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知られざる「生活図画事件」の全貌が明らかに〜企画展「治安維持法の時代」2日目

西村 年史

 圧倒的な講演だった。まるで1本の長編映画を観るような・・・ 「木村まきさんをしのんで『治安維持法の時代を考える』横浜事件・生活図画事件・植民地弾圧」。12/19〜24までの6日間、東京 江古田の「ギャラリー古藤」で行われている展示・トーク・ビデオ上映。2日目の12/20は「生活図画事件」について。講師は川嶋均さん。

 稀代の悪法と呼ばれる治安維持法。その法律が一体どんなものだったのか。被害者はなぜ逮捕され、拷問を受けなければならなかったのか。被害者はどんな生き方をしようとして、どんな死に方をしたのか。事件が日本の社会にどんな重大な影響を及ぼしたのか。そして今日本で進行している同じような状況とどう照らし合わせればいいのか。その全体像がくっきりと浮かび上がってきた。

「生活図画事件」といってもピンとこない方が多いと思う。それを理解するために、まず「生活画」に触れておかなきゃいけない。厳密に言うと難しい概念があるのだが、長くなるので意訳したい。おおよそだが以下の3点に要約されると思う。

,△蠅里泙泙鯢舛こと
△發里伴匆颪箸隆慙△鯒Ъ韻靴読舛こと
8充造悗糧疹覆簇稟修魎泙漾⇒想の生活を表現すること

 そうした「生活画」を描くことを通して若者を育てるということが、1930年代の日本で、一部の美術教師によって行われ始めていた。生活図画教育だ。その教育が国家権力から弾圧され、標的となった教師や学生が大量に逮捕、拘留されたのが生活図画事件だ。

 東京藝大でドイツ語を教えている川嶋さん(写真下)が、なぜこれほどまでに生活図画事件の真相と真実を追いかけ続けているのか、その執念と奇跡のような新発見には驚嘆するほかない。それが余すところなく伝えられたのが今回の講演だった。2時間の予定を少しオーバーしたのは当然だった。普通の人なら4時間でも伝えきれないだろう。それほど濃密で深い内容だった。でも聴いている者としてはあっという間だった。冒頭に書いたが、ほんとうに映画を観るような感覚だったのだ。

 貴重な資料や事件の被害者の方たちの作品など、映像として映し出されたもののほとんどは川嶋さんご自身が足を運んで関係者に聴き取りをし、信じられないような追跡調査をされた結果、奇跡的に出てきたものばかりだ。こんな途方もないことができるのは川嶋さんしかいないだろう。調査を進めるたびに行き詰まり、諦めかけた時に偶然その扉が開く。そんなことが現実にあるのかと思ってしまうが、その扉をこじ開けるのは川嶋さんの熱い思いだ。執念という言葉が陳腐になってしまいそうなぐらいで、その行動力には驚くしかないのだ。

 この講演の開始前にも驚くべきことがあった。当時のことがわかる貴重な写真をアルバムごと会場に持参してくれた被害者のご親族がいたのだ。川嶋さんの熱意がそうさせたのだと思う。開演直前のサプライズに川嶋さんはとても興奮されていた。

 講演の最後に2組のご親族からのご挨拶があった。そのお二人の話だと、事件のことは被害者であるお父様からはほとんど聞いていなかったという。そしてこの講演でその全貌がわかったというのだ。なんということか。それほどの事件が自身にあったのに家族にも話せなかったのだ。話せる社会じゃないということなのかとぼくは胸をかきむしられた。 今もまだ調査は終わっていない。いつ終わるかわからない。それほどこの国の闇は深い。掘ればいくらでも出てくるのだ。でもそんなことを本気でやる人はいない。おそらく川嶋さん以外には。

 なぜそこまでするのか。見てしまった、あるいは聞いてしまった者の責任だと川嶋さんは事も無げに言う。でもそこには教師としての矜持があり、表現というものに魅せられ夢を抱いた人の願望があるとぼくは感じている。

 講演の詳しい内容を書くと1冊の本になりそうなので、とてもじゃないがぼくには書けない。でもこの話は近い将来映画になるとぼくは勝手に思っている。講演後の打ち上げに厚かましく参加させてもらったぼくは、川嶋さん、永田さん、目良さんのお話を聴きながらそう思った。ともかく、戦前この国が自国民のみならず、周辺諸国の民を徹底的に抑え付け、自ら破滅への道へ進んだことと、今現在の状況を照らし合わせる時、あまりにも似通っていることに気づく人は増えているんじゃないだろうか。

 今もこの事件は終わっていない。今年大ヒットした映画「福田村事件」と根底では変わらない。苦しみ続ける人はいるし、その構造は受け継がれている。国家権力に抗う必要性はなくなることなどないのだと、あらためて強く思う。市民の表現の自由や言論の自由を奪い、一つの方向へ持って行こうとする権力者に対して、今を生きる私たちにできることは何かを考えることが、今回の講演で出された私たちへの宿題だ。

 講演中、川嶋さんが被害者の方々の作品や生き方や友情に触れる時、声を詰まらせる場面が何度もあった。ぼくも込み上げてくるものがあったが、暗い会場なので何も遠慮することはなかった。

 展示をご覧いただくのは無料なので、お時間のある方はぜひ足を運んでほしい。

*展示の期間は12/24まで。古美術&ギャラリー古藤 http://furuto.info/


Created by staff01. Last modified on 2023-12-21 15:57:48 Copyright: Default

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