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映画『ペーパーシティ 東京大空襲の記憶』と重慶爆撃の映画『苦干(くかん)』

松原 明
 3月10日は「東京大空襲」の記念日だが、いま公開されている『ペーパーシティ—東京大空襲の記憶』を東京・渋谷のイメージフォーラムで見た。オーストラリア出身の映画監督エイドリアン・フランシスが、東京大空襲の生存者たちを取材したドキュメンタリーである。冒頭のものすごい量の爆弾(焼夷弾)を落とすシーンがすごい。落とす側の兵士たちが面白がって「きれいにやっちまえ」と話している言葉が、シーンに重なりゾッとする。

 被害体験者の人たちは90歳をこえており、亡くなる人も多く、この映画は最後の記憶の伝承なのだろう。無抵抗の民間人に対して上から落とす「無差別空爆」の非人道性は、まさに「戦争犯罪」そのものだった。街中火の手が上がり、逃げ場がなく川に飛び込んで生きのびた人の証言は、身につまされる。紙と木材でできていた東京は、一瞬にして火の海になり、一夜の死者は10万人と言われている。

 私が『ペーパーシティ』を見て思い出したのが、1月22日の討論会「重慶爆撃とウクライナ戦争」で見たドキュメンタリー映像『苦干』(くかん、20分/写真下)だ。それはアメリカ人の若きカメラマン、レイ・スコット氏が「重慶爆撃」の現場を記録したもので生々しいフィルムだった。重慶爆撃は、日本軍が1939年春から1941年まで行い、計218回・4333トンの爆弾が投下した。死者11,889人、負傷者14,100人、破壊した家屋17,608戸といわれている。

 その討論会で「重慶爆撃」に詳しい石島紀之(フェリス女学院大学名誉教授)氏の解説でわかったことがある。レイ・スコット氏は、この『苦干』のフィルムをもってホワイトハウスに行ってルーズベルト大統領に見せた。これを食い入るように見たルーズベルトは「東京も重慶にようにしてやる」と言ったという。重慶から6年目に起きた「東京大空襲」。日本軍の加害行為はブーメランとなって、東京を襲ったのだ。

 『ペーパーシティ』の中で証言する主人公の男性も、「日本が始めた戦争の結果がこうなった。戦争を2度としてはいけない」と加害の問題を語っていた。『苦干』の映像は日本語字幕を付けて、現在公開準備中だが、この作品が日本で広く見られ、加害の歴史の記憶として刻まれることを願う。

→1月22日討論会「重慶爆撃とウクライナ戦争」の主催者は「NPO法人 都市無差別爆撃の原型・重慶大爆撃を語り継ぐ会」。ホームページは http://www.anti-bombing.net/


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