本文の先頭へ
LNJ Logo 『鴎外の怪談』(永井愛 作)をみて
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1638196883392st...
Status: published
View


志真斗美恵です。

昨日(11月28日)、池袋の東京芸術劇場に『鷗外の怪談』(永井愛 作・演出・二兎社公
演)をみに行きました。

1910年末から11年初頭の鷗外の書斎が舞台です。

登場人物は、鷗外の他に、彼の妻しげと母の峰、大逆事件被告人弁護士・平出修、親友
の医師・賀古鶴所、永井荷風、そして、唯一作者が造形した新宮出身の女中スエです。

1910年5月からの大逆事件に正面から取り組んだもので、それを今の問題として考えさせ
ようとした公演でした。

鷗外は、大逆事件に対する政府の対応に批判的でありながら、首相・山形有朋の側近であ
り、陸軍軍医総監・森林太郎である立場から離れられない。

作品は、事件をめぐる鷗外の心の「謎」に迫ろうとしています。彼の内面には、津和
野に逃れたキリシタンへの弾圧、その幼年時の記憶が残っていたはずだ。エリスへの「裏
切り」もある。それらをかかえて、彼は苦悩して生きた人間として造形されていました。

永井荷風の大逆事件後の変化、女中スエがドクトル大石の助命嘆願を鷗外に迫る場面、
妻の激しさ・強さも印象に残りました。嫁・姑の確執をユーモラスに描きながら、鷗外を
文豪であり政府高官であるという先入観にとらわれた見方から、私たちにも連なるような
難問を抱えて生きる人間像に転換することに成功していました。

私自身、鷗外は食わず嫌いで、型通りに接していただけですが、この芝居からたくさんの
事実を知り、鷗外の苦悩が今につながるものに感じられたのです。

何よりも、この芝居は、私自身がどう生きるかと問うていました。

次の日曜日(12月5日)まで東京芸術劇場で公演、その後来年1月末まで全国に巡演されま
す。

Created by staff01. Last modified on 2021-11-29 23:42:47 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について