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東京都は「慰霊の公園」での死者への冒涜を阻止してください

――朝鮮人犠牲者追悼碑前でのヘイト集会に「利用制限」適用を


*写真=昨年の関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典(横網町公園)

 今年は1923年9月1日に起きた関東大震災から100年です。この震災は、約10万5000人の死者・行方不明者を出すという歴史に残る大惨事になりました。

 震災直後には、「朝鮮人が放火をしている」「井戸に毒を入れている」といった流言を信じた民衆と軍隊が朝鮮人を虐殺しました。警察もまた流言を拡散しました。

 内閣府中央防災会議の専門調査会報告「1923関東大震災【第2編】」は、これについて「自然災害がこれほどの規模で人為的な殺傷行為を誘発した例は日本の災害史上、他に確認できず、大規模災害時に発生した最悪の事態として、今後の防災活動においても念頭に置く必要がある」と指摘し、その背景に民族差別があったことを指摘しています。つまりこの事件は、日本近現代史上最悪のヘイトクライムだったのです。

 震災後、東京市は震災の死者を悼む場として横網町公園を開園しました。この公園は、戦後は東京大空襲の死者をも悼む場となりました。同公園のホームページが「慰霊と継承の公園」と定義しているとおり、中央にある慰霊堂の周辺に、いくつもの追悼・鎮魂のモニュメントが置かれています。その中には、虐殺された朝鮮人を悼む「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑」もあります。

 震災100年となる今年の9月1日は、横網町公園にとって例年にも増して特別な日です。慰霊堂では都主催の法要が行われ、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑の前では、午前には日本の市民が主体となった朝鮮人犠牲者追悼式典が、午後には在日朝鮮人主体の同胞追悼会が行なわれます。

 ところが今年、差別主義団体「そよ風」が、同日の夕方4時半から「真実はここにある! 関東大震災朝鮮人犠牲者慰霊祭」と称する集会を、しかも朝鮮人犠牲者追悼碑の前で行うことを宣言しました。私たちは、これは許しがたい最悪の死者への冒涜であり、行動そのものが民族差別であると考えます。

 彼らは2017年以降、毎年9月1日に、この追悼碑から30メートルほど離れた場所で「関東大震災石原町犠牲者慰霊祭」と称する集会を開いています。そこでは、朝鮮人が暴動・放火・強姦を行ったという当時の流言を「事実だ」とする虚偽の主張を唱え、「犯人は不逞朝鮮人」「自衛行動や制圧行動(虐殺のこと)は正当な行為」といった発言を繰り返し、ときには巨大な拡声器を外に向け、こうした発言を公園内に響かせたりしてきました。

 この集会には、ヒトラーを崇拝するネオナチ活動家、現場責任者として関与したデモの参加者の発言が朝鮮人の殺害を煽動したなどとして東京都によって繰り返しヘイトスピーチと認定されているレイシスト活動家、ヘイト街宣によって裁判所から対象周辺での街宣禁止の仮処分を受けた人物たちが参加してきました。

 「そよ風」は、在特会(在日特権を許さない市民の会)に近い団体として2009年に結成されました。そのブログには、朝鮮人に対する露骨な差別表現が散見されます。

 東京都は、2020年に、「そよ風」の横網町公園での集会の言動をヘイトスピーチとして認定しています。この認定には、東京都が「適切な措置」をとるべきという人権審査会の「意見」も盛り込まれました。

 関東大震災時に「不逞朝鮮人」が暴動・放火・強姦を行ったのだ、自警団の虐殺は「正当な行為」だったのだと主張する団体が、朝鮮人の殺害を煽動するような人々も集めて、「朝鮮人を慰霊する」と嘯いて集会を開く。しかも「慰霊の日」である9月1日に、「慰霊の公園」の中で、さらに彼ら自身が撤去を要求している朝鮮人犠牲者追悼碑の前で――。

 これはヘイトクライムの犠牲となった死者たちに対する、あからさまな嘲笑であり、冒涜です。集会自体が「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」(オリンピック条例)が定めるヘイトスピーチ=「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に相当すると、私たちは考えます。「言動」とは「言葉と行い」を指すからです。

 同条例では、ヘイトスピーチが行われる蓋然性が高く、それに起因して施設の安全な管理に支障をきたす蓋然性が高い場合に、施設の「利用制限」ができると定めています。

 「慰霊の公園」で公然と死者を冒涜すること自体が、横網町公園の「慰霊」という機能に支障をきたし、慰霊のために公園を訪れる人々に対する精神的暴力となります。私たちは、施設管理者たる東京都建設局公園緑地部が「利用制限」の判断を下すべき時だと考えます。少なくとも、条例に基づいて人権審査会に諮問し、その意見を聴取すべきです。

 東京都は、「慰霊の公園」での死者への嘲笑と冒涜を許さないでください。
 ヘイトクライムの犠牲者を悼む場でのヘイトスピーチ集会を認めないでください。

2023年8月29日

呼びかけ人

加藤直樹(ノンフィクション作家)
坂手洋二(劇作家、演出家)
中沢けい(小説家、法政大学教授)

賛同人

青木有加(弁護士)
明戸隆浩(社会学者)
有田芳生(ジャーナリスト)
飯山由貴(美術家・多摩美術大学非常勤講師)
池田賢太(弁護士・札幌弁護士会)
石坂浩一(立教大学兼任講師)
伊藤朝日太郎(弁護士)
内田雅敏(弁護士)
内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)
岡本厚(前岩波書店社長)
小野沢あかね(立教大学教授)
魁生由美子(愛媛大学教授)
郭基煥(大学教員)
加藤圭木(一橋大学大学院社会学研究科准教授)
金井真紀(文筆家・イラストレーター)
上瀧浩子(弁護士)
河かおる(滋賀県立大学教員)
木村元彦(ノンフィクションライター)
木村友祐(小説家)
金富子(東京外国語大学名誉教授)
清末愛砂(室蘭工業大学大学院教授)
金竜介(弁護士)
具良(弁護士)
小林ふみ子(法政大学教授)
空野佳弘(弁護士)
辛淑玉(のりこえネット共同代表)
高貝亮(弁護士)
高橋哲哉(哲学者)
田中宏(一橋大名誉教授)
田中正敬(専修大学教授)
張界満(弁護士)
寺中誠(東京経済大学教員)
寺脇研(映画評論家)
戸塚悦朗(弁護士)
殿平善彦(一乗寺住職)
外村大(東京大学教員)
仲岡しゅん(弁護士)
樋口直人(社会学者)
穂積剛(弁護士)
浜田桂子(絵本作家)
原田學植(弁護士)
藤井誠二(ノンフィクションライター)
藤野裕子(早稲田大学教授)
二木啓孝(ジャーナリスト)
前川喜平(現代教育行政研究会代表)
松谷信司(「キリスト新聞」編集長)
森川文人(弁護士)
宮下萌(弁護士)
町山広美(放送作家)
師岡康子(弁護士)
前田朗(東京造形大学名誉教授)
前田和男(ノンフィクション作家)
山口二郎(法政大学教授)
山崎雅弘(戦史・紛争史研究家)
吉井正明(兵庫県弁護士会)
若森資朗(のりこえネット共同代表) (56人、アイウエオ順・敬称略)

声明についての連絡先
seimei1923@gmail.com

*参考サイト

「『死者への冒涜』と抗議 加害正当化団体の集会に」(共同通信デジタル版、8月28日)
https://news.line.me/detail/oa-rp70841/v65kr0dycajm?mediadetail=1&utm_source=line&utm_medium=share&utm_campaign=none&fbclid=IwAR2HnZ6kpcE3DSLkWJVNCiq2MUCqlOYPe-RD07TZQvuI1x4fxiub_-crSyc

「関東大震災の朝鮮人追悼碑前でヘイト集会 差別団体が計画」(神奈川新聞デジタル版「カナコロ」、8月19日)
https://www.kanaloco.jp/news/social/article-1013262.html?fbclid=IwAR2DY8BxAG09ceB2J_fnSEqIUGxxaVVVRutCc6juXh27AINwvjtr0l8XkMk

「そよ風」集会での発言を「ヘイトスピーチ」と認定した東京都総務局人権部の発表(2020年8月3日)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/08/03/12.html

関東大震災朝鮮人被害者の追悼式典にオリバー・ストーン監督が反ヘイトのメッセージ! 一方、小池百合子知事はヘイト団体を後押し(LITERA、20年9月3日)
https://lite-ra.com/2020/09/post-5615_2.html


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