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新型コロナと生態系、そして軍事基地

2020年05月28日 | 生態系・自然環境

   
 「コロナ後」の社会・世界のあり方を考える上で、たいへん示唆的な論考がありました。国際自然保護連合副会長などを歴任し霊長類学の世界的権威とされるラッセル・ミッターマイヤー氏(以下M氏)の「新型コロナと人間 生態系破壊まず止めよ」と題した論考(5月8日付中国新聞=共同配信)です。

 M氏はコロナ禍の背景には、「人類が地球上で1種の生物として極めて多くの個体数を誇るようになった事実」があり、「ある種が大量に増えることは、それに寄生する細菌、寄生虫、ウイルスにとっても非常に好都合」であること、ウイルスは「自然を破壊して数を大幅に増やした人類にとって強敵になりつつある」と考える視点が重要だと指摘します。

 「では、われわれは今、何をするべきだろうか」として、M氏は3点提唱します。

 「第一に、地球上の豊かな生物多様性を守る必要がある。多様性に富む生態系は、われわれの健康を守ってくれる

 「第二に、自然破壊を防ぎ、陸上の野生生物を生息地から捕獲して食べ物や薬、ペットなどとして利用する行為をやめること。野生生物の消費が、病原体に人間が直接、接触する機会を増やす

 「第三に、大量の肉の消費を減らし、植物ベースの食品への転換を図ること。哺乳類の生物重量の60%を占める家畜は病原体にとって好条件となる 」

 「新型コロナウイルスのまん延は、われわれへの警鐘である。当面の対策だけでなく、コロナ後の世界を展望する上で、病原体が将来、さらにたやすく宿主となるものを見つけることがないように、根本原因をなくする対策が求められている。
 良好な地球環境と、そこに暮らす人間の健康を守るためには、冷淡さと無自覚によって生態系を破壊する人々の行為を止めることは何よりも大切だ

 この指摘ですぐに想起されるのは、沖縄の辺野古(写真左)や高江、八重山諸島の基地建設です。
 日本で初めて「ホープスポット(希望の海)」(米国の環境NGO制定)に認定(2019年10月24日)された貴重な自然環境である大浦湾を、巨額の費用を投じて埋め立て、米軍基地(自衛隊との共同使用を想定)を造ろうとする辺野古新基地建設こそ、「冷淡さと無自覚によって生態系を破壊する」愚劣な行為の典型です(写真中は大浦湾に生息するジュゴン)。

 辺野古だけではありません。嘉手納基地や普天間基地(写真右)周辺の水源が有機フッ素化合物(PFAS)で汚染されていることが今大きな問題になっています。宮古島や石垣島の基地建設(自衛隊)は、生態系を破壊し、住民の飲料水の汚染を招きます。

 軍事基地はまさに自然環境・生態系破壊の拠点であす。新基地の建設を許さないことはもちろん、既存の基地を撤去することが環境・生態系保護にとっても中心的課題です。

 その点でも、「軍なき国」(5月18日のブログ参照)コスタリカは貴重な示唆を与えてくれます。コスタリカを訪れた沖縄県民間教育研究所の長堂登志子所長は、同国が「森林法改定」(1996年)や「生物多様性法」(98年)で法的に多様性を保護し、動植物や水、空気などの自然資源は公のものとの考えで、国土の25%以上を国立公園や保護地区に指定してきたことに触れ、こう指摘しています。
 「多様性に富んだ大浦湾、宮古や八重山の自然を破壊し、軍事基地のために膨大な金を使う日本は、子どもたちに豊かな未来が残せるのか」(14日付琉球新報「論壇」)

 ウイルスから人類を守るための生態系の保護と、軍事基地撤去・軍縮・軍備廃止は一体不可分です。


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