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犯罪の根っこにあるものと向き合いたい〜映画『前科者』

乱鬼龍

 映画『前科者』を観た。私はこの作品が、元々は「ビックコミックオリジナル」に連載されたものであるということをまったく知らなかったので「コミック」も数冊買ってみた。

 はじめは「前科者」が主人公の映画なのかと思ったが、実は前科者を世の中に更生させようとする「保護司」(有村架純が好演)が主人公で、前科者との間に織りなす様々な物語が展開される。こうした映画はややもすると、「更生しようと頑張る前科者」と「それを支える保護司」という、ステレオタイプな美談になりがちだが、この映画はそれだけではない。周りにいる「警察」「行政」「地域の人々」などを、なかなか巧みに組み合わせていて、肉厚な作品に仕上がっていると思った。

 森田剛が演じる「前科者」の、つらく貧しく過酷な生い立ち。彼には弟がいて、子どもの頃、母親が二人の目の前で殺されてしまう。兄弟は施設に預けられるのだが、その後、限りなき恨みをはらすために、関係者を弟が次々と拳銃で射殺していく。それを知った兄は、弟の逃亡を助け、共に逃げ廻っていくのだが、その中で、弟がなぜ射殺事件を引き起こしたのかが、次第に明らかになっていく。殺された側にも、それぞれの責任があり、そのことに対する積年の恨みや怒りが、ついに爆発して犯行に至る。この展開は単に「前科者」「保護司」という関係性だけではなくて、なぜ「犯罪者」が出て「前科者」が出るのかという、この世の中の矛盾の根底を描いていて、佳作だと思った。

 いい映画は、私たちの血となり肉となりビタミンとなる。それを私は「栄養映画」と呼びたい。そして私は今、この矛盾と劣化に満ちた世の中に生きていて、この映画が放つ深く思い問いかけに、どう応えるべきか考えている。


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