した有権者の選択があった、という指摘です。

 両氏の指摘から、多くの若者が支持したという民衆党の前進は、日本の政治・社会にも重要な示唆を与えています。

 第1に、中国かアメリカかという「超大国」との関係を選択するのではなく、自立(自律)を求める市民の声が広がっていること。

 第2に、国家の論理(軍事的・イデオロギー的)ではなく、市民の「生活問題」こそ政治の中心課題であるとの世論が広がっていること。

 第3に、政権をたらい回しする「二大政党制」(小選挙区制)ではなく、多様な理念・政策を持つ政治勢力の進出が政治の活性化をもたらすこと。

 71・9%という日本では考えられない投票率も、こうした台湾の政治・社会の先進性の反映ではないでしょうか。これこそ今回の台湾総統選挙の最大の特徴であり、日本の市民がくみとるべき教訓だといえるでしょう。




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