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LNJ Logo 大阪 : 「現職校長から市長への提言」「緊急事態宣言下 の全国学テ中止オンライン署名のお願い」
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大阪の志水です

大阪の教育をめぐって、今、大きな地殻変動が起きようとしています。

ひとつは、現職の大阪市立小学校校長が大阪市長に「大阪市教育行政への提言」を出した
ことです。本来、民主主義社会であれば、学校現場の校長が首長に対し教育上の提言を出
すことは何の不思議もないかもしれません。ただ、政治が教育行政を牛耳り、まるでその
傘下にあるかのような現在の教育行政のありよう、そして、その教育行政から学校現場へ
上意下達が当たり前のごとく「指示」が出される現在の大阪の状況から考えれば、これは
異例中の異例のことです。校名も名前も明らかにした上での提言は、拡散OKということで
私のところにも回って来ました。それを読んで正直感動しました。私たちが、今、大阪の
公教育において考えなければならな位ことがすべて書かれていました。これは松井市長に
あてた「大阪市教育行政への提言」であると同時に、私たち市民にあてられたものだと受
け取りました。私たちも、この提言から学び、それをうやむやにされることなく、教育行
政に迫っていきたいと思います。では、その提言を下記に記しますので是非ともお読みく
ださい。

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大阪市長 松井一郎 様

大阪市教育行政への提言
豊かな学校文化を取り戻し、学び合う学校にするために

子どもたちが豊かな未来を幸せに生きていくために、公教育はどうあるべきか真剣に考え
る時が来ている。

学校は、グローバル経済を支える人材という「商品」を作り出す工場と化している。そこ
では、子どもたちは、テストの点によって選別される「競争」に晒される。そして、教職
員は、子どもの成長にかかわる教育の本質に根ざした働きができず、喜びのない何のため
かわからないような仕事に追われ、疲弊していく。さらには、やりがいや使命感を奪われ
働くことへの意欲さえ失いつつある。

今、価値の転換を図らなければ、教育の世界に未来はないのではないかとの思いが胸をよ
ぎる。

持続可能な学校にするために、本当に大切なことだけを行う必要がある。特別な事業は要
らない。学校の規模や状況に応じて均等に予算と人を分配すればよい。特別なことをやめ
れば、評価のための評価や、効果検証のための報告書やアンケートも必要なくなるはずだ。
全国学力・学習状況調査も学力経年調査もその結果を分析した膨大な資料も要らない。
それぞれの子どもたちが自ら「学び」に向かうためにどのような支援をすればいいかは、
毎日、一緒に学習していればわかる話である。

現在の「運営に関する計画」も、学校協議会も手続き的なことに時間と労力がかかるばか
りで、学校教育をよりよくしていくために、大きな効果をもたらすものではない。地域や
保護者と共に教育を進めていくもっとよりよい形があるはずだ。目標管理シートによる人
事評価制度も、教職員のやる気を喚起し、教育を活性化するものとしては機能していない。

また、コロナ禍により前倒しになったGIGAスクール構想に伴う一人一台端末の配備に
ついても、通信環境の整備等十分に練られることないまま場当たり的な計画で進められて
おり、学校現場では今後の進展に危惧していた。3回目の緊急事態宣言発出に伴って、大
阪市長が全小中学校でオンライン授業を行うとしたことを発端に、そのお粗末な状況が露
呈したわけだが、その結果、学校現場は混乱を極め、何より保護者や児童生徒に大きな負
担がかかっている。結局、子どもの安全・安心も学ぶ権利もどちらも保障されない状況を
つくり出していることに、胸をかきむしられる思いである。

つまり、本当に子どもの幸せな成長を願って、子どもの人権を尊重し「最善の利益」を考
えた社会ではないことが、コロナ禍になってはっきりと可視化されてきたと言えるのでは
ないだろうか。社会の課題のしわ寄せが、どんどん子どもや学校に襲いかかっている。虐
待も不登校もいじめも増えるばかりである。10代の自殺も増えており、コロナ禍の現在、
中高生の女子の自殺は急増している。これほどまでに、子どもたちを生き辛くさせている
ものは、何であるのか。私たち大人は、そのことに真剣に向き合わなければならない。グ
ローバル化により激変する予測困難な社会を生き抜く力をつけなければならないと言うが
そんな社会自体が間違っているのではないのか。過度な競争を強いて、競争に打ち勝っ
た者だけが「がんばった人間」として評価される、そんな理不尽な社会であっていいのか。
誰もが幸せに生きる権利を持っており、社会は自由で公正・公平でなければならないは
ずだ。

「生き抜く」世の中ではなく、「生き合う」世の中でなくてはならない。そうでなければ
このコロナ禍にも、地球温暖化にも対応することができないにちがいない。世界の人々
が連帯して、この地球規模の危機を乗り越えるために必要な力は、学力経年調査の平均点
を1点あげることとは無関係である。全市共通目標が、いかに虚しく、わたしたちの教育
への情熱を萎えさせるものか、想像していただきたい。

子どもたちと一緒に学んだり、遊んだりする時間を楽しみたい。子どもたちに直接かかわ
る仕事がしたいのだ。子どもたちに働きかけた結果は、数値による効果検証などではなく
子どもの反応として、直接肌で感じたいのだ。1点・2点を追い求めるのではなく、子ど
もたちの5年先、10年先を見据えて、今という時間を共に過ごしたいのだ。テストの点数
というエビデンスはそれほど正しいものなのか。

あらゆるものを数値化して評価することで、人と人との信頼や信用をズタズタにし、温か
なつながりを奪っただけではないのか。

間違いなく、教職員、学校は疲弊しているし、教育の質は低下している。誰もそんなこと
を望んではいないはずだ。誰もが一生懸命働き、人の役に立って、幸せな人生を送りたい
と願っている。その当たり前の願いを育み、自己実現できるよう支援していくのが学校で
なければならない。

「競争」ではなく「協働」の社会でなければ、持続可能な社会にはならない。

コロナ禍の今、本当に子どもたちの安心・安全と学びをどのように保障していくかは、難
しい問題である。オンライン学習などICT機器を使った学習も教育の手段としては有効な
ものであるだろう。しかし、それが子どもの「いのち」(人権)に光が当たっていなけれ
ば、結局は子どもたちをさらに追い詰め、苦しめることになるのではないだろうか。今回
のオンライン授業に関する現場の混乱は、大人の都合による勝手な判断によるものである。

根本的な教育の在り方、いや政治や社会の在り方を見直し、子どもたちの未来に明るい光
を見出したいと切に願うものである。これは、子どもの問題ではなく、まさしく大人の問
題であり、政治的権力を持つ立場にある人にはその大きな責任が課せられているのではな
いだろうか。

令和3(2021)年5月17日
大阪市立木川南小学校
校 長  久保 敬

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さて、もうひとつ、これは報告とお願いです。

ご存知のように、萩生田文科大臣は、緊急事態宣言下であっても、全国学力・学習状況調
査(全国学力テスト)を予定通り5月27日に実施する方針を明らかにしました。

さらに、橋本正司大阪府教育長は「全国学力テスト実施日」に合わせて、今年度からの実
施を予定していた「すくすくウォッチ」という大阪府独自のテストを小学校5・6年生全
員に実施すると表明しています。

大阪市教育委員会は、全国でも異例ですが、緊急事態宣言下、松井市長の意向を汲み取り
「オンライン授業」を導入しました。そのため、多くの学校現場では大混乱が起こり苦渋
の声が聞こえてくるありさまに、本日(5月17日)になって、ようやく24日からは通常授
業にもどす考えを明らかにしました。

私たち、「子どもをテストで追いつめるな!市民の会」は、コロナ禍下、さまざまな問題
が噴出しているにもかかわらず、なぜ「全国学力テスト」と「すくすくウォッチ」だけ実
施しようとするのか、今、もっとも教育行政が目指さなければならないのは、子どもたち
の安全安心と学校生活を取り戻すことであると考え、文部科学省、大阪府教育委員会・大
阪市教育委員会に要望書を提出し、同時に下記オンライン署名を開始しました。全国の方
にも賛同をお願いしたいと思いますのでどうかよろしくお願いします。

change org署名のお願い
「緊急事態宣言下の「全国学力テスト」と大阪府独自テストの強行はやめてください
〜授業や行事が中止でも、テストは別あつかい?!〜」 オンライン署名 : 緊急事態宣言下の-全国学力テスト-と大阪府独自テストの強行はやめてください

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