本文の先頭へ
LNJ Logo 朝鮮高校無償化連続学習会〜教育基本法から見た国家による教育への介入
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1561527941717st...
Status: published
View


朝鮮高校無償化連続学習会〜教育基本法から見た国家による教育への介入

 6月24日、東京・文京区男女平等センターにおいて、東京朝鮮中高級学校「高校無償化」裁判弁護団が主催する連続学習会の第一回が行われ、約50人が参加した。

 学習会では、教育学・教育行政学の研究者である石井拓児・名古屋大大学院教育発達科学研究科准教授が「正面から問う、『不当な支配』とは何か」と題して、無償化裁判で国側が指摘している朝鮮総連からの朝鮮学校に対する「不当な支配」について、国はその「不当な支配」の趣旨を逸脱して解釈している問題を指摘した。

 石井准教授は教育基本法における学説、論点を紹介しながら「教育基本法における通説では『不当な支配』を国や地方の教育行政、これに加えて特定の政党党派や組合、その他団体が対象となると考えるが、文科省解釈では『不当な支配』に教育行政は含まれないとしている。教育基本法の成立背景には、戦前の教育勅語体制の反省があり、国家権力による極端な画一主義的な教育から子どもたちを守ることにあった。それを踏まえると、国が指摘する『不当な支配』の解釈には問題がある。日本国内の学校には、その設立過程において宗教団体はじめ様々な団体が関わり、学校運営に影響を与えている現状がある。それを全て『不当な支配』とすれば、大きな混乱が生じるはずだ。なぜ朝鮮学校だけが問題となるのか。2006年の教育基本法改正は、国家による支配の装置を制度化させることが目的でなされたものであり、その最も象徴的な事件として朝鮮学校無償化除外がある」と述べた。

 続いて、弁護団と石井准教授との間で質疑応答が行われた。
 弁護団からの「教育基本法における『不当な支配』は、国家権力を想定したものだと理解できた。まさにいま無償化裁判で争われているのは『不当な支配』を名目にした国家権力による教育への介入である。民族学校と民族団体との関わりについて、どう扱われるべきなのか。民族団体の支援を受けた教育内容は問題なのか」との質問に対して、石井准教授は「歴史的な経緯から考えれば、当然民族団体と民族学校の関わりはあると思う。それがそのまま『不当な支配』になる訳がない。全国の小中学校には地域住民と密接な関係があるし、宗教団体が関わっている学校は数多くある。『不当な支配』の認定は、もっと精査すべきで、学校の自主性が失われたというのはまず当事者が訴えるべき事柄だ。また教育の不偏不党性は、教育基本法の解釈上、あり得ないと思う。そもそも『価値中立的にすべきもの』なんて言われてしまうと、あらゆるものは成り立たない。逆に教育の不偏不党性を確かめようとすれば、それは相当に高度な判断が要求されるものだ」と答えた。

 東京朝鮮中高級学校の無償化裁判は、最高裁で審理が始まっている。次回学習会は8月8日に「『対北朝鮮制裁』の犠牲になる朝鮮学校」と題し、鄭栄桓・明治学院大教授を講師に招いて、都内・赤羽会館小ホールで行われる。〔金子通〕


Created by staff01. Last modified on 2019-06-26 14:45:42 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について