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安倍首相の3つの“遺言”

2020年08月29日 | 安倍政権

    
 安倍晋三首相が28日午後5時からの記者会見で辞任を正式に表明しました。記者会見では冒頭、安倍氏が13分間述べたのに続き、20人の記者が質問しました。その大半は、安倍政治の「レガシー」と「継承」、次の総理・総裁の選出に関するもので、安倍政治を追及する質問はほとんどありませんでした。この国のメディアの腐敗を改めて目の当たりにする思いでした。

 安倍氏は約1時間の最後の会見で、3つのことを言い遺しました。うち2つは、冒頭の発言で自ら「以上2つのこと」として言い遺したものです。

 1つは、コロナ対策の新たな方針です。「検査の抜本的拡充」というこれまで同様の掛け声だけとは違う今回の眼目は、「軽症者・無症状者の自宅療養」の徹底です。
 「保健所・医療機関の負担軽減」が口実ですが、現在広がっている家庭内感染をさらに拡大する愚策中の愚策と言わねばなりません。

 「保健所・医療機関の負担軽減」は、人員・予算の拡充による体制強化で行うべきであり、感染者を自宅に置くのは本末転倒です。政府の責任を放棄し、感染者本人と家族に負担を押し付け、結果、感染を広げるもので、安倍政権の無責任なコロナ対策の典型と言わねばなりません。

 安倍氏が冒頭に述べたもう1つのことは、これまでの「迎撃ミサイル」方式を転換してミサイルで「敵地」を先制攻撃する「新たな方針」の推進です。これが憲法に反することは明白です。

 7年8カ月の安倍政権の悪政は枚挙にいとまがありませんが、最大のものの1つは、「集団的自衛権」に踏み切った「戦争法(安保法)」の強行です。「敵地攻撃」はその延長線上にある安倍政治の憲法蹂躙・軍事国家化の集大成と言えます。
 それが、会見で安倍氏が何度も強調した「日米(軍事)同盟の強化」の具体化であることは言うまでもありません。

 安倍氏の第3の“遺言”は、おそらく安倍氏自身無意識で、メディアも注目していないものです。「安倍政治のレガシーは?」と聞かれた安倍氏は、得意満面にいろいろ並べ立てましたが、その中で、「幼児教育・高校教育の無償化」を挙げました。

 実はこれこそ、安倍政治の本質を示す悪しき“遺産”です。それはこの「無償化制度」から朝鮮学校を排除しているからです。朝鮮学校の卒業生・父母らが全国5カ所の裁判所で訴訟を起こしているにもかかわらず、安倍政権はこの差別政策を頑として改めようとしません。これは安倍首相の在日コリアン差別・コリア半島敵視を象徴的に示すものです。

 この問題は、会見で安倍氏が何度も口にした「拉致問題」や、韓国との「徴用工問題」「慰安婦(戦時性奴隷)問題」と根は1つです。すなわち、コリア半島に対する植民地支配という日本の加害責任に対する認識が安倍氏には完全に欠落しており、逆に歴史修正主義の立場から、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)、韓国に対して敵対姿勢をとり続けてきました。
 それが安倍政権の最大の特徴です。28日の辞任会見ではその差別政策を「レガシー」として誇示し、メディア(記者)はすべてそれを黙認したのです。

 安倍政治の悪質さは際立っており、その退陣は1つの節目です。しかし、安倍氏が辞めたからといって自民党の悪政が変わるわけではありません。「次期総理総裁」報道に狂奔しているメディアの的外れ(害悪性)は、いまさらながら、目を覆うばかりです。

 首相の首がすげ変わっても、日本の政治・社会は変わりません。安倍政治を反面教師とし、日本を変えていくのが、「主権者」である私たちのこれからの責任です。


Created by staff01. Last modified on 2020-08-29 14:29:02 Copyright: Default

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