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アンジー・ゼルターさんのたたかい〜『非暴力直接行動が世界を変える』出版記念会開かれる

竪場勝司

 原子力潜水艦の実験施設を「非武装化」(破壊)して無罪判決を勝ち取ったことなどで知られる、イギリスの非暴力に徹する活動家・アンジー・ゼルターさん(72歳)が自らの半生を描いた著書の翻訳本『非暴力直接行動が世界を変える 核廃絶から気候変動まで、一女性の軌跡』が南方新社から発刊され、2月13日、東京・飯田橋で出版記念会が開かれた。

●原子力潜水艦実験施設を破壊、無罪判決勝ち取る

 1999年6月、アンジーさんら3人の女性が、スコットランドのファスレーン基地に付属する、ゴイル湖に浮かぶ原子力潜水艦試験施設に侵入し、コンピューターなどを湖に投げ込み、実験用潜水艦モデルを破壊。イギリスの裁判所は女性たちの行動が「国際法を遵守するためにはやむを得なかった」として無罪を言い渡した。こうした活動を評価され、アンジーさんは2001年に「もう一つのノーベル賞」と言われるライト・ライブリフッド賞を受賞している。

 アンジーさんの著書『Activism for Life』は、環境保護や先住民の権利の問題、パレスチナでの国際連帯運動も含めたさまざまな平和活動や人権活動に取り組んできたアンジーさんの半生を記録する内容になっており、21年にイギリスで出版された。

 和訳に取り組んだのは、ブロガーの大津留公彦さん、翻訳家の川島めぐみさん、佐賀大学名誉教授(専門は原子核物理学)の豊島耕一さんの3人。アンジーさんと交流のあった川島さんが、原著が出版されることをアンジーさんからのメールで知り、翻訳を思い立った。川島さんは、2000年にアンジーさんを日本に招いて全国講演ツアーを企画した経験のある豊島さんに声を掛け、さらに豊島さんが大津留さんを勧誘した。翻訳・出版のための費用を賄い、ネットにアクセスできる幅広い層の人々に本のことを知ってもらおうと、クラウドファンディングにも取り組んできた。本をプロモートするための「Zoomセミナー」も4回開き、アンジーさんが参加する回もあった。

●筆者からメッセージ「軍事、産業、資本主義の仕組みの総点検を」

 出版記念会では、川島さんが翻訳にいたった経緯などを説明し、「私はこの本は絶対売れると思っている。『売れる』というよりも、『必要とされている』と言った方が正確だ。『借金してでも出版したい』という熱い思いを3人で共有できたので、出版にたどりついた。この本はこれからの日本の市民運動に様々な可能性を示してくれるものだと思う」と語った。

 オンラインでイギリスのアンジーさん(写真右)からのメッセージも中継された。アンジーさんは数週間にわたった2000年の日本での全国講演ツアーでの、平和活動家との交流などの思い出に触れた。そして「壊れやすい棲み処である私たちの地球は、想像を絶する重圧にさらされ続けています。生物の多様性と気候の危機、終わりの見えない武力衝突が生命を維持するエコシステムを破壊し続けています。今こそ私たちは共に行動しなければなりません。このような状況を引き起こした軍事、産業、資本主義の仕組みを総点検しなければなりません。和訳された本の中で、平和活動家、そして環境活動家として、どのように私が格闘してきたのか、わかっていただけると思います。本書はもっと多くの人々に、現存の弾圧的かつ非道徳的な全世界的体制を非暴力で創造的に解体するために、一歩踏み出すきっかけになってほしいと思っています。力を合わせれば、人間らしさと善良さを育む芽を出して、成長させる、仕組みとネットワークをつくることができます。世界に目を向ければ、数多くの素晴らしい運動が見えてきます。お互いから学び合い、それぞれの長所と創造性を組み合わせましょう」と日本の人々に呼びかけた。

 出版記念会の最後に、反核法律家協会会長の大久保賢一さん(写真)が「法律家から見たアンジーのメッセージ ―その底流にある思想 9条の国はこれをどう生かすかー」のテーマで、記念講演を行なった。講演の中で大久保さんは「一人ひとりの自覚ある人たちの行動が、世界を大きく変えているということは間違いない。アンジーさんたちは原子力潜水艦の実験施設を破壊する事件を起こし、無罪を勝ち取った。その背景にあるのは、核兵器の使用や威嚇は国際人道法などの観点からみて違法で、それを前提とする限り、核兵器を止める行動は許されるのだという論理だ。アンジーさんたちの論理が今、核兵器禁止条約という形で結実しているのではないか」と力説していた。

◆筆者プロフィール
竪場勝司(たてば・かつじ)
ライター、週刊金曜日、契約記者、元朝日新聞記者       


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