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LNJ Logo 根津公子 : 判決を読みながら、うれしさをかみしめている
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3月25日逆転勝訴 2009年「君が代」不起立処分取り消し控訴審判決

   根津公子

 まさかの逆転勝訴。これまでの裁判では、地裁・高裁ともに本人尋問が認められてきていたが、09年控訴審ではそれが認められなかったこともあり、判決に1ミリの望みも持つことはできずに来た。だから、小川秀樹裁判長が主文を読み上げ、「根津公子…処分を取り消す」と聞こえてはきたが、意味不明という状態だった。
 今、判決を読みながら、うれしさをかみしめている。

■根津処分と判決の経緯

 「君が代」不起立に対する処分は、一般には「戒告まで」。「戒告、減給を超えて停職の処分を選択することが許容されるのは、過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為の前後における態度等(「過去の処分歴等」)に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情が認められる場合」(2012年最判 アンダーラインは筆者)とされている。

 根津の不起立ついては、1回目(05年3月)が減給6月処分、2回目(05年4月・処分発令は5月)が停職1月処分、3回目(06年3月)が停職3月処分、4〜6回目(07年、08年、09年のいずれも3月)が停職6月処分とされた。  このうち、07年停職6月処分は15年に控訴審で逆転勝訴し、16年にそれが最高裁で決定した。処分を加重する「具体的事情」として「過去の処分歴」はすでに使われており、今回新たな「具体的事情」はないと いうことが処分取り消しの理由。この判決は河原井さんだけでなく根津の損害賠償も認めた。

■河原井さん処分と判決の経緯

 河原井さんの不起立は04年1回目の戒告処分は是認されたが、減給1月から停職6月処分はすべて取り消されてきた。損害賠償も06年停職1月、07年停職3月処分取り消し訴訟で認められた。したがって、今日の訴訟では、河原井さんは損害賠償請求をしていた。

■今日の判決

「主文 1 (1)東京都教育委員会が平成21年3月31日付けで控訴人根津に対してした懲戒処分を取り消す。(2)控訴人根津のその余の請求を棄却する。 2 控訴人河原井の本件控訴を棄却する。 3 訴訟費用は(略)」。「根津のその余の請求」「河原井の本件控訴」はいずれも損害賠償請求。
損害賠償については、09年時点では12年最判も出ておらず、判決もいろいろであったから、停職処分を行った都教委に瑕疵はないという、地裁判決と同じ判断だった。

【根津の処分は都教委の裁量権の逸脱濫用だとした理由について】

 判決は、これまで最高裁が処分適法と確定した根津の処分量定については、どれもが重い処分をしてよい「相当性を基礎付ける具体的事情があるということができる」と言い、08年処分の処分理由に加えられたトレーナー着用については「あえて学校の規律や秩序を乱すような行為を選択して実行したものも含まれており」と言い、さらには本件処分について「これらを踏まえたとき、本件根津不起立に対する懲戒処分につき、…停職処分を選択すること自体については、前記相当性を基礎付ける具体的事情があるということができる」「停職3月の懲戒処分よりさらに重くすることはやむを得ないというべきである」(要するに停職5月処分ならばやむを得ないということ)と判示したうえで、しかし、次の3点を挙げて「裁量権の逸脱濫用」とした。

 ,泙困歪篆6月処分の重さについて次のように言う。「職員の懲戒に関する条例によれば、停職期間の上限は6月とされていて、停職期間を6月とする停職処分を科することは、さらに同種の不起立行為を繰り返し、より重い処分が科されるときには、その処分は免職のみであり、これにより地方公務員である教師としての身分を失うことになるとの警告を与えることとなり、その影響は、単に期間が倍になるという量的な問題にとどまらず、身分喪失の可能性という著しい質的な違いを被処分者に意識させることになり、これによる被処分者への心理的圧迫の程度は強い。特に、控訴人根津の場合には、前記説示のとおり、その不起立行為の動機、原因は、控訴人根津の歴史観ないし世界観等に由来する「君が代」や「日の丸」に対する否定的評価等のゆえに、本件職務命令により求められる行為と自らの歴史観ないし世界観等に反して本件職務命令に従うか、教師としての身分を失うことになるかの選択を迫られる状況に置かれることになる」と。

△海里海箸鮹譴某えて、07年控訴審須藤勝訴判決が「過去の処分歴」を「具体的事情」として繰り返し使うことを実質禁じた判断及び根津の不起立行為はほかの人の不起立と異なるのかを問う。処分対象となった行為不起立行為は、根津も他の人も同じなのだと判示してくれた。
 「以上のことを踏まえれば、本件根津不起立について停職期間を6月とする停職処分を科すことは、十分な根拠をもって慎重に行われなければならないというべきであるところ、ア.控訴人根津について過去に懲戒処分や文書訓告の対象となったいくつかの行為は、平成17年度卒業式における不起立行為についての平成18年3月の懲戒処分(停職3月処分:筆者記)について考慮され、その後、同種の非違行為が繰り返されて懲戒処分を受けたという事実は認められない上、イ.本件根津不起立行為は、以前に行われた掲揚された国旗を引き下ろすなどの積極的な式典の妨害行為ではなく、控訴人河原井と同様の国歌斉唱時に起立しなかったという消極的な行為であって…」(ア.イ.は筆者)とした。   この部分についての地裁判決は、「ア.本件不起立自体は……着席したという消極的な行為……であること、イ.平成19年3月30日付停職6月の処分が取り消されていること等を考慮しても、ウ.過去の処分に係る非違行為の内容及び頻度、重要な学校行事等における教員の職務命令違反であるという……諸事情を綜合考慮すれば、……具体的事情があったものと認めることができる。」(ア〜ウは筆者)だった。アイを「考慮した」と書くが、考慮した形跡はまったくないままにウの結論に行ったのだった。

 次は地裁判決が大きく取り上げたトレーナー着用について。本件年度は着用していないのだから、「具体的事情」としてはならないということ。「停職6月の平成20年3月の懲戒処分がされた後は、本件根津懲戒処分時まで、控訴人根津が、勤務時間中に、平成19年度の本件トレーナ―着用行為のような行為をしたことはなく、また、その他の非違行為がされたことについては、これを認めるに足る的確な証拠はない」。

 地裁判決は、トレーナー着用を大きな「具体的事情」とし、「過去の処分」を「具体的事情」にすることは二重処分だとこちらが主張してきたことについて、「前回の平成20年3月の停職6月の処分を更に加重するものではなく、前回と同じ量定の懲戒処分を科すものであるところ、一般的に、同じ態様の非違行為を繰り返している場合、前回の処分よりも軽い処分とせず、同一の量定の処分を行うことは、公務秩序を乱した職員に対する責任を問うことで、公務秩序を維持するという懲戒処分の意義や効果に照らし不合理であるということはできない。」と、加重処分ではないと開き直った。こちらが、複数回体罰をした教員の体罰事案では、前回処分よりも次の処分が軽い事例を列挙して主張したが、判決はこれについても全く無視したのだった。

 ~をあげたうえで判決は、「これらのことを踏まえれば、本件根津不起立については、職員の懲戒に関する条例により上限とされている6月を停職期間とする停職処分を科すことは、控訴人根津の過去の処分歴や不起立行為が繰り返されてきたことを考慮しても、なお正当なものとみることはできないというべきである。」「停職期間を6月とした都教委の判断は、具体的に行われた非違行為の内容や影響の程度等の鑑み、社会通念上、行為と処分との均衡を著しく失していて妥当性を欠くものであり、懲戒権者としての都教委に与えられている裁量権の合理的範囲を逸脱してされものと言わざるを得ず、違法なものというべきである。」と判示した。

 上告は2週間以内とされている。都教委は上告するであろうから安心はできない。


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