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LNJ Logo 「3・11を忘れない 双葉の会」が開かれる/加須市の鵜沼久江さん宅
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●1月20日、加須市の鵜沼久江さん宅

「3・11を忘れない 双葉の会」が開かれる

堀切さとみ

 加須市には双葉郡から避難した人たちが、今も300人ほど暮らしている。コロナ禍でなかなか集まることができなくなっていたが、久しぶりに同じ場所で時を過ごした。

 双葉の人が10名ほど、そして支援してきた人、脱原発運動をしている人、福島のことを知らなかったという人、様々な人たちが40名ほど集まってくれて、夜遅くまで親睦を深めた。

 はじめてお会いする双葉町民もいた。避難した頃は小学生の息子さんを育てることで精いっぱいで、つながりを持つ余裕などなかった。当時、騎西高校には100名ほどの小中学生がいたが、加須市の学校に通った子どもたちの心中は、推し量ることができないものがあると彼女は話してくれた。

 映画『原発の町を追われて 十年』をみて、ぜんざいを食べてから、絵本の読み聞かせが始まった。これがとてもよかった。

 双葉郡を歩いて取材しているイラストレーターの鈴木邦弘さん。『いぬとふるさと』と、これから出版しようとしている『ずっとここにいた』を読んでくれた。人間がいなくなっても双葉町には、ずっと存在し続け、生き続けているものたちがいる。人として生まれた責任というものを、鈴木さんはずっと考え続けている。この絵本に描かれているのは「復興」の嘘くささを暴き出す双葉町の現実だ。残酷なようだけれど、双葉の人は鈴木さんにこう言った。「私たちの思いを代弁してくれてありがとう」

 そしてもう一人、「絵本応援プロジェクト」の山本潤子さん(写真)による読み聞かせがあり、とても感じ入るものがあった。「絵本は歴史書でもある」と山本さん。災害から生まれた絵本というものが沢山あり、そこには事実が描かれている。

 3・11の年に作られた『あさになったのでまどをあけますよ』にはじまり、『福島からきた子』『このよでいちばんいちばんはやいのは』などを読んでくれた。

 彼女の声はおだやかで優しいけれど芯がある。血管の中に沁みわたっていくようで、読み聞かせとはこういうものなのかと感動した。作者の邪魔をしないよう、想像力を働かせられるよう、感情的にならずに読むことを心掛けているという。

 日々異なる場所で生きている人たちが、それぞれに考え、直接にではなくても言葉を紡ぎだしていくための手段があることを知った。

 双葉町の復興住宅から来てくれた人もいて、離れていても心はひとつだと嬉しくなった。一昨年の10月に避難解除になった双葉町だが、問題は山積みだということも新たにわかった。世間の無関心をいいことに、被害者は置き去りにされている。

 復興なんて誰が信じているだろう。双葉を見捨てれば、災害に見舞われたすべての地域が見捨てられる。そのことを忘れてはいけないと思っている。

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「双葉の会」の「双葉」は、双葉町だけでなく双葉郡の避難者との交流を目指していることと、成長のシンボルであることから命名しました。隔月を目標に、定例化していく予定です。


Created by staff01. Last modified on 2024-01-24 11:42:43 Copyright: Default

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