本文の先頭へ
LNJ Logo 高井弘之「徴用工問題は解決済み」ではないこと、再び」
Home 検索
 


投稿 : 高井弘之

●徴用工問題は解決済み」ではないこと、再び

「強制徴用工問題」への対応として、「日韓の企業で基金を作り被害者への賠償を行う」という韓国側の提案に、河野は、なぜ、あれほど逆切れし、居丈高に大声を張り上げるのだろう。駐日韓国大使を呼び出して、偉そうに抗議をした先日の席でのことである。

「(韓国大法院判決の内容である徴用工への賠償問題は)日韓請求権協定で解決済み」という政府と自らの主張(の正しさ)に、ひょっとして、実は、自信がないのだろうか。あるいは、「正義は我にあり」と本当に信じ切っているのだろうか。

いずれにしろ、下に書く『日韓請求権協定』の内容から言えば、『協定』自体が「極めて無礼」な内容であり、それを「錦の御旗」のごとくして傲岸不遜に怒鳴り散らす自らこそ、韓国大使に対して「極めて無礼」この上ないものである。

何度か投稿してきたが、政府・メディアのこの「解決済み」論が全くの虚偽であることを明らかにし、突き崩していくことが、いま、最も肝要で必須のことだと思う。

決して「解決済み」などではないという事実が社会に浸透していけば、政府の「制裁措置」に賛成で一枚岩となっているような日本政府・メディア・(この列島社会の中の)「日本人社会」の状況も少しは変わるのではないかと思うからである。

これまでも書いてきましたが、以下、『請求権協定』の中身―真相を箇条書き的に。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆「日本による朝鮮統治」は合法で正しかったというのが政府の認識―立場だったので、その非と責任を認めること―その立場に立ったことを意味する「被害賠償」など、立場上・論理上、在り得なかった。

実際、『日韓条約』や『請求権協定』の文書には、植民地支配の非を認める言葉も、それへの反省・謝罪の言葉も全くないばかりか、(違法であれ合法であれ)日本が朝鮮を「統治」していた事実の記載やそれへの言及さえ全くない。さらに、植民地・被害・賠償などという言葉自体がいっさい出て来ず、存在していない。

◆日本政府が行ったことは、賠償とはいっさい関係ないところの「経済協力」(独立祝い金)だった。

◆この「経済協力」は、お金を直接、韓国政府に渡す形ではなく、「日本国の生産物及び日本人の役務」で代替する形だった。したがって、そのお金はその「生産物・役務」(資本財・商品や労働・サービスなど)を提供した日本の企業や商社に渡された。
 そして日本は、これを足掛かりにして韓国への「再進出」―経済侵略を始めた。

◆日本政府が、韓国への賠償はそれで「解決済み」とするところのその『日韓請求権協定』に記されている「請求権」等の言葉は、そもそも、日本の植民地支配―統治による被害の賠償問題に対する「請求権」などを意味するものではない。

◆日本は、上のような意味・位置づけでの「請求権」に基づく「請求」にも結局応じなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

実は、いま、冒頭に記した思いから、急ぎ、この問題でのブックレットを作成しています。その書きかけ原稿のなかに、日本の植民地支配被害に対する賠償が「請求権協定で解決済み」などでは全くないことを意味する国会答弁の記録を記載しています。それを、政府自身が「堂々と」明言―断言していますので、長くなりますが、「先行紹介」したいと思います。

//////////////////////////////////////////////////

(7)『請求権協定』が意味するもの

 既述のように、『協定』第一条には、日本が無償3億ドル・有償(利子付の貸し付け)2億ドルを供与・貸し付けすることと、その「供与及び貸付けは、大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない」ということが記載されている。つまり、第一条は、この「供与金」等が、韓国が有する日本への請求権等に対して支払われるものではないことを示している。

 そして、次の第二条には、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が・・完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。」と記されている。

 つまり、請求に応じ、請求権に相当するお金を支払うことによってではなく、「韓国の経済発展」のためという名目の「経済協力金」を「供与」することによって、韓国の日本への請求権問題等は「解決されたこととなる」というのがこれらの条文の内容なのである。

 第一条記載の「供与及び貸付け」金が、第二条記載の「請求権」と関係がないこと、それに応じたものではないことは、『条約・協定』調印後の批准に向けた国会でも、政府は明言している。以下は、(前記と重なるところがあるが)この問題に関する質問と椎名外相の答弁である。

【草葉隆圓議員(自民党)】・・わが国は将来十年にわたって、無償三億ドル、有償二億ドルに相当する生産物及び役務を提供することになっておりまするが、これは賠償の性質を有するものであるかどうか。また、請求権問題の処理と全く無関係であると言い切り得るものであるかどうか。この点、外務大臣の御答弁を伺いたいのであります。

【椎名悦三郎外相】何か、請求権が経済協力という形に変わったというような考え方を持ち、したがって、経済協力というのは純然たる経済協力でなくて、これは賠償の意味を持っておるものだというように解釈する人があるのでありますが、法律上は、何らこの間に関係はございません。あくまで有償・無償五億ドルのこの経済協力は、経済協力でありまして、これに対して日本も、韓国の経済が繁栄するように、そういう気持ちを持って、また、新しい国の出発を祝うという点において、この経済協力を認めたのでございます。合意したのでございます。その間に何ら関係ございません。(参議院本会議/1965年11月19日)

外相はここで、「経済協力金」が請求権とも賠償とも何ら関係なく、法律上も両者の間に何ら関係がないと断言している。そして、(そもそも日韓会談―交渉は、植民地支配の清算とそれによる国交正常化を目指して始められたはずだが)それが、日本の植民地支配(清算)の問題とさえ関係がないことを、以下のように、明言している。

【横路節雄委員(社会党)】三億ドル、二億ドルの性質は何ですか。
【椎名外務大臣】経済協力ということになっております。
【横路節雄委員】椎名さん、これは請求権の処理のためですか。それとも、低開発国援助ですか。それとも、三十六年間韓国を植民地支配をしていたという、そういう意味で払うお金ですか。これは何なんですか。
【椎名外務大臣】それは、読んで字のごとく、経済協力です。
(衆議院・日韓条約及び協定等に関する特別委員会/1965年10月28日)

日本政府・外相はここで、日本が行った「経済協力」と、請求権等、植民地支配にかかわる問題との間には何の関係もないことを明言している。しかし、当『協定』は、その全く関係のない「経済協力」によって、「財産、権利及び利益、請求権等の問題が解決したこととなる」としているのである。

「請求権等」と「経済協力」との間に何ら因果関係がないのだったら、「経済協力」によって、「請求権等の問題が解決」するはずなどないが、なぜ「そうなる」のか、そう言えるのか、その理由や根拠についても、『協定』には全く記されていない。

以上から明らかなことは、要するに、日本政府は、韓国の有する「財産、権利及び利益、請求権」を、「経済協力」によって封印し、無きものにしたのである。

そして、「経済協力」をすることによって請求権を封印―消滅させようとするこのような方式は、前項で記したように、韓国側の強い抵抗があるなか、日本側が傲慢な強者の手法で、「見切り発車」的に強引に進め、調印へと到らせたものだった。

しかもその『経済協力』は、次項で述べるように、日本・日本企業の利益獲得を意図・目的とするものだったのである。

///////////////////////////////////////////

 以上のような内容の『協定』で「強制徴用工問題は解決済み」と主張する河野や安部・日本政府こそ、「極めて無礼」の、まさに極みではないか!


Created by staff01. Last modified on 2019-07-22 18:09:40 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について